2011年4月30日土曜日

電子書籍の(なかなか)明けない夜明け 第5回 シャープの方針変更はどこまで本気か

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/yoake/20110428_442981.html#10

参入障壁を下げることで電子書籍市場を拡大できる

 4月22日、シャープ株式会社は新しい電子書籍フォーマット、XMDF3.0用の制作ツールを7月から無償で提供すると発表した[*1]。また同社はこのXMDF3.0の仕様書を7月以降に公開することも合わせて発表した[*2]。この思い切った手を打ってきたシャープの意図はどこにあるのか、詳しく考えてみたいと思う。
 XMDF(ever-eXtending Mobile Document Format)は、同社が2001年に「ザウルス文庫」用のフォーマットとして開発した長い歴史を持つ[*3]。当初から縦書きやルビ、図版の挿入など紙の本を意識した機能を実現させている。現在、携帯電話を中心に広く普及しているXMDF2.0は、ボイジャー社のドットブックとともに、日本の電子書籍市場を二分する大きなシェアを持つ。
 このXMDF2.0は、2009年に国際規格IEC 62448(第2版)附属書Bとして収録されている[*4]。したがって規格票を買えば、ひとまず誰でもXMDF2.0のデータを作成することが可能だ。ただし、それはあくまで仕様が公開されているというだけであり、現実にコンテンツ業者がXMDF2.0でデータを作ろうとすれば、シャープによる制作ツールを購入するか、専門業者にデータ制作を依頼しなければならなかった。一説によれば、その料金は出版社で8万円、編集会社では30万円にもなるという[*5]
 つまり、今までXMDFを利用するには高額な料金が必要であり、これが電子書籍市場への参入障壁となっていた。今回のシャープの発表は、こうした同社の閉鎖的な戦略を180度転回するものだ。なぜ彼等はそのような大胆な変更を決意したのか? 同社が今回の発表に当たって公表した資料では、以下のように説明されている(図1)。
図1 シャープが公表した、今回の発表の背景
 XMDF制作ツールを無償提供することで、電子書籍や電子雑誌市場の参入障壁が下げられるという。これにより現在の市場規模を拡大し、より多くのコンテンツ業者が競い合うようにしたいというのが同社の狙いなのだ。そこで私達が考えるべきは「シャープはどこまで本気なのか」ということだろう。

無償提供される3つの制作ツール

 シャープの「本気度」を探るために、もう少し詳しく今回の発表を見てみよう。まず、今回提供されるツールで制作できるという「XMDF3.0」とは何か? これは従来からあるXMDF2.0の後継となる電子書籍フォーマット。同社が去年12月にカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社と合弁で開設した電子書店、『TSUTAYA GALAPAGOS』(ツタヤ ガラパゴス)[*6]のために開発されたものだ。2.0までの日本語組版機能に加え、見出しや図版の位置を固定したまま文字の大きさだけを変更できる機能や、画面サイズの変化に追従して自動的にレイアウトを変更して表示するリフロー機能などが特徴とされる[*7]
 このXMDF3.0のデータは3種類の形態がある(図2)。1つめはリフロー機能が実現されている「マルチレイアウト型」。2つめがページごと画像にした「イメージ型」。これは作成が容易で表示にリソースを必要としない反面、単なる画像だから文字の検索ができない欠点を持つ。3つめが前二者を折衷した「ハイブリット型」で、画像とテキストの両方を使うことでマルチレイアウト型のような柔軟な表示と、イメージ型の簡便さを両立させようとしたタイプだ。
図2 XMDF3.0における3種類のデータ形式
 今回無償提供されるソフトは3つだ(図3)。マルチレイアウト型を制作する「XMDFビルダー」、イメージ型とハイブリット型を制作する「Hybridコンバーター」、そしてこれら3つのタイプがパソコン上で閲覧できる「確認用PCビューア」だ。いずれも対応OSはWindows XP以降であり、Mac OS Xへの対応は「必要性は認識しており、これからの課題」(同社担当者)とのことだ(図4)。
図3 提供される3つのソフトウェア

図4 制作ツールの動作環境と主な機能
 中でも注目されるのが、最も高機能なXMDFビルダーだろう。その最大の特徴といえるのが、多彩なフォーマットが読み込み可能であるところだ。対応フォーマットは以下の5種類にのぼる。
  • IDML形式(Adobe InDesign CS4/CS5)
  • TTX形式(ドットブック形式)
  • XMDF記述フォーマット(XMDF2.0)
  • プレーンテキスト
  • HTML形式

