2011年9月2日金曜日

2011年上半期、電子書籍はITビジネス書&過去ヒット本!

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20110831/1037496/?ST=life&P=2

電子書籍をどこでどうやって買うのかは、所有する機器によるところが大きいだろう。PCか、iPhoneやiPadなどiOSデバイスか、Androidのスマートフォンやタブレット端末かによって変わってくるのが現状だ。

ただ、電子書店も徐々に充実してきている。コンテンツの点数自体の課題はあるが、出版社を問わず幅広いジャンルを取りそろえる電子書店も出てきた。その一つが「honto」だ。

「honto」は総合印刷会社、大日本印刷が2001年より直営で展開するPC、iPhone向け電子書籍販売サイト「ウェブの書斎」を全面リニューアルした電子書店だ。2010年11月25日のリニューアル時点で、コンテンツは約3万点(同年7月時点で約1万5000点)。オンライン書店「bk1」との相互連携や検索機能の強化など、新機能を大幅に追加した。

例えば「honto」サイトの表示を各デバイスの画面サイズに合わせ、最適なレイアウトで表現。見やすく選びやすいユーザーインターフェースを目指した。検索機能も強化し、書籍のタイトルのほか、ジャンル名、出版社名、作家名はもちろん、フリーワード検索は解説文でも検索できる。検索窓には検索候補一覧が並ぶ入力補助機能(インクリメンタル サーチ)を実装し、販売実績の多い候補を上位に表示している。レコメンド機能には販売動向を反映しており、今話題になっている電子書籍が即時購入できる。

bk1との連携も大きい。「honto」で販売している本の中で、同じタイトルの本が「bk1」にもある場合、「honto」の商品詳細ページで「bk1 紙の本を買う」のボタンが表示される。「bk1 紙の本を買う」のボタンをクリックすれば、「bk1」側の商品詳細ページへリンクする。ただし、「honto」利用の際にも会員登録が必要だが、リンク先の「bk1」で紙の本を購入する際には、「bk1」側でも会員登録が必要となる。

一方、すでにオンラインストア「BookWeb」での紙の本の販売で実績を持つ紀伊國屋書店も、本格的に電子書籍マーケットに参入。それが「紀伊國屋書店BookWebPlusサービス」(以下BookWebPlus)だ。

まず2010年12月に「BookWebPlus」で電子書籍の配信・販売サービスを開始。パソコン向け約1100タイトルの配信をスタート。2011年5月20日からは配信対象デバイスをスマートフォンやタブレット端末に拡大した。サービス開始時点で約5000タイトルを提供、現在もタイトルを増やしている状況だ。

対象デバイスの拡大に合わせ、アンドロイドOS搭載のスマートフォンおよびタブレット向けのストアアプリ「紀伊國屋書店Kinoppy」(キノッピー)をアンドロイドマーケットから無料で配布(iPhone、iPad対応アプリは6月1日より)している。キノッピーはストア機能のほか、読書履歴などが見られる本棚機能である「ライブラリ」や「ビューア」機能を備える。

アプリの配布を始めたのと同時に、各デバイス向け電子書籍の配信・販売をスタートした。コンテンツは講談社、光文社、角川書店、角川学芸出版、岩波書店、河出書房新社、扶桑社、ジョルダン、金の星社、アスキー・メディアワークス、エンターブレイン、角川マーケティング、中経出版、新人物往来社、集英社、小学館、学研HD、幻冬舎、PHP研究所、徳間書店をはじめとする多く出版社が提供。実用書や洋書、コミックの品ぞろえにも意欲を見せる。

キノッピーは電子書籍のみならず紙の本にも対応しているのが特徴。和書・洋書あわせて1000万タイトルから購入できる「BookWeb」から紙の本が購入でき、ライブラリ(履歴)にも追加できる。ログインの際のIDやパスワードはBookWeb、キノッピー共通で使える。

