2011年7月30日土曜日

Barnes & Noblesの売却先候補にAppleの名前が浮上

http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1107/29/news034.html

メディアコングロマリットからの買収提案などにさらされている米書店チェーン最大手の米Barnes & Noblesの売却先候補として、Appleの名前が持ち上がっている。

米国のIT系ニュースサイト「BGR.com」によると、現在売却先を探している米書店チェーン最大手の米Barnes & Noblesの売却先候補として、Appleの名前が浮上しているという。

記事によると、これはまだうわさレベルの話としながらも、2社はビジネス的に相互補完する関係にあるため、Appleにとってもまんざら悪い話ではないとしている。

Barnes & Noblesの経営陣は電子書籍投入時代に備えて2010年10月からグループ売却先の候補探しを開始しており、現在も複数の企業グループと交渉している模様。

2011年7月29日金曜日

サムスン「Galaxy S II」、85日間で500万台を販売 - 8月にはいよいよ米国市場へ

http://wirelesswire.jp/Watching_World/201107281005.html

サムスン(Samsung)は27日、同社の最新型ハイエンド・スマートフォン「Galaxy S II」の販売台数が、発売開始から85日で500万台に達したと発表した。ヒット作となった前モデルを上回る好調な売れ行きで、来月に予定される米国市場への投入などで、この売れ行きはさらに加速しそうだという。
Galaxy S IIは4月にまず韓国で発売され、5月からは欧州市場などでも発売が開始されていたが、韓国での発売から55日めで累計300万の大台に乗せていたことから、その後約1か月で新たに200万台が売れた計算になる。サムスンでは今後、最大のスマートフォン市場である米国をはじめ、さらに多くの市場へGalaxy S IIを投入していく予定で、累計の販売台数は7か月めで1000万台に達すると見込んでいるという。
Galaxy S IIがこれほど大ヒットしている理由について、GigaOMでは同機種に搭載されたスーパーAMOLEDプラス(Super AMOLED Plus)ディスプレイや、1.2GHzのデュアルコアプロセッサ、8メガピクセルのカメラ、それに一部のモデルに内蔵されているNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)チップなどを挙げている。またこれらハード面の特徴に加え、ソフトウェア面でもユーザーインターフェイス(UI)に独自の改良を加えていることや、映画や音楽、電子書籍などのコンテンツ配信の仕組みを自前で用意していることも奏功しているという。
サムスンは今月29日に第2四半期決算を発表する予定だが、同期中に携帯電話機の販売台数で、これまで長く首位の座を守ってきたノキア(Nokia)を追い抜くと複数のアナリストが予想している。ノキアは22日に行った決算発表のなかで、4-6月期中の携帯電話機の出荷台数が前年同期比16%減の7180万台に、売上も同20%減の25億5100万ユーロになったことを明らかにしていた。また、とくにスマートフォンの出荷台数については同34%減の1670万台となり、同期中に2034万台のiPhoneを販売したアップル(Apple)に首位の座を明け渡している。
なお、サムスンはAndroid OSを搭載するGalaxyシリーズのほか、マイクロソフト(Microsoft)のWindows Phone OSや、自社開発のBada OSを搭載するスマートフォンも手がけていることから、同期の合計販売台数は1950万台前後とする見方が優勢だという。
201107281000.jpg

 

2011年7月28日木曜日

Amazon.comの2011年Q2決算は51%増収、コスト増で2四半期連続の減益

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110727/362904/

米Amazon.comが米国時間2011年7月26日に発表した同年第2四半期の決算は、売上高が99億1300万ドルで前年同期の65億6600万ドルと比べ51%増加した。純利益は1億9100万ドル(希薄化後1株当たり利益は0.41ドル)で、前年同期の2億700万ドル(同0.45ドル)から8%減となり、2四半期連続で減益となった。

営業利益は2億100万ドルで、前年同期の2億7000万ドルから26%減。営業利益率は2%で、前期の3.3%、前年同期の4.1%から低下した。売上原価、物流設備、ネットインフラなどにかかる営業経費が97億1200万ドルと前年同期から54%増加している。

事業別の売上高は、本やCD、DVDなどを扱うメディア部門が36億6000万ドルで前年同期比27%増。家電・日用品部門は58億9400万ドルで同69%増えた。地域別の売上高は、北米(米国とカナダ)が同51%増の54億600万ドル、海外部門(英国、ドイツ、日本、フランス、中国、イタリア)が同51%増の45億700万ドルとなった。

同社最高経営責任者(CEO)のJeff Bezos氏は、「低価格、品ぞろえの拡充、即配サービス、イノベーションといった要素が、過去10年間で最も高い成長率をもたらした」と述べている。四半期中に発売した電子書籍リーダー端末の広告表示機能付きモデル「Kindle with Special Offers」がKindleシリーズで最も売れる商品になったと説明している(関連記事:Amazon、電子書籍端末の広告表示機能付き廉価版を米国で発売)。

Amazon.comが併せて発表した2011年第3四半期の業績見通しは、売上高が103億~111億ドルの範囲で、前年同期比36~47%増と予想している。また営業利益は2000万~1億7000万ドルで、最大93%減少する見込み。