IDML形式読み込みでメリットを受けるのは

 このうち目を引くのが、IDML(InDesign Markup Language)形式のサポートだ。これはアドビシステムズのレイアウトソフト、InDesignのコンテンツをXMLで記述するものだ[*8]。同ソフトは出版業界で高いシェアを持っている。つまり、現在目にする書籍や雑誌の多くを制作しているのは同ソフトだ。そのInDesignのファイルフォーマットをサポートしたことにより、紙の本のデータからそのまま電子書籍のデータができる“ワンソース・マルチユース”が可能になる。このIDMLの読み込みが本当に機能するなら、不況にあえぐ出版社にとっては夢の広がる話だ。ぜひ現物でテストしたいと考えている。
 このIDML形式のサポートを喜ぶのはどんな人々なのか、もう少し考えてみよう。既に電子出版を開始し、XMDFによる制作体制を確立しているような出版社にとっては「今さら」という話であり、じつのところメリット少ない。むしろ、InDesignを使っていながら、まだ電子出版に手を出していないような出版社こそが喜ぶのではないか。
 出版社だけではない。一口に出版業と言っても裾野は広い。この業界はさまざまな業種が支え合う水平分業で成り立っている。出版社が自分でデータを制作することはあまりなく、印刷業者や独立したDTP業者がそれを引き受けてきた。しかし、こうした業者は比較的小資本のところが多く、いくら世の中で「電子書籍元年」などと騒がれても、簡単に新規投資を決められる会社ばかりではない。
 しかし、IDML形式をサポートしたXMDFビルダーが無償公開されれば、こうした業者も簡単に電子書籍の制作に手を広げることが可能になる。つまりInDesignに習熟さえしていれば、XMDFのデータ制作を始めることができるという状況がおとずれる。

事前説明会での一問一答

 ところで今回の発表に先だち、シャープは報道各社に事前説明会を開催している。その席で興味深いやり取りがあった。それを紹介する前に、同社から示された制作ツールの提供方法等の資料を示しておく。質疑応答はこの資料を見た上で行われた(図5)。
図5 制作ツールの提供方法等
記者A:コンテンツを制作している企業に対して提供するということですが、どういう要件なのでしょうか。例えば小規模な、1人でやっている会社でもダウンロード可能なのでしょうか。
中村宏之[*9]:一応企業名とか、メールアドレスなどを登録していただきますが、事前にチェックすることは難しいので、登録していただいたらダウンロードできるようになっています。ただ、質問などを送っていただいてもサポートはできません。まあ、こちらのキャパシティの問題で線を引かせていただいています。
記者B:では個人は想定には入っているのでしょうか。
矢田泰規[*10]:今後考えていきたいとは思っているんですが、今の段階ではそこまで対応はしていません。
記者B:企業なのか個人なのか、どうやって判別するのでしょう。さっき、あまりチェックしないということでしたが、だとしたら例えば同人誌のサークル名などを入力すれば落とせちゃいますよね。
中村:まあ、ダウンロードできてしまいますね(笑い)。
記者B:ですよね(笑い)。
中村:ただ、それ(ダウンロードしたソフトウェアで制作したもの)を、どんなふうに流通させていくかというのは、また別の問題だと思っています。売っていただく、あるいは(他者に)試していただくことに対し、シャープがそれを止めることは実質的にできないと思っています。ただしシャープとして、同人誌的なものまでサポートするのかどうかはまた別の話です。
記者B:このソフトウェアで制作したコンテンツを流通させる場合、例えば必ず『TSUTAYA GALAPAGOS』からダウンロードできるようにするとか、そういう縛りはあるんですか。
矢田:ありません。電子書籍をやられている会社はたくさんありますが、どこでも自由に出していただいてけっこうです。
中村:『TSUTAYA GALAPAGOS』には出さないけれど、他の電子書店に出すという方がいらっしゃっても、それを止めることはできない(大笑い)。
記者A:では、制作ツールからDRMをかけた形で出力することはできるのでしょうか。
中村:(そういうことは)しません。DRMをかける、かけないというのは、販売サイトのビジネスがコントロールする問題ですから。
矢田:暗号化はします。改ざんとか中を抜かれないように、パッケージングした形で出力できるようにします。
記者B:つまり制作ツールは、DRMを外した配信パッケージの形までは持って行けるけれど、完全なコピーコントロールするところまでは持っていかないと。
矢田:はい。