このほか「電子書店パピレス」「ビットウェイブックス」、雑誌が充実した「Fujisan.co.jp」、コミックが充実した「ebookjapan」など多数の総合電子書籍販売サイトがある。今回は「honto」および「BookWebPlus」担当者に、2011年上半期に売れた電子書籍を聞いた。ただし、電子書籍として2010年7月から2011年7月までの1年の間に発売された作品でランキングを調べてもらっている。

映画原作など話題の本の電子書籍化が当たっている

「honto」2011年1月~7月ランキング

まず「honto」のランキング(2011年1月~7月までの売れ行きに評判(評価)を加味したもの)を見てみると、1位『プリンセス・トヨトミ』(万城目 学[著]/文藝春秋)、 2位『星守る犬』(村上たかし[著]/双葉社 ※コミック)、3位『サラリーマン金太郎』(本宮ひろ志[著]/サード・ライン ※コミック)5位『のぼうの城(上)』(和田竜[著]/小学館)、10位『となり町戦争』(三崎亜記[著]/集英社)、13位『八日目の蝉』(角田光代[著]/中央公論新社)と、映画原作が多い。

「紙でも大変好評な1冊だが電子化されると共に、非常に多くのお客様に支持された1冊」(honto担当者)という『これからの「正義」の話をしよう―いまを生き延びるための哲学』(マイケル・サンデル/鬼澤忍[著]/早川書房)や、『伝える力-「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える!』(池上彰[著]/PHP研究所)といった、ヒット作もランキングに顔を出している。
「紀伊國屋BookWebPlus」2011年6月1日~6月30日月間ランキング

「BookWebPlus」の方も同様で、こちらはグランドオープンが6月1日だったので月間ランキングになってはいるが、『ハッピーバースデー』(青木和雄[著]/金の星社)、『蹴りたい背中』(綿矢りさ[著]/河出書房新社)、『カラマーゾフの兄弟〈1〉』(フョ-ドル・ミハイロヴィチ・ドストエフス[著]/光文社)など、やはり過去のヒット作がランキングの上位に入る。いきなり電子書籍で発売されてヒットした、という作品はまだ少ないようだ。
注目したいのは、IT関連書、ITビジネス関連書。『スティーブ・ジョブズvsビル・ゲイツ二大カリスマCEOの仕事力』(竹内一正[著]/PHP研究所)や『アップル、グーグル、マイクロソフト―クラウド、携帯端末戦争のゆくえ』(岡嶋裕史[著]/光文社)などは、紙で発売されてから1年前後と比較的新しい。電子書籍を選ぶ人の、ITへの関心の高さを感じさせる。また『ウィキリークス以後の日本―自由報道協会(仮)とメディア革命』(上杉隆[著]/光文社)や『街場のメディア論』(内田樹[著]/光文社)といったメディアに関する本が売れている点にも注目したい。
両書店で唯一、電子版のみの発売の『サッカーのチカラ』(FOOTBALL WRITER'S AID[著]東邦出版)は、hontoの独占コンテンツ。日本大震災の被災地支援のためにサッカーメディア界の人間が垣根を超え、総力を結集して生まれたチャリティー企画。総勢107人のサッカー界を代表する書き手が「サッカーのチカラ」という共通テーマを、それぞれの価値観でつづっている。1冊あたりの売り上げ1200円のうち1000円が東日本大震災義援金として寄付される。
両書店のランキングに共通点は少なかった。電子書籍は、各出版社の公式電子書籍書店から購入する人も多い。どういったジャンルの作品がヒットするという予測がしにくいと言えそうだ。ただ「BookWebPlus」で『スティーブ・ジョブズvsビル・ゲイツ二大カリスマCEOの仕事力』や『なぜ、脳はiPadにハマるのか?―脳力を最大限に引き出す使い方レッスン』(篠原菊紀[著]/学研)、『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』(竹田恒泰[著]/PHP研究所)がヒットしていることを考えると、新書タイプの電子書籍は比較的手が伸ばしやすいと言えるのではないだろうか。

