2011年7月1日金曜日

電子書籍端末を書店で販売

http://mainichi.jp/enta/book/news/20110710ddm015040024000c.html
日本書店商業組合連合会と電子出版サービスのウェイズジャパンはこのほど、書店店頭で電子書籍端末を発売する新ビジネスを発表した。端末を買ったユーザーがウ社のプラットフォーム「雑誌オンライン+BOOKS」で電子書籍を購入すると、書店側にウ社側からロイヤルティーが入る仕組み。電子書籍の売り上げが伸びる中、地方中小書店の新たな生き残り策として注目される。
 端末の販売開始は今秋で、価格は1万9800円を予定。ウ社プラットフォームのコンテンツは、コミックを中心にした約1万5000点からスタートし、12年末には約10万点までラインアップを増やすことを目指している。

2011年6月28日火曜日

キャリアの電子書籍サービスは、実際はどれが読みやすい?

http://ascii.jp/elem/000/000/615/615314/
第2回に続いてキャリアが提供する電子書籍サービスを比較していこう。前回はストアの機能自体を比較したが、今度は買った本の読みやすさに関わる機能を比較した。実際の書物と違い、ページをめくる、しおりを挟む、といった何気ない操作も、スマホ上ではタッチパネルでの操作となる。データの保存先はどこ? というスマートフォンならではの気になる点もある。実は意外と3社とも使い勝手が大きく違った。 

案外大きな違いがある3社のサービス

 比較したサービスは前回と同じくNTTドコモの「2Dfacto」(テスト機種/GALAXY S SC-02B)、auの「LISMO Book Store」(テスト機種/IS03)」、ソフトバンクモバイルの「ソフトバンクブックストア」(テスト機種/003SH)だ。
 電子書籍を見るにあたって必ず気になるだろう点を、下記の表にまとめている。

  ドコモ「2Dfacto」 au「LISMO Book Store」 ソフトバンク
「ソフトバンクブックストア」
ストアとリーダーは別アプリ? 同じ 同じ 別アプリ必要
次ページ表示時の演出 ページめくりまたはスクロール スクロールまたは画面切り替え スクロールまたは画面切り替え
前/次ページに移動する方法 フリックまたはタップ フリックまたはタップ フリックまたはタップ
コミックの見せ方 ページ単位 ページ単位/コマ単位 コマ単位
文字サイズ変更
フォント変更 ×(太さは変更可能) ×(太さは変更可能)
書籍内への書き込み × ×
データ保存先 本体メモリ、またはmicroSD/ユーザーメモリの選択が可能 microSD microSD


 まず最初の「ストアとリーダーは別アプリ?」という項目は、要は電子書籍ストア用のアプリ以外に、書籍を読むために必要なアプリがあるかということ。ソフトバンクブックストアが一部必要としているのは「書籍閲覧アプリ」のことだ。
 スマートフォン上の電子書籍といえば、ページが「めくれる」演出が印象的だが、今回の比較では2Dfactoのみ対応していた。

ソフトバンクはストアアプリとリーダーアプリが別途必要。ページがめくれる演出は2Dfactoのみ


 また、大画面のスマートフォンでも、書籍によっては文字が読みづらいことがあり、ピンチ操作で拡大縮小ができるとやはり便利だ。これは逆にLISMO Book Storeとソフトバンクブックストアで対応。コミックは書籍によって違いがあり、ケータイ風のコマ毎表示するタイプと、1ページをそのまま切り替えるタイプがある。個人的にはスマートフォンでは1ページずつ切り替えるほうが自然な気がする(コマ割や文字の大きさにもよるが)。
 書籍への書き込みについては、2Dfactoのみ自由にマーカーやメモを入力できたので、使い方によっては便利そうだ。書籍の保存先は大量に読む読者であれば、microSDが選択できると安心だ。