シャープは本気で電子書籍市場の拡大を願っている

 話し言葉なので少し読みづらいが、シャープの担当者が今回の無償提供をどう考えているか、言葉にしづらい雰囲気が分かるのではないだろうか。以上のやり取りをまとめると、次のようになるだろう。
  • 公開対象は法人だが、厳密なチェックはしないので実質的に個人でもダウンロード可能。
  • 制作したコンテンツをどこで販売してもかまわない。
  • 制作ツールによりDRMをかけることはできない。ただし改ざん防止のためにバイナリ化はする。
  • シャープが同人誌のようなコンテンツの流通を始めるかどうかは別問題。
  • 無償提供したソフトに対するサポートはしない。
 つまり、その気になれば個人であってもXMDFのデータ制作を始めることができるようになる。シャープは今まで考えられなかったほど多くの人間に向けて、制作ツールを無償公開しようと考えているのだ。ここで冒頭の問いかけに答えるなら、同社はこれ以上ないほど「本気」なのだ。この大胆な方針変更は、もっと世の中から賞賛されてよいように思える。
 もっとも、この制作ツールを使えば誰でもXMDFができるというような夢は抱かないほうがよいだろう。これらは日本語組版やXMLなどの専門知識なしには使いこなせない。例えば記者団とのやり取りで登場したような同人誌ユーザーが制作ツールを習得するには、一定レベルの努力が必要となる。他方で、その前に述べた印刷業者やDTP業者については、既に専門知識を持っているので比較的容易に移行が進められるだろう。特にDTP業者は個人経営が少なくないことから、前述のような「ゆるい」公開基準の恩恵に浴する人も多いはずだ。

シャープの目論見は当たるのか?

 ではそのような印刷業者やDTP業者にXMDF3.0の制作ツールが普及することで、本当にシャープが目論むように電子書籍市場は拡大するのだろうか。同社の姿勢は賞賛するが、残念ながら世間の目を引くほど市場が拡大するかどうかは疑問が残ると言わざるを得ない。たしかにそれまで電子出版をやってこなかった人々が新規参入すれば、市場のパイ皿が多少は広がるだろう。しかし、肝心なピースが抜けている。そのヒントは、他ならぬシャープの担当者自身の言葉にある。
〈ただしシャープとして、同人誌的なものまでサポートするのかどうかはまた別の話〉
〈DRMをかける、かけないというのは、販売サイトのビジネスがコントロールする問題〉
 1つめは今回の施策が、現在の市場規模を抑制している最大の要因と考えられる、リトルパブリッシング/セルフパブリッシング用市場の未整備という問題にノータッチであること。2つめとして、今回提供されるツールではDRMは無関係ということが象徴的にあらわしているように、シャープのツールでコンテンツを作ることが、ただちに電子書店で販売できることを保証するわけでもなんでもないという問題。ツールの無償提供はコンテンツの制作増加を促すことになるかもしれないが、それが既存の電子書店の体質や思考を変え、流通の増加に結びつくものかどうかは不透明と言うしかない。したがって、同社の担当者はよく自覚しているだろうが、ツールの無償提供は有効な刺激にはなっても、それだけでは市場規模の拡大にも限りがある。
 もっとも冒頭で述べたとおり、シャープは『TSUTAYA GALAPAGOS』という立派な流通チャンネルを持っている。先の記者団とのやり取りに見られるように、同社が市場の拡大に強い意欲を見せているのは確かだ。「流通は別の問題」などととぼけたけれど、彼等の本気度からすれば、ある日突然『TSUTAYA GALAPAGOS』にリトルパブリッシング/セルフパブリッシング用のプログラムが登場しても、おかしくはないと思うのだが、さて、どうなのだろうか?
 以上、シャープの制作ツール無償公開について考えたが、ツールそのものについては書き漏らした。いくつかお伝えすべき非常に興味深い点があるので、改めて報告することにしたい。