2011年9月1日木曜日

米書店最大手B&N、電子書籍事業が倍増へ

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819584E1E3E2E2E08DE1E3E2EAE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;at=DGXZZO0195570008122009000000

米書店大手バーンズ・アンド・ノーブル(B&N)は、電子書籍事業の売り上げが今年度(2011年5月~12年4月)は倍増し、18億ドルに達するとの見通しを示した。
 一方、第1四半期(5~7月期)の決算は再び赤字だった。電子書籍市場では、同社の専用端末「ヌック」と米アマゾン・ドット・コムの端末「キンドル」が、巨額の投資を伴うシェア獲得競争を繰り広げている。
 B&Nは、米メディア大手リバティメディアから2億400万ドルの出資を受け入れると発表したばかり。30日の決算報告では、電子書籍事業の伸びが鮮明になる一方で、通常の書籍売り上げの下落が止まらないことが明瞭となった。

■ アマゾンと激しい顧客争奪戦

 B&Nは「ヌック」などのデジタル部門をビジネスの中核に据える事業再編を目指すが、「キンドル」を提供するアマゾンとの顧客を奪い合う厳しい戦いに直面している。アマゾンはネット通販市場での圧倒的優位を電子書籍市場に持ち込み、攻勢をかける。
 B&Nによると、ヌック部門(ハードウエア、周辺機器、電子書籍を含む)の5~7月期の連結売上高は140%増の2億7700万ドルに達した。
 ウィリアム・リンチ最高経営責任者(CEO)は「ヌックは当社にとって急成長する大型の新ビジネスに育った」と述べた。
 リンチ氏によると米電子書籍市場における同社のシェアは26~27%である。他方、調査会社エンダース・アナリシスのベネディクト・エバンス氏によると、アマゾンのシェアは60%~70%の間だという。今のところ明確なデータは入手できない。
 エバンス氏はヌックについて次のように解説する。「これまでのところ周囲の予想を超える善戦をしてきた。書店での販促活動が功を奏したといえる。他社の端末は販路が限られているか、製品機能に魅力がなかった」
 年間ベースの連結売上高でみると、同部門は昨年度の8億8000万ドルから今年度は18億ドルと倍増する見通しだという。2010年度は1億2300万ドルだった。
 だが、同社全体では年間ベースでも赤字を解消できそうにない。
 B&Nが既存の書店チェーンを通じてヌックを売り込んだのに対し、アマゾンは同社の通販サイトでキンドルを提供できるのが強みだ。両社はさらに自社端末向けに書籍・雑誌コンテンツを囲い込もうとしのぎを削りあっている。
 アマゾンはキンドルの廉価版も発売した。広告掲載型の機種と米通信大手AT&Tがスポンサーとなる機種だ。これに加え、事業多角化による豊富な収益源がキンドル関連事業への投資拡大を支えている。

■ 通常の書籍売り上げへの影響は不透明

 それに対して「B&Nの書籍売り上げがどうなるか、それはいちかばちかやってみないと分からない」とエバンス氏はいう。電子ブックが登場する以前の書籍販売に同社が果たしてきた役割を念頭に、「B&Nの最大の挑戦は(デジタルという)全く新しい市場に乗り出したことだ。それは従来の市場より小規模で、利幅が小さく、自身のシェアも低い」と同氏は指摘する。
 B&Nの5月~7月期の純損失は5600万ドルで、前年同期の6200万ドルよりやや縮小した。書店での売上高が3%減の10億ドルにとどまったものの全体の売上高は2%増の14億ドルとなった。
 また、長年のライバルだった米書店チェーン2位のボーダーズ・グループが7月中旬、再建を断念し全資産を清算する方針を決めたことから、ボーダーズの書店閉鎖の影響で、B&Nは今年度の売上高が1億5000万~2億ドル伸びる見通しだという。

By Barney Jopson