2011年7月27日水曜日

まもなく「日本を追い越す」米国の電子書籍市場 -- 王者アマゾンを「いつもの顔ぶれ」が追撃

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110726/221682/?P=1

アメリカの電子書籍市場が順調に拡大している。

アマゾンでは、既に電子書籍の販売数が紙の書籍を上回ったとされる。出尽くし感のある電子書籍リーダーでも、7月17日にグーグルの電子書籍販売サービス「Google eBooks」に初めて対応した電子書籍端末が、韓国のデジタル機器メーカーのアイリバー(iRiver)から発売された。

日本では、大騒ぎの割になかなか普及の進まない電子書籍だが、米国ではなぜうまくいったのか。なぜいまだに、電子書籍端末が次々と出てくるのか。ここでちょっと振り返っておきたい。

スタートでは出遅れたアメリカの電子書籍

電子書籍リーダーではアメリカで独走状態にあるアマゾンの「Kindle」が発売されたのは2007年11月のこと。しかし、電子書籍の試みはそれよりはるかに早く、1990年代後半から複数のベンチャー企業が端末を発売。2006年にはソニーの「Sony Reader」が好意的なレビューを集めるなど、「胎動」は既に存在していた。2008年の電子書籍リーダーのリストというのが手元にあるが、主なものだけでも8種類(Kindle含む)がリストアップされている。

しかし、2007年時点の各種推計によると、当時のアメリカの書籍全体に占める電子書籍の比率はわずか0.2%にとどまっていた。これに対して同時期の日本の比率は2%あり、日本の方が「はるかに進んでいた」のである。

当時は、なぜ「アメリカはダメなのか」についていろいろな説明がなされていた。いわく、「コンテンツの品揃えが悪い」「ダウンロードの仕方が面倒」「日本と異なり、ユーザーの間でダウンロードして読むというスタイルが浸透していない」「アメリカの車中心のライフスタイルでは、オーディオブック(本を読み上げて音声で聴くもの)の方が合っている」「紙の書籍が安価なため、電子版による価格減の魅力が少ない」などなど。「やはり紙の方が読みやすい」といった意見も聞かれた。

実は、円ドル換算レートにもよるが、現在でも日本の方が電子書籍の市場は大きい。米出版社協会(AAP)の調べによると、アメリカの2010年の電子書籍売り上げは4億4130万ドル(約360億円)。一方、日本での同年の売り上げは、インプレスR&Dの調べによると、650億円だ.

こうした日本の「電子書籍」の大半は、携帯電話向けのコミック。いわば、「非主流」のコンテンツを最適なニッチ・ユーザーに届けるためのルートとなっている。

上記のような状況が続いていたため、Kindleの発売前には「うまくいかないだろう」との見方も多かった。しかしフタを開けてみたら発売後5時間で売り切れ、その後は端末も電子書籍コンテンツも順調に伸びている。

Kindleがヒットしたのは、それまでの電子書籍端末と大きく異なっていたからにほかならない。先に挙げた「アメリカのダメな点」のうち、「コンテンツの品揃えが悪い」「ダウンロードの仕方が面倒」の2点を解消していたのである。

アマゾンのキンドルが成功した理由

携帯ネットワークに常時接続する機能が内蔵され、パソコンに同期する必要がなく、購入した電子書籍を直接端末にダウンロードできる。ユーザー側で面倒なWi-Fiの設定も携帯キャリアとの契約も月額アクセス料金も不要なので、ユーザーの心理的な敷居は大幅に下がり、「ダウンロードの手間」が大幅に省かれた。

これは、アマゾンが携帯キャリア(当初はスプリント、現在はAT&T)からネットワークの卸提供を受け、同社自身が「MVNO」として自由に料金を設定できることで可能になった。このように、料金的にも使い勝手的にも、「ネット」の存在がユーザーからはほとんど見えない使い方を筆者は「透明なネット」と呼んでいるが、その最初の本格的な例がKindleであった。

また、アマゾンのスケールメリットを生かして、電子書籍そのものの品揃えが豊富である。既にアマゾンのアカウントを持っているユーザーにとっては、紙と電子書籍のどちらでも同じ程度の手間で買える「品揃え」となる。

タイミングも良かったと思われる。Kindleが発売された2007年には、アップルがスマートフォンの「iPhone」を発売した。「アメリカのダメな点」の3点目として挙げた「コンテンツをダウンロードして読むというスタイル」がその後アメリカで急速に浸透したのは、KindleとiPhoneがきっかけになったと考えていい。無線によるダウンロードというコンセプトが、両者の相乗効果で「話題」「流行」となり、ユーザーに急速に受け入れられていった。

背景には、遅れていた3G携帯ネットワークの展開がこの頃、ようやくアメリカ全土にほぼ行き渡ったことがある。携帯事業者が新ネットワーク対応端末への切り替えを促進するために、新しいコンセプトの端末やそのためのサービスを積極的に取り入れるという、数年に一度の特異な時期に当たっていたことが大きかった。

この後、多くの競合端末やサービスが登場した。Kindleと同様の機能や使い勝手を持つ「専用端末」としては、ソニーの「Reader」や大手書店バーンズ・アンド・ノーブルの「Nook」などがあり、またiPhoneやiPadなどの多機能端末でも、Kindleのアプリを載せたり、アップルのiBookを利用するなどの方法で、電子書籍を読むことができる。