注釈

[*1]……「電子コンテンツの制作ソフトウェア「XMDFビルダー」を出版社や電子書籍制作会社に無償提供」(http://www.sharp.co.jp/corporate/news/110422-a.html)、「次世代XMDF制作ソフトウエアの正式リリースと無償化について」(http://www.xmdf.jp/document/XMDF_Authoring_Tool.pdf
[*2]……前掲「次世代XMDF制作ソフトウエアの正式リリースと無償化について」3ページに〈XMDF記述フォーマットも同サイトからDLできるようにする予定です(7月~)〉という文言があるが、同社広報部に確認したところ、これはXMDF3.0の仕様書の公開を意味するとのことであった。
[*3]……「電子出版とXMDF技術」北村義弘、岩崎圭介、田中秀明『シャープ技報』2002年12月(http://www.sharp.co.jp/corporate/rd/journal-84/pdf/84-04.pdf
[*4]……“IEC 62448 Ed. 2.0, Multimedia systems and equipment - Multimedia E-publishing and E-books - Generic format for E-publishing” (International Electrotechnical Commission, Geneva: 2009.)
[*5]……「パソコン文書を電子ブックの「XMDF」に変換するソフト、シャープ」(http://www.nikkeibp.co.jp/archives/355/355320.html
[*6]……「シャープとCCCがメディアタブレット「GALAPAGOS」向けにエンターテイメントコンテンツストア「TSUTAYA GALAPAGOS」を共同開設」(http://www.sharp.co.jp/corporate/news/101005-a.html
[*7]……「より読みやすく、より魅力的な表現を目指し電子書籍のスタイルを変える「次世代XMDF」」(http://special.nikkeibp.co.jp/ts/article/a00i/106510/p3-1.html
[*8]……「InDesign developer documentation」(http://www.adobe.com/devnet/indesign/documentation.html#idml)を参照。なお、日本語への翻訳が有志によるIDMLWikiにて公開されている(http://psychocat.net/IDMLWiki/index.php/Main_Page/ja)。
[*9]……通信システム事業本部メディアタブレット事業推進センター副所長兼システム企画室長
[*10]……通信システム事業本部サービス事業推進センター副所長兼コンテンツ企画室長

2011年4月28日木曜日

【電子書籍】i文庫S、bREADER、SkyBook、豊平文庫 -iPhone青空文庫アプリ徹底比較- 第1回

iPhoneやAndroid機器の普及につれて「電子書籍」もずいぶんと身近なものになってきている。中でも電子書籍を手軽に楽しめるのが「青空文庫アプリ」だ。
青空文庫アプリは、Webブラウザや一般的な文書ビューアと違い、日本語を縦書きやルビを含めて和文として綺麗に表示できるところが特色となっている。
ということで、ここではiPhone用の代表的な青空文庫アプリである下記の4つを比較検証してみることにする。

i文庫S

bREADER-青空文庫

・ポケット文庫-SkyBook

・豊平文庫

尚、比較検証に際しては、なるべく各アプリのデフォルト設定を尊重しつつも、同じ条件で比較できるように、原則として表示サイズやその他の設定を合せるようにした。また、テスト機はiPhone4、各アプリは現時点の最新バージョンを使用した。
第一回の今回は、青空文庫アプリの基本でもある「青空文庫の表示性能」について、禁則処理、漢字等のルビ、挿絵、漢文等の表示などの点を比較検証してみる。
サンプルのテキストはi文庫Sに内蔵されている青空文庫の代表的な作品を中心に選んだ。

検証項目1:禁則処理

禁則処理とは、「。」「、」などの句読点は行の最初に来ない、といった表示上の禁止事項と、それの回避処理のことである。日本語を綺麗に表現する場合には欠かせない機能なのだが、昨年末KDDIから出たbiblio Leaf※1のように電子書籍端末を名乗っていながら平気で「。」が行頭に来てしまうものもあるから注意が必要だ。※1 http://www.j-cast.com/2010/10/19078596.html
ここでは、小林多喜二の「蟹工船」で検証してみる。

■i文庫S 禁則処理 
i文庫Sでは、「追い出し」で禁則処理を行なわれた。基本的な禁則処理はできている。
iB-K01
iB-K02
iB-K03
iB-K04
iB-K05

■bREADER 禁則処理 
bREADERは、「追い出し」か「ぶら下げ」を設定で選べるようだ。参考画像は行末を揃えるように設定したものだが、禁則処理だけでなく字詰めも行われている。また、「」( )などのバランスも調整して版面を仕上げているようだ。
bR-K01
bR-K02
bR-K03
bR-K04
bR-K05

■SkyBook 禁則処理 
SkyBookでは、「ぶら下げ」で禁則処理が行われた。禁則処理自体はできているのだが、SB-K03、SB-K04などを見てもわかるように行末がガタガタになってしまっている。
SB-K01
SB-K02
SB-K03
SB-K04
SB-K05

■豊平 禁則処理 
豊平文庫でも「ぶら下げ」で禁則処理が行われた。これも禁則処理自体はできているが、HO-K05などを見ると――の2倍ダーシが離れてしまっている。
HO-K01
HO-K02
HO-K03
HO-K04
HO-K05

検証項目2:ルビの表示

ルビは、文章内の任意の文字列に並んで、ふりがな/説明・注釈/異なる読み方などを付け加えたりするための補助情報のことである。通常縦書き文章では、その文字の右側に本文より小さな文字で表記される。
ここでは、芥川龍之介の「歯車」で検証してみる。