2Dfactoは、文章にメモを入れたり、マーカーで色を塗ったり、さらにアプリ内で画面の明るさを変更できたりと芸が細かい


機能が豊富過ぎる!カスタマイズ派に嬉しい「2Dfacto」

 ストアで電子書籍を購入して、データをダウンロードすると、2Dfactoアプリの「一覧」などに本が並ぶ。並び方はワンタッチで、書籍タイトル/購入順/読んだ順/著者名順に変更できる。アプリ内に自分で新しく本棚を作ることもできるので、本の分類に便利だろう。書籍の保存先は本体メモリ、もしくはメモリカード/ユーザーメモリが選択できるようになっているが、本体内に10GBほどのユーザーメモリがあるGALAXY Sの場合はこのユーザーメモリに保存される。ただし、著作権保護のために本体メモリにしか保存できない作品もある。

購入した電子書籍が並ぶ書棚は、ユーザーが複数作れるなど、データが管理しやすくなっている。ただし肝心のデータをGALAXY SではmicroSDに保存できないのは残念

 さて、実際に読み始めると、機能が非常に多いことに気づく。前述の比較表以外でも、書籍内のキーワード検索が可能。文字列を入力すると、その文字列のあるページに飛ぶ。文字を長押しして選択すると、Wikipediaなどで用語検索もできるし、書籍内にマーカーで線を引いたり、メモ(ノート)を入力できる。しおりは何枚も挟むことが可能だ。このマーカーやメモ、しおりは、位置が記録されており、いつでもそのページを簡単に開くことができる。

全文検索や選択した範囲のテキストをWikipediaで検索したりと、機能が豊富


 また「縦組み」「横組み」の変更も可能だ(作品によっては固定になっている)。縦組みでは右開きだった書籍が、横組みでは左開きに切り替わる。文字と背景の色まで変更できるのには驚いた。ルビを振ることができるほか、行間や字間の調整にも対応している。さらには画面タップしてページを「進む」「戻す」場合、それぞれの操作が認識される画面のエリアまで決められるので、“自分に最適な読書環境”を目指すのであれば、本アプリはかなり望みに近い設定が実現できそうだ。もっとも、筆者の場合は初期設定のままでもまったく普通に使えたので、必ず設定をいじらないといけないわけでもない。

さらには横組みに変更したり、背景色を変えたりとカスタマイズの自由度は一番だ
画面のどの範囲までタップ操作を認識するかも変更できる

全体的にシンプルだが表示設定にはこだわれる「LISMO Book Store」

 2Dfactoと比べるとシンプルなアプリだが、特に印象的なのは画面をタッチしてもツール関連のメニューが表示されないことだろう。設定を変更したい場合は「MENU」ボタンでメニューを開く。
 2Dfactoは機能が多いために、どこを操作して目的の設定を変更するのか、正直パッと見ではわかりにくい。しかしLISMO Book Storeの場合は、とりあえずメニューを開けばいいので慣れていなくてもすぐに覚えられる。ただしシンプルゆえに、カスタマイズの楽しみは少ない。本棚もデフォルトのもののみを使うことになる。その本棚は「作品」「著者」「カテゴリ」「ダウンロード」「サンプル」でのみ分類されるので、書籍の数が増えると少々整理が大変になりそうだ。ただし、本棚でメニューを開くと検索は可能である。

操作は基本的に「MENU」ボタンから行なう。書棚は2Dfactoと比べると随分シンプルだ

 読書を中断して手動でしおりを挟む場合もやはりメニューから行なうが、肝心のしおりが2枚しか挟めないのは残念。ページ移動は目次からの指定や、全ページをパーセント単位で表わし、その数字で移動する。
 ここまではLISMO Book Storeのシンプルな面をお伝えしたが、「表示設定」は非常に細かい。文字サイズは5パターン、太字設定もある。縦横表示の切り替え/余白調整/行間/ルビ表示/柱(書籍の余白に記載された文字)の表示、さらには1行送りで読んでいくこともできる。コミックの表示ではバックライト表示や、作品によっては「コマ表示」「ページ表示」を好みで選択が可能だ(表示方法が「コマ表示」のみに決められている作品もある)。

ただし文章の見せ方などの設定項目は多い

 そして「レビュー投稿」機能があるのも今後使っていくうえで期待したい機能だ。最後のページまで到達したときや、作品タイトルの長押しで投稿メニューが表示される。

読み終わったあとにレビューを投稿できる機能があるのは電子書籍ならではだ


自作データや仕事の書類もまとめられる「ソフトバンクブックストア」

 保存先の設定は特に見当たらず、データは自動的にmicroSDへ保存された。表ではアプリが2つに分かれているように書いたが、ユーザーが実際に操作するのはソフトバンクブックストアアプリからのみだ。また標準のリーダーである「書籍閲覧アプリ」以外にも、「BSReaderアプリ for ソフトバンク」が必要な作品もあった。これらは操作の中でインストールするように誘導されるので気にする必要はない。
 ソフトバンクブックストアには、ケータイと同じように単行本単位ではなく、1話単位で販売されているコミックが大量にある。そのような作品では1話分を読み終わったときに次の話を探す検索メニューが表示される。これは単純だが良い機能だと思う。

著作権保護の関係か、一部キャプチャー不可能な画面もあったので実機を撮影している。コミックなどで次の話数や関連書籍を続けて検索して購入できる点は便利だ

 ただしリーダーとしての機能はLISMO Book Store以上にシンプル。並び替え機能はもちろん著者名/ジャンル別に分類することは可能だが、書籍内に挟めるしおりは1枚だけというのはさすがに不便だ。特に実用書/解説書の類では、後で読み返したい部分に多数目印をつけておきたものである。これは今後の機能強化に期待だ。

表示のカスタマイズやしおり機能などはとことんシンプルだ

 他の2サービスと違い、この「ソフトバンクブックストア」には自作した電子書籍のデータや、仕事のファイルの管理機能がある。対応ファイル形式は PDF/Word/Excel/ePub。実際にファイルを読むためには別途ビューアーアプリが必要だが、書籍をまとめて管理できるのは便利だ。
 また読まなくなった本は「書庫」に移動する機能がある。書庫に移動した本は普段は本棚(マイブック)に表示されないので、本を整理しやすくなるだろう。簡単に取り出せるので、削除はしたくないが今は読まない本を入れておけばいい。なお、あくまで本棚機能に表示されなくなるだけなので、データ自体は端末に保存されている。

書棚である「マイブック」機能もやはりシンプルなもの。ただし、ユーザーのファイルについても一括して管理できる

 また「マイブックス検索」という、microSDカード内にある書籍とストア内の書籍を探す機能がある。1回のキーワード入力で同時に探せるわけではないが、本を大量に管理するようになったときには便利だろう。

しばらく読まない書籍は「書庫」に移動することで表面には出てこなくなる。また、メモリーカード内のデータやストア内のデータをキーワード検索できる

電子書籍を読むだけならスムーズだが
本の管理とまでなると、機能的にはまだまだ

 3サービスとも単に購入した電子書籍を読むだけなら、特に不満は生じない。しおり機能については、2Dfacto以外はもっと充実してほしいし、マーカー機能やメモ機能も実用書やビジネス書では、使えると大変便利になる。機能が増え過ぎると使いきれないかもしれないが、せっかくスマートフォンで見ているのだから、紙の書籍では難しいことができると「電子書籍で良かった!」と実感できるように思える。
 そういう意味では2Dfactoの「書籍内検索」、LISMO Book Storeの「レビュー投稿」、ソフトバンクブックストアの「次話検索」「マイブックス検索」といった機能は、それぞれ他のサービスにも入ってくるとうれしい。ストア同様これからさらに充実することを期待したい。

「Adobe Digital Publishing Suite」による電子出版を考える

http://journal.mycom.co.jp/column/dpk/001/index.html

1 電子出版を取り巻く現状について

電子書籍のファイル形式

iPadの登場で注目を集めるようになった電子出版ビジネス。現在は、従来のPCや携帯電話に加え、スマートフォン、タブレット型PCと、さまざまな端末が登場し、ファイルフォーマットについても国内外で乱立している。まさに混沌とした状態ではあるが、電子書籍の出力ファイルの制作には、紙の出版関係者にもなじみの深いDTPソフト「Adobe InDesign」のデータを元にするケースが多い。本稿では、電子出版ビジネスの状況と、InDesignでの電子書籍制作について考えてみたい。
まず、現状の主な電子書籍フォーマットについて整理してみよう。紙の出版物には、小説など文字を主体としたものと、雑誌のように写真と文字を複雑にレイアウトしたもの、写真集やマンガなど、画像を主体としたものなどがある。紙であれば、どのタイプであっても印刷されるものであるが、電子出版となると、再生される端末に適したフォーマットを選ぶ必要がある。
文字主体の電子出版物に採用されているフォーマットは、業界標準になりつつある「EPUB」や、Amazon独自の「AZW」、ボイジャーの「.book(ドットブック)」、シャープの「XMDF」などが挙げられる。これらのフォーマットは「タグ付きドキュメント」と呼ばれる、Webページで使われるようなファイル形式であり、HTMLドキュメントに近い特性を持つ。
EPUBは、どのような画面サイズでも読めるという点を重視しているため、ページ内のコンテンツは固定されていない。たとえば、端末側で読者が文字サイズを大きくする操作をした場合は、テキストや図版は次のページに流れ込み、全体のページ数表示も増える。印刷物のようにレイアウトが固定されているわけではないので、段組みや図版を多用する雑誌や新聞には適していないフォーマットといえる。
写真や文字を使い、かつ複雑なレイアウトで表現する雑誌や新聞などの場合、PC向けであれば「Flash(SWF)」や「PDF」が使われることが多いが、FlashはiPhoneやiPadで採用されておらず、絶対的なレイアウを保持するPDFの場合は、スマートフォンの小さな画面では拡大/縮小やスクロールを強いられることがあり、読みづらい。この分野では、各社が独自に開発した表現方法で提供しており、主流となっているフォーマットはまだ存在していない。
マンガの場合は、PDFのほか、セルシスの提供する「Comic Surfing」やイーブック・イニシアティブ・ジャパンの「ebi.j(イービーアイジェー)」といったフォーマットが使われる。これらは、日本の携帯電話向けの市場で発展してきたフォーマットともいえる。コマ単位で見せるなど、小さな画面での閲覧に対応する表現が確立されている。

スマートフォンやタブレットPC向け電子書籍のマーケット

最近続々と登場している、スマートフォンやタブレットPC向けの電子書籍マーケットについても触れておこう。iPhoneやiPadでは、「iBooks」など、EPUBやPDFに対応した閲覧アプリは登場しているものの、電子書籍ファイル販売サービスである「iBookstore」は、日本向けにはまだ提供されていない。このため、国内向けの電子書籍提供者は、文字主体・雑誌・新聞・マンガ・写真集など、その形態に関わらず、EPUBや PDFなどのコンテンツファイルと、それを閲覧するアプリを一体化したアプリとしてAppStoreで販売している。作品ごとにアプリで販売する場合もあれば、専用の閲覧アプリを配布し、そのアプリで再生可能な作品のファイル単位で課金して提供する形態もある。
AndroidOS端末向けには、Google公式のAndroidマーケットなどのアプリ販売サービスを通じて提供されている。提供形態は、 iPhone/iPad向けと同様に、閲覧アプリとコンテンツの一体型、専用の閲覧アプリ+コンテンツ単位の課金が多く見受けられる。Googleではこのほか、書籍検索サービスの「Google ブックス」に登録されている300万冊以上の書籍データを電子書籍として提供するプラットフォーム「Google eBookstore」が、2010年12月に開始した。有料の電子書籍の販売は米国など地域が限られており、今後日本も含め提供地域を拡大していく予定だ(※日本では、著作権の切れた無料コンテンツの閲覧は可能)。 AmazonのAZWフォーマットのファイルを販売するKindleStoreは、同社の電子書籍リーダー端末であるKindleや、スマートフォン向けの専用アプリで閲覧可能ではあるが、本格的な日本語の電子書籍の売買サービスは始まっていない。
次回は、アドビ システムズの「InDesign」を使用した電子出版制作など、国内における電子出版の現状を考えていきたい。

2 日本国内における電子出版の現状について

この連載では、「Adobe InDesign CS5.5」を核としたソリューション「Adobe Digital Publishing Suite」による、電子出版制作のための新しいワークフローについて考えていく。今回は、日本国内における電子出版の現状を紹介していきたい。

電子出版の国内事情は?

日本国内における電子出版の動きとしては、2010年12月にシャープがXMDFフォーマットの電子書籍端末「GALAPAGOS(ガラパゴス)」をリリースし、シャープとカルチュア・コンビニエンス・クラブによる電子ブックストアサービス「TSUTAYA GALAPAGOS」を開始し話題となった。TSUTAYA GALAPAGOSは、GALAPAGOSだけでなく、シャープ製のスマートフォンからも利用できる。メーカー系では、ソニーでも同時期にXMDFフォーマットの電子書籍端末「Reader」向けの電子書籍販売サイト「Reader Store」を開始した。
携帯キャリア自体のスマートフォン向け電子書籍の取組みとしては、まず2010年12月にソフトバンクがシャープ製をはじめとする端末に対応した電子書籍販売サイト「ソフトバンク ブックストア」を、続く2011年1月にはNTTドコモが大日本印刷およびCHIグループとともに電子書籍サービスに関する共同事業会社トゥ・ディファクトを設立して電子書籍ストア「2Dfacto(トゥ・ディファクト)」を開始。KDDIでは、2011年4月からauのAndroid搭載スマートフォン向け電子書籍の配信サービス「LISMO Book Store」を開始するなど、各社とも電子書籍に注力する姿勢が伺える。携帯キャリアが提供するこれらのサービスの大きな特長としては、携帯電話料金といっしょにコンテンツ購入代金を支払えるという決済方法が挙げられる。
大手出版社系で目立ったのが、2010年12月にスタートした角川グループホールディングスによる電子書籍プラットフォーム「Book☆Walker」だ。グループ企業の角川コンテンツゲートが運営するこのプラットフォームでは、.book形式に対応した電子書籍ビューワを iOS機器やAndroidOS機器向けに提供。2011年7月にPC向けに提供、今夏以降に「ニコニコ動画」やGREEなどの外部ソーシャルメディアとの連携サービスも予定しており、電子書籍コンテンツ流通という面でも注目を集めている。

電子書籍の制作ツールとしての「InDesign」

端末種別、ファイル形式、販売マーケットが複雑に絡みあう電子出版界だが、スマートフォンやタブレットPC向けの販売市場としては、iPadや iPhone向けのApp Storeが先行している。その成長に合わせ、電子書籍アプリを制作するソリューションも続々登場している。
モリサワが提供する「MCBook(エムシーブック)」は、InDesignの組版データを使ってアプリができる。ProFieldの「ProBridgeDesigner-i」は、InDesignからiPadアプリを出力できるプラグインだ。このほか、ポルタルトの提供する「moviliboSTUDIO」のように、WebブラウザからPDFをアップロードしてアプリを作れるサービスもあれば、PDFなどの素材をアプリ化し、App Storeへの申請を代行する受託型サービスを提供している企業もある。
これらのサービスは、iPhone/iPadだけでなく、今後成長が予想されるAndroidOS端末向けのアプリ市場にも対応していくと思われるが、アプリに内包するコンテンツファイルは、InDesigで制作が可能だ。InDesignにはPDFやEPUBファイルへの書き出し機能があり、国内で主流のフォーマットである.bookやXMDF作成ツールについても、InDesignの組版データからの変換をサポートしている。Amazonの AZWもPDFやEPUB、HTMLを変換して作ることができることから、電子書籍ファイルの制作ツールとしては、InDesignが最も汎用性があるといえる。
こうしたInDesignでの電子書籍ファイル作成は、文字が主体の印刷物の延長線上にあるものと言えるが、Adobeは2010年10月に、「InDesign CS5」(※現在は「CS5.5」も対応)を基盤とした、雑誌タイプの電子書籍制作を支援する製品「Adobe Digital Publishing Suite(ADPS)」を発表し、新世代の電子出版への駒を一歩進めた。この製品は、iPadやサムソンのGalaxyといった、タブレットPCを主な対象としたもので、制作環境以外に、コンテンツ配信管理や、アクセス解析ツールの「Adobe SiteCatalyst」によるレポーティングなどもサポートしている。
同製品は、既にiPadアプリとして提供されているWired Magazine誌やThe New Yorker誌で使われた技術を基にしており、縦/横の柔軟なレイアウト、スライドショー、ビデオ、音声、ハイパーリンク、Webブラウズ、360° ビュー、パノラマなど、デジタルならではのリッチな演出を可能としている。ADPSは、刺激的なアプローチを追求するクリエイターや編集者、効果的なブランディング手法を探りたいマーケターに支持されるのではないだろうか。未だ決定的な提供形態が確立していない雑誌タイプの電子書籍の主流となるのか、今後も注目していきたい。

電子書籍リーダーの普及率、米市場でふた桁に - 過去半年で倍増、タブレットに先行

http://wirelesswire.jp/Watching_World/201106281021.html

米国時間27日に発表されたPew Internet Projectの調査結果によると、米国における電子書籍リーダーの普及率は、2010年11月の6%から2011年5月には12%へと倍増したという。いっぽうタブレット端末の普及速度は一時期と比べ鈍化してきており、2010年11月の5%、2011年1月の7%、2011年5月の8%と、1月から5 月の4か月間で1%の伸びにとどまったことも明らかになった。
この調査は4月26日から5月22日にかけて行われたもので、18歳以上の男女2277人を対象に、携帯電話、デスクトップPC、ノートPC、DVR、携帯音楽プレーヤー、電子書籍リーダー、タブレット端末の7種類の電子機器について、それぞれの所有の有無を調べた。
登場から比較的間もない電子書籍リーダー(12%)やタブレット端末(8%)は、普及率第5位の携帯音楽プレーヤー(44%)にも大きく差をつけられているが、昨年夏にアマゾン(Amazon)の「Kindle 3」が200ドル以下で、また後には広告入りのモデルが114ドルという低価格で発売されたことをきっかけとして、電子書籍リーダーの普及が急速に進みつつある。2009年4月に電子書籍リーダーが調査対象項目に加わって以来、普及率が半年で倍増したのは初めてだという。なお、アップル(Apple)の「iPad」、サムスン(Samsung)の「Galaxy」、モトローラ(Motorola)の「Xoom」といったタブレット端末は、500ドル前後かそれ以上の価格で販売されている。
保有者を学歴や収入別でみると、電子書籍リーダーの普及率は大学卒以上の層で22%、年収7万5000ドル以上の層で24%と、高学歴・高収入層でとりわけ高くなっている。いっぽう、年収3万ドルから4万9999ドル、5万ドルから7万4999ドルの層でも、2010年11月時点でそれぞれ3%、6 %だったものが、2011年5月には13%へと倍以上に増加。また男女別にみると、タブレット端末では男性の10%に対し女性は6%と差がみられるのに対し、電子書籍リーダーではそれぞれ12%、11%とほぼ同程度の普及率であること明らかになったという。
なおGigaOMによれば、Kindleやバーンズ&ノーブル(Barnes & Noble)の「Nook」といった製品はすでに卒業祝いや誕生日のプレゼントとして購入されることも増えているという。コンテンツ側の充実--アマゾンではすでに電子書籍の売上部数が紙のそれを上回っている--とあわせて、電子書籍リーダーがすでに一般消費者への浸透段階に進んでいることを伺わせて興味深い。
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[出典: Pew Internet Project ]
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[出典: Pew Internet Project ]