2010年3月のAAPの発表によると、2011年2月の書籍販売全体の20%を電子書籍が占めるようになっている。また、アマゾンでは、同社の2011年4月の売り上げのうち、紙の書籍を100とすると電子書籍が105となったと発表(有料の書籍のみの比較、無料のものを含めると電子書籍がもっと多いと推測される)。アナリストは、アメリカの電子書籍売上の3分の2のシェアをアマゾンが握っていると推測している。

2010年のアンケート調査によると、電子書籍用端末として最も多く使われているのはパソコンで、これにKindleが僅差で続き、圧倒的な強みを見せている。

画像のクリックで拡大表示
(注)ソニーの商品名についてはForrester Researchの元資料の記述が「eReader」となっているため、グラフではそのまま掲載しているが、実際の商品名は「Reader」である。



「ダメな点」の4番目として「アメリカのライフスタイルが問題」とも指摘されていたが、実はアメリカ人は本をよく読む。アメリカでソニーの電子書籍事業を手がける担当者はこう語る。

「ブッククラブ活動を楽しむ人が多いです。数人の友人同士で同じ本の同じ部分を読み、定期的に誰かの家に集まって、お茶やワインを片手にその本について語り合うという活動で、最近では主婦同士の集まりなどでも活用されています。例えば人気テレビ番組を友人の間で話題にするのと同じように、ベストセラー本について話題にするのです」

こうした場面でも、紙の書籍と同様に、電子書籍も活躍しているわけだ。

そして主流となった電子書籍の特徴

電子書籍で人気のあるコンテンツは、何か特徴があるのだろうか。

「紙の書籍とだいたい同じです。電子書籍だと、ロングテール(売り上げのあまり大きくない「尾」部分のもの)が活性化するという説もあるようですが、実際には紙の書籍以上に、ベストセラーの比率が大きいと言われています」とソニーの担当氏は話す。

例えば、ハーレクイン・ロマンスなどの女性向けロマンス小説では、電子書籍なら読む時も買う時も「恥ずかしくないからいい」ということもあり、サスペンスやロマンスなどといった『読み捨て』的なタイトルには電子書籍が好まれるとの記事を読んだ記憶がある。また、ベストセラーのジャンルでいえば、映画化もされたスウェーデン作家の話題の小説「ドラゴン・タトゥーの女」が今年4月に史上初の電子書籍のミリオンセラーとなった(出所はこちら)。

日本の電子書籍が「紙の書籍とは異なる特殊コンテンツ、一部のユーザー向け」であるために伸びしろが小さいのに対し、「Kindle以降」のアメリカの電子書籍は、「紙の書籍の代替、主流ユーザー向けの書籍コンテンツ」という、より大きな潜在市場にこうして伸びていったのである。

この潜在市場の大きさが、市場の成長率に表れている。日本の2009年から2010年の伸び率は13.2%。これに対し、アメリカは同じ期間で164.4%という爆発的な成長の真只中なのである。この勢いで行くと、米国の電子書籍は、名実ともに日本を追い越すことになる。

現在、電子書籍は紙の本よりも少々安い価格が付けられているが、筆者のユーザー目線からすれば、それよりも電子書籍の使い勝手が主要な購入動機だ。「その場で入手でき意識せずに持ち歩ける手軽さ」「紙よりもかさ張らず軽い」「サーバーに購入履歴が保存されているため紛失の心配がない」「保存場所が必要ない」などといった点だ。

我が家では、子供の課題図書レポートがあるのを忘れていて、今夜中にどうしても本を入手しなければいけないという時に、慌てて騒ぐことなくKindleで電子書籍を購入できて感謝したことがあった。

一方、ビジネス書などで他ページの図を参照する場合や、雑誌・新聞のように、「ランダムアクセス」を多用するコンテンツについては電子書籍端末では読みにくい。紙の書籍とそれぞれの得意分野があるように思う。

また端末も、ユーザーの嗜好によっても、使い分けされている。iPadやスマートフォンを電子書籍以外の多くの目的にも使う「テック指向ユーザー」とは異なり、ブッククラブに参加する主婦などにとっては、本を読むことだけに機能を最適化して絞り込み、月額料金も不要な専用端末が合っている。こうした「マス層」の支持が、上述した「Kindleの強み」の背景だ。

このように、アメリカの電子書籍はアマゾンというキープレーヤーが本気を出したことで初速がつき、4年たった現在もアマゾンが先頭を爆走中だ。しかし、まだ勝負は終わっていない。

本コラムで過去2回、これまでそれぞれの得意分野に棲み分けていた有力プレーヤーが、映像や音楽などの有料コンテンツにそれぞれ相互参入し、「総合コンテンツ・プレーヤー」戦略に動いている様子を見たが、電子書籍もその有料コンテンツの1つである。

iPadの電子書籍リーダーとパソコンの「iBook」でアップルは既に参入済み、ソニーもアメリカ市場では継続して電子書籍市場で戦っており、日本の市場にも再参入している。ここに、今回おなじみのグーグルが参入してきて、いつもの顔ぶれが揃ったことになる。

戦線拡大するデジタル・コンテンツ商売

これまで見てきたように、グーグルは有料コンテンツ販売の実績があまりない。今回の電子書籍プロジェクトでは、「Google eBook」をオープン・プラットフォームとして展開し、端末は自社製でなく韓国のアイリバーなどの第三者が担当する。ちょうどスマートフォンのOS(基本ソフト)「Android」と同様のやり方だ。コンテンツは、「販売」よりも無料タイトルの配布(300万タイトル)を強調している。

アマゾンとアップルが、ストアと端末の組み合わせによる「販売」の仕組みであるのに対して、グーグルは独自の「クラウド」戦略の一環として電子書籍を位置づけている。こう考えられよう。

端末ベンダーは、アマゾンとアップルのエコシステムからはじきだされた下位プレーヤーであるため、そう簡単にアマゾンの牙城は崩せない。スマートフォンでは携帯電話事業者の販売ルートがカギとなったが、アイリバー製の電子書籍端末は大手ディスカウントチェーンのターゲット(Target)で販売することになっており、どの程度追撃できるか興味深い。

翻って日本の電子書籍の行方は

さて、こうしたアメリカの状況と比較して、日本の電子書籍は今後どうなっていくのだろうか。

アメリカの以前の例でも見たように、「文化の違い」というのはあまりアテにならないだろう。ユーザーの洗練度も日本は申し分ない。日本で「主流の書籍」の電子書籍化がなかなか進まないのは、既存の流通ルートの抵抗が大きいから、というのは既に定説と言える。

アメリカでアマゾンが電子書籍の「ブレークスルー」を実現できた背景には、紙の書籍で販売実績を積み上げ、出版社との力関係が出来上がっていたことに加え、アマゾンは紙の流通を前提とした資産を持たない挑戦者、という特別な立場だったことがある。

アメリカほどアマゾンのシェアが大きくない日本の書籍業界では、電子書籍を積極的に進めるモチベーションを持った「中の人」がまだ存在しない。ソニーはハードメーカーとしては大手だが、書籍販売の分野で「みんなを儲けさせてあげている」という、書籍業界への無言の圧力をかけられないのがつらい。

時代の流れに遅れないよう、出版社や卸など既存プレーヤーも皆それなりに電子書籍には取り組んでいるが、「本業」と比べて投資の割に売り上げはまだ小さいので、なかなか本腰にならない。本気のモチベーションを持つのは、先進的な出版社など、まだ少数のように見受けられる。

このため、電子書籍ビジネスが十分な初速を得られる閾値に達するまで、まだ相当に時間がかかるのではないかと思う。これを加速するには、例えばiPhoneとソフトバンクの例のように、販売力やコンテンツ調達力を持った強力なパートナーの存在が必要なのでは、と筆者は考えている。最近、楽天とパナソニックが電子書籍で提携したが、こうした試みが起爆剤になるのかどうか。

筆者は、夏休みで日本に帰ってきた折、狂ったように文庫本やマンガを買いあさってしまった。そのおかげでスーツケースがパンクしそうになり、重くて大変だったので、改めて「日本でも電子書籍がほしい」と強く感じている。また、本の著者の端くれとしても、電子書籍で少しでも多くの人に読んでもらえるようになってほしいと考えている。

電子書籍の市場規模拡大 新しい端末向けは約4倍

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110727/its11072708070000-n1.htm

「電子書籍元年」と呼ばれた平成22年度の国内の電子書籍市場規模(雑誌を除く)が、前年度比13.2%増の約650億円と推計されることが、メディア関連の調査を手掛ける「インプレスR&D」の調査で分かった。

市場を牽引(けんいん)しているのはコミックを中心とした携帯電話向けで、572億円と全体の88%を占めた。パソコン向けは約53億円でほぼ横ばいだったが、スマートフォン(多機能携帯電話)やiPad(アイパッド)など新しい端末向けは約24億円と前年度の約4倍に成長した。

同社は、スマートフォンの急速な普及や海外事業者の参入などで電子書籍市場はさらに拡大し、27年度の市場規模は22年度の約3倍に当たる2000億円程度に達すると見込んでいる。

シャープ、XMDF形式の電子書籍コンテンツ制作ソフトを無償提供開始

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110726/362870/

シャープは2011年7月26日、電子書籍フォーマットの一つである「XMDF」(ever-eXtending Mobile Document Format)形式のコンテンツを制作するためのソフトウエア「XMDFビルダー」の無償ダウンロード提供を開始した。

無償提供の対象となるのは、「一般ユーザーに販売するコンテンツの制作および試作をする企業、および同目的でコンテンツを委託制作する企業」(シャープ)。同日付けで正式オープンしたXMDF関連の情報提供サイト「XMDF情報スクエア」で会員登録をすることでダウンロードできる。

無償提供する最新版の「XMDFビルダー3」は、端末の画面サイズや縦持ち/横持ち形態などに合わせてレイアウトを動的に調整可能な「リフロー型」のコンテンツ(図)を編集および制作できるツール。同社の電子書籍端末「GALAPAGOS」などから利用できる電子ブックストアサービス「TSUTAYA GALAPAGOS」が採用している最新規格「XMDF 3.0」に対応するほか、従来のXMDF 2.x規格に基づくコンテンツの編集や制作も可能となっている。

電子書籍向けに一からXMDF形式のコンテンツを制作するのではなく、紙の書籍向けに制作したコンテンツなど既存のコンテンツを活用するための仕組みも用意する。具体的には、米アドビ システムズの組版ソフト「Adobe InDesign CS4」以降のバージョンが出力可能な「IDML」(InDesign Markup Language)形式のファイルやプレーンテキスト、HTMLファイルなどを取り込むことができるようになっている。

電子書籍 表現の拡大への可能性 長尾真・国立国会図書館長

http://sankei.jp.msn.com/life/news/110726/bks11072608180000-n1.htm


東日本大震災は筆舌に尽くしがたい大きな被害を引きおこした。4カ月たった現在も多くの人が避難施設で過ごし、がれきなどの整理、復興の目途は立っていない。そういった中で子供たちは勉強をしたい、本を読みたいと思い、また大人は健康問題、家事や住居など種々の問題で調べものをしたいと思っている。

役場の人たちも新しい事態に直面し、種々の参考になる資料が必要となるが、それらはすべて流されてしまって手元にはないという状況である。全国から多くの本が送られてきているが、それらを適切に整理して各地に振り分けるのは大変だし、それらを置く図書室はなく、また貸し出しなどをする図書館司書もいない。

このような状況において電子書籍が見なおされている。電子読書端末をもっていれば必要なものを直接読むことができるからである。

したがって国として出版社に呼びかけ、過去10年、20年の出版物を電子書籍として1カ所のデータベースに集める。この際、多くの人が同時に読むことを前提として、1冊あたり定価の何十倍かのお金を電子書籍提供の出版社に支払う。そして学校や役場、避難所など、必要なところに電子読書端末を多数配布して、自分の必要とする本、資料を自由に読めるようにする。こうして、公共図書館や学校の図書室が整備されるまでの何年かをしのぐことが考えられる。幸い被災地への資料の送信は著作権者の方々から一般的な許諾が得られているようなので、これは1つの有力な方法と考えられるだろう。

国立国会図書館においては電子図書館の建設をずっと続けてきており、現在では100万冊が電子的に読めるようになっている。またネット上の多くの貴重な情報を集めているが、特に東日本大震災の時は被災した各地の地方自治体や関係機関の発信する情報を毎週のように集めてきた。

このような歴史的な大災害における人々の声、記録、ビデオ映像、インタビューの記録、政府や地方自治体その他の関係機関の発する情報などを種々の観点からの研究に役立てるようにすることが大切であり、これらの記録の収集と保存を呼びかけている。

このような大災害でただ1つしかない貴重な資料がなくなる危険を避けるためには、それらをデジタル化し、そのコピーを何カ所かに分散して保存することが大切となる。既に京都の社寺が持っている国宝級の美術品などをデジタル複製する努力がなされているが、これは適切な方法である。拠点分散という意味からも国立国会図書館は東京だけでなく関西館をもち、そこに資料の一部を保存するとともに電子図書館機能を置き、万一の場合もサービスができるようにしているのである。

電子書籍を推進してゆくことが大切だという人と、紙の本の良さを重視しそれに反対する人との意見がいろいろと交差している。

しかしそこでの議論の多くは、現在の紙の本をそのまま電子化した電子書籍と現在の電子読書端末を前提としてのものであり、将来もっと便利な電子読書端末が作られること、紙の本では絶対に表現できないすぐれた機能を電子書籍が持っていることを念頭においた議論が必要である。

たとえば外国語を学習するテキストの場合、単語や文の発音は紙の本では聞けないが、電子書籍では聞くことができる。紙の本なら写真しか貼れないが、電子書籍ならビデオ映像を埋め込んで見せることもできる。また電子読書端末に読者が文章を打ちこんで、作者に感想や意見を伝えることもできるし、同じ本を読んでいる人たちとネット経由で意見交換をすることもできるだろう。

これまでの読書の様態とは全く違った世界が展開されるようになるわけで、著作者、読者にとって魅力のある時代が来ることは間違いないのである。

2011年7月26日火曜日

米Amazonもギブアップ、ついにiOS向け電子書籍アプリから自社課金サイトへのリンクを撤去

http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=2596

現地報道によると、Amazon社(本社:米国ワシントン州)は現地時間7月25日、Apple社(本社:米国カリフォルニア州)のアプリ内課金規定への対応として、自社がiTunes App Storeに公開中のiPhone・iPad向け電子書籍アプリ「Kindle for iOS」から購入オプションを撤去した。

Amazon社(本社:米国ワシントン州)はすでに、iTunes App Store上でiPhone・iPad用アプリを2.8にアップデート。アプリから「Kindle Store」ボタンを削除した。新聞・雑誌の購読は「Kindle Store」から行うようになる。既存ユーザーはiOSデバイスで閲覧可能とのこと。

なお、米Wall Street Journal紙のアプリも購入リンクを外すことを発表した。

BookLive!、先週発売の東芝「レグザタブレット」に提携電子書籍アプリ「Book Place」が標準搭載されたことを発表

http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=2595

株式会社BookLive(本社:東京都台東区)は7月22日、株式会社東芝(本社:東京都港区)が同日発売したAndroidタブレット「レグザタブレット AT300/24C」に、自社ベースの電子書籍アプリ「Book Place powered by BookLive!」を標準搭載したことを発表した。

このBook Placeアプリは、BookLive側との提携により東芝側が運営する電子書籍販売ストアで、複数のコミックや書籍のサンプルを会員登録なしですぐに読めるようになっている。また、BookLive側と同じIDでログインできるようになっており、東芝独自の合成音声出力ソフトにも対応しているとのこと。

なお、株式会社BookLiveは、凸版印刷・インテル・ビットウェイ系の電子書籍ベンチャーで、現在Windows版とAndroid版の両方に電子書籍ビューワを提供している。

Appleのアプリストア新ルールでKoboやWSJがアプリ内販売機能を削除

http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1107/25/news070.html

iOSアプリ内でのコンテンツ販売を禁止するAppleの新ルールに対応するため、Koboがアプリをアップデートし、販売リンクを削除した。Google BooksアプリがApp Storeから消えたのもこのルールの影響とみられている。
     
電子書籍事業を手掛けるカナダのKoboは7月23日(現地時間)、米Appleが新たに策定したiPhoneおよびiPadアプリに関する新たなルールにより、同社アプリ内での書籍販売ができなくなったと発表した。
 同社は電子書籍ストアのKobo Storeを運営し、同ストアから購入した書籍を読むための電子書籍リーダー「Kobo eReader」と、端末で利用できるモバイルアプリをiPhone、iPadのほか、カナダのResearch In Motion(RIM)製BlackBerry、米GoogleのAndroid、米Hewlett-Packard(HP)のPalm向けに提供している。
 同社の公式ブログによると、今回のルール改訂により、iPhoneおよびiPadアプリのユーザーは、コンテンツを検索・購入するためにSafariブラウザ経由でKobo.comにアクセスしなければならなくなった。米App StoreのKoboアプリは23日付でバージョン4.5.1にアップデートされており、このアップデートでの改訂項目として「アプリケーション内からKobo Storeを削除しました。Webサイトからは引き続き書籍を購入できます」という説明がある。なお、これまでアプリ内で購入したコンテンツはそのまま読むことができる。

電子書籍ビジネス拡大するGoogle 「Book Search訴訟」は振り出しへ?

http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/column/infostand/20110725_462927.html


多方面に展開しているGoogleが、重要分野の一つである電子書籍でも活発な動きを見せている。同社の電子書籍配信サービス「Google eBooks」を統合した初の電子書籍デバイスが発売となり、人気シリーズ「ハリー・ポッター」の電子版も獲得した。先行するAmazonに本格的に挑むのだが、一方で、電子書籍戦略の中核である書籍全文検索プロジェクトの行く手には暗雲が広がっている。

初のGoogleサービス統合電子書籍リーダー

Googleは7月12日、公式ブログで、Google eBooksのプラットフォームを組み込んだ初の電子書籍リーダー端末が発売されると報告した。「Story HD」という名称で、MP3プレーヤーなどで知られる韓国系のiriverが製造・販売する。パソコンを経由せず、無線LAN経由でダイレクトにGoogle eBooksの電子書籍を購入できるのが特徴だ。ブログでは「新しいマイルストーン」とたたえている。
Story HDは重さ207グラム、厚さ9.4ミリ。6インチの16階調モノクロ電子ペーパーとQWERTYキーボードを搭載しており、大きさも重さも約1年前に発売されたAmazonの第3世代機「Kindle3」によく似ている。画面解像度はXGAで、Kindle3(SVGA)を大きく上回るが、価格はKindle3の139ドル(Wi-Fi版)に対して139.99ドルとして、真っ向から勝負を挑む。
といっても、Story HDはGoogle eBooks専用の端末ではない。iriverが以前から準備していた自社製品をGoogleのサービスに対応させたというのが実際のところだ。Google eBooksのAPIは公開されており、デバイスやリーダーソフトのメーカーは自社製品に取り込むことができる。Googleのブログでは「さらに登場するGoogle eBooks統合デバイスにご期待」と述べ、こうしたパートナーを増やすことに意欲を見せている。

電子書籍をクラウドの本棚に

Google eBooksは2010年12月、北米でスタートした。書籍全文検索サービス「Google Books」(旧Google Book Search)と統合され、検索からシームレスに到達して電子書籍タイトルを買えるようになっている。現在、有料電子書籍は数十万タイトルを取りそろえており、無料で利用できるパブリックドメインの書籍は300万タイトルを超える。
さまざまな端末から読めるクラウドサービスが特徴で、購入した電子書籍は、Googleサービスのオンライン本棚に保管される。これによって、パソコンで読み始め、通勤途中はタブレットやスマートフォンで続きを読むといったことが可能になる。Appleの「iCloud」が楽曲をクラウド上に持つように、本をクラウド上に持つのだ。
このクラウドには人気タイトルも加わる。7月20日に、今秋オープンするハリー・ポッター公式サイト「Pottermore」と提携して、ハリー・ポッター・シリーズの電子版を販売すると発表した。Pottermoreのオンラインショップでタイトルを購入して、ほかの電子書籍と一緒にGoogle上の本棚に保管する。(発表当初、Amazonを出し抜いて獲得したとみられたが、TechCrunchによると、Amazonも同シリーズを販売する見込みという)
オープンを標ぼうするGoogleは、APIを公開してさまざまな拡張サービスを展開している。6月16日にはアフィリエイトプログラムの開始を発表した。ブログなどに書籍のリンクを置いて、販売が成立するごとに報酬が得られる仕組みで、ベータ版から本サービスへの移行だ。また、以前から提供している中小の独立系書店のWebサイト向け販売サービスの参加書店は250を超えた。
Googleの電子書籍ビジネスの体制は次第に整ってきた。だが、電子書籍検索サービスの方では、“のどに刺さった大きな骨”「Book Search訴訟」問題が、厳しい局面を迎えている。

Book Search訴訟の三者合意が解消か

Book Search訴訟は、Googleの進めていた書籍電子化・全文検索プロジェクトGoogle Book Searchが著作権法違反にあたるとして、出版・著作権者団体のthe Association of American Publishers(AAP)とAuthors Guildが2005年10月に起こした。
3年後の2008年にまとまった三者の和解案は、絶版本、著作権者不明本(orphan books)をデータベースに取り入れることや、Google側が総額1億2500万ドルを拠出して、著作権料分配組織「Book Rights Registry」(版権レジストリ)の設立などにあてることなどを内容としている。
しかし、ほかの権利者団体や図書館の団体、さらにMicrosoftやAmazonなどのライバルが猛反発した。これを受けて、連邦地裁は和解案の合法性を審理。担当のDenny Chin判事は今年3月、最終的に却下の判断を下した。これによって、GoogleとAAPなどは和解案の修正再提出を求められている。
この修正案のためのヒアリングは、まず6月に一度開かれたが、全くまとまらなかった。Google側が、「オプトアウト」方式(拒否の意思表明がなければ電子化に問題なしとみなす)を主張しているためだという。さらに7月19日に開かれた再ヒアリングでも進展はなく、次に開催する9月15日に持ち越しとなった。Ching判事は、いらだちを覚えており、9月が最後の機会になりそうだとメディアは伝えている。
ReutersやBloombergによると、Ching判事は「もし、9月半ばまでに“解決あるいは原則的に解決するのに近い状態”にならないのなら、両者に“比較的タイトなスケジュール”を与える」と述べ、Authors Guildの弁護士Michael Boni氏は「われわれはなお合意には達していない。非常に複雑で絡み合った問題であり、夏の間に徹底的に調査する必要がある」とコメントしたという。
このまま三者が修正和解案を出せなければ、和解そのものが白紙となり、訴訟が振り出しに戻る公算が大きいという。Googleにとっては打撃となりそうだ。
Google Booksプロジェクトは、共同創設者で現在CEOを務めるLarry Page氏が2002年に発案。「世界中のすべての本をスキャンする」ことを目標としている。あらゆるものを検索可能にしてゆくGoogleの最重要プロジェクトの一つだ。Googleは三者和解案を受け、既に1500万タイトルの書籍をスキャン済みという。

2011年7月25日月曜日

国際電子出版EXPO前後の電子書籍市場

http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1107/24/news001.html

「電子書籍ってどこを押さえておけばいいの?」――忙しくて電子書籍市場の最新動向をチェックできない方のために最新動向を分かりやすくナビゲートする「eBook Forecast」。今回は、先日開催された「第15回国際電子出版EXPO」前後に起こった出来事を中心にお届けします。

国内の出版業界の複雑な構造なども相まって、ブレイクしているのかどうか分かりにくい国内の電子書籍市場。ICT総研が行った電子書籍コンテンツの国内需要予測調査によると、2015年度の電子書籍コンテンツ市場は1890億円(2010年度比で8.2倍)とまずまずの成長予測となっています。

この数字は、これまで国内の電子書籍市場をけん引してきたケータイコミックの市場も含んでいますが、2013年にはスマートフォン/タブレット/電子書籍専用端末向けの電子書籍市場がそれを逆転するとしており、「コンテンツホルダーである出版社の電子書籍への取り組みの本気度が今後の出版業界の命運を握っていると言える」と何だか当たり前の言葉で結んでいるのが面白いところです。

それでは、ここ1カ月ほどの電子書籍市場の動きと、今後について予測する「eBook Forecast」をお届けします。

続々と立ち上がる電子書籍ストア
まずは、6月上旬から7月上旬までに新たに開設された電子書書籍ストアです。

  Kinoppyは、紀伊國屋書店が運営する電子書籍販売サービス「BookWebPlus」と、紙の本を販売するネット通販サービス「BookWeb」を透過的に利用できるアプリで、iOS版とAndroid版が用意されています。一般に、紙では刊行されているが、電子書籍で提供されていない作品というのは多数存在します。後述するように一部の出版社は新刊書をすべて電子化することを決めており、幾分電子書籍への対応が進んでいますが、現実には電子書籍が提供されていない作品のほうが大多数です。

紀伊國屋書店はこうした状況を鑑み、ユーザーが不便を感じないように、紙と電子書籍を1つのアプリから購入可能にしているのです。同様の取り組みは、丸善やbk1、ジュンク堂などを傘下に持つ大日本印刷陣営の「honto」でも当然視野には入れているようですが、こちらは1つの旗の下で動くには、まだもう少し時間が必要でしょう。

そんなDNPの陣営といえるのが、富士通が立ち上げた電子書籍ストア「BooksV」です。富士通は3月にDNPと連携して電子書籍ビジネスへの参入を発表しており、予定よりやや遅れて6月22日にストアをオープンしました。

BooksVは、DNPの関連会社であるモバイルブック・ジェーピーのほか、同社グループのジー・サーチ、富士通エフ・オー・エムの出版ブランド「FOM出版」からコンテンツの提供を受け、30万点を超える強力なラインアップを武器にしています。30万点という数字は、雑誌の特集などを個別に切り出した雑誌記事・レポートなどを含んでおり、実際にはこうしたコンテンツが全体の9割以上を占めているのですが、「あの雑誌のあの特集だけ読みたい」といったニーズは確実に存在しますし、漫画は現時点で取り扱っていないことなどを考えると、ビジネスマンなどを中心に支持を集めそうです。

紀伊國屋書店や富士通のBooksVと比べると明らかに規模は小さいものの、ユーザーニーズをよく理解しているのが「ブックパブ」です。幾つかの出版社が集まって立ち上げたモール型のこの電子書籍ストアは、コンテンツをDRMフリーで提供しているのが大きな特徴です。

出版社が自らのコンテンツをDRMフリーで提供するのは、長期的にはともかく、少なくとも現時点ではかなりチャレンジングな取り組みです。だからこそ大手の出版社が名を連ねていないのですが、複数のDRMやフォーマットに対応するマルチビューワが一般的になるのか、こうしたDRMフリーコンテンツが一般的になるのかは注目したいところです。
2010年の国内電子書籍市場をけん引した2つの電子書籍ストアは今
こうした新たな電子書籍ストアが立ち上がる中、電子書籍元年と呼ばれた2010年の国内電子書籍市場をけん引した2つの電子書籍ストアは今、それぞれの道を歩みつつあります。

1つはソニーの「Reader Store」。これまで同ストアでは、シャープの電子書籍フォーマット「XMDF」形式の電子書籍を主に扱っていましたが、ファームのアップデートで新たにボイジャーのドットブック(.book)に対応しました。これにより、電子刊行物のフォーマットを.bookに統一している講談社の作品がReader Storeに並ぶことになり、ラインアップを大幅に拡充しています。専用の電子書籍端末「Reader」の最新モデルが8月にもリリースされるのではないかといううわさもあり、勢いは継続しているといえそうです。

一方、少し雲行きが怪しくなっているのが、「TSUYATA GALAPAGOS」です。TSUYATA GALAPAGOSは、シャープとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の合弁会社により運営されている電子書籍ストアですが、CCCは6月30日、TSUYATA GALAPAGOSとは別に独自の電子書籍ストア「TSUTAYA.com eBOOKS」をオープン、専用のAndroidアプリもリリースされました。

TSUTAYA.com eBOOKSでは、TSUTAYAの実店舗との連携を考慮し、TSUTAYA店舗で購入した紙書籍の電子書籍を安価に購入できるサービスを年内に開始する予定ですが、TSUYATA GALAPAGOSと別に新たなストアを立ち上げる必要があったのかは謎です。

TSUTAYA.com eBOOKSでは電子書籍のフォーマットに上述の.bookを採用していることなどを考えれば、(.bookの競合となる)XMDFを手掛けるシャープに配慮したともいえますが、そもそもTSUTAYA GALAPAGOSの出資比率はシャープが49%、CCC51%で、CCCの子会社扱いですし、代表取締役社長も2代続けてCCCから就任していますので、わざわざ別のストアを立ち上げる必要は本来さほどないはずです。それでもあえてTSUTAYA.com eBOOKsを立ち上げたのは、両社の関係がうまくいっていないのではないかと考えるのが自然です。リリース文には、「端末、iPhone、iPad、タブレット端末やPC向けなど多様な端末向けにTSUTAYAが本格的立ちあげる電子書店」とあるのも見方によってはトゲがあります。

そんなシャープは、7月に入ると、DRMフリーのXMDFを取り扱っていた「SpaceTownブックス」を11月で閉鎖すると発表し、多くのファンを悲しませました。

しかし、暗い話ばかりではありません。7月14日には、GALAPAGOSのOSをAndroid 2.3にアップデートすると発表しました。シャープはGALAPAGOSに搭載されているOSをLinuxベースと対外的には発表していましたが、これがAndroidベースだったのは明らかでしたから、Android 2.3へのアップデートを提供するのは一見歓迎できます。

しかし、筆者個人は、進化をうたったGALAPAGOSが過酷な生存競争に敗れつつあるのではと不安視しています。当初はGALAPAGOSからのみ利用可能だったTSUTAYA GALAPAGOSは、まずはシャープのスマートフォンに、6月にはシャープ以外のAndroid搭載スマートフォンからも利用可能となり、専用端末の意味合いは当初より薄れてきていますが、Android 2.3へのアップデートで専用端末を汎用化しようとしても、ハードウェア構成的に使えないアプリも多く、どっちつかずの端末になってしまったように思えてなりません。

5.5型のモバイルタイプは、このサイズにしては珍しい高解像度を備えているため、今後も一定の需要はあるでしょうが、10型のホームタイプは、Acerが最新のスペックでかつAndroid 3.0を搭載し