■i文庫S ルビ
i文庫S は、iB-R01を見てわかるように「格子-こうし」はいいが、「註文-ちゅうもん」はルビが若干下にズレている。また、「露-あらわ」は下に飛び出してしまっている。
iB-R01

■bREADER ルビ
bREADERは、通常のルビはほぼ中央、行末のルビは行末が揃うように表示されるようだ。
bR-R01

■SkyBook ルビ
SkyBookは、ほぼ中央にルビが表示されるようになっている。
SB-R01

■豊平 ルビ
豊平文庫 は、「註文-ちゅうもん」はいいようだが、 「格子-こうし」は上に偏ってしまっている。
HO-R01

検証項目3:英語表記とルビ

英語と日本語が入り混じった文章は、表示のバランスが難しく、また英語につけられるルビは、漢字などの場合と違って、複数のワードに対してつけられる場合があるため、より難しい処理が求められる。

■i文庫S -英語ルビ
i文庫Sは、参考画像のように「Crispissa」のルビが違うところについてしまっているし、「Behind stairs」のような2ワードの単語のルビもズレている。また、「Athbash法」のような英語と日本語で構成されるような単語では離れてしまっていて1単語に見えない。
iB-E01
iB-E02
iB-E03

■bREADER -英語ルビ
bREADERは、「Crispissa」「Zephyretta」や2ワードの「Behind stairs」でもほぼ中央にルビがつけられている。また「Athbash法」のような場合は英語部分にルビがつけられるようになっているようだ。

bR-E01
bR-E02
bR-E03

■SkyBook -英語ルビ
SkyBookは、「Crispissa」「Zephyretta」はほぼ中央にルビがつけられているが、「Behind stairs」のような2ワードではルビがずれてしまっている。「Athbash法」などの場合は英語部分にルビがつけられている。
SB-E01
SB-E02
SB-E03

■豊平 -英語ルビ
豊平文庫は、参考画像をみてもわかるように英語にはルビがつかなかった。また、英単語が横表示されず一文字ずつ縦表示されるようだ。
HO-E01
HO-E02
HO-E03

検証項目4:挿絵の表示

これは青空文庫に限らず、英語の本などでも同様だが、挿絵を入れると楽しくてわかりやすい本が出来上がる。
ここでは、殺人事件の証拠物件の挿絵などが登場する小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」で比較してみよう。

■i文庫S -挿絵の表示
i文庫Sでは、iB-S02に挿絵のみが表示された。また挿絵のサイズは拡大されているようだ。

iB-S01
iB-S02
iB-S03

■bREADER -挿絵の表示
bREADERでは、bR-S02でもわかるように挿絵と文章が混在表示されるようだ。
bR-S01
bR-S02
bR-S03

■SkyBook -挿絵の表示
SkyBookは、i文庫Sと同様SB-S02に挿絵のみが表示される。また挿絵のサイズは通常のようだが、画像の枠が表示される。
SB-S01
SB-S02
SB-S03

■豊平 -挿絵の表示
豊平文庫もbREADERと同様、挿絵と文章の混在表できるようだが、画像に枠が表示されてしまうので浮いるように見える。
HO-S01
HO-S02
HO-S01

検証項目5:訓点等の表示

日本では古くから漢文の訓読が行われている。
訓読とは、漢文を読む際に中国語や仏典の読経などのように音読みせず、漢字の字義による訓読みを利用して、日本語として読むことである。
それを表記する訓点には、返り点や一二点などがあるが、青空文庫でも漢文が出てくるものがあるので、下記のサイトを参考に内藤湖南の「卑弥呼考」で比較検証してみよう。

[電子書籍] Windows 用の青空文庫ビューア、 3本を試してみる。
http://bluewatersoft.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/windows-3-d1af.html

■i文庫S -訓点
i文庫Sは、参考画像を見てもわかるように、返り点、一二点等は全く表示されない。

iB-T01
iB-T02
iB-T03
iB-T04
iB-T05
iB-T06

■bREADER -訓点
bREADERでは、返り点、一二点などの訓点が表示される。上記サイトに登場したWindows 用の青空文庫ビューアと比較しても、行末揃えや割り註なども含めて高い表示能力がある。
bR-T01
iB-T02
iB-T03

■SkyBook -訓点
SkyBookもi文庫Sと同様に、返り点、一二点等は全く表示されない。
SB-T01
SB-T02
SB-T03
SB-T04

■豊平 -訓点
豊平文庫も、bREADERと同様に返り点、一二点等の訓点を表示することができる。
HO-T01
HO-T02
HO-T03
HO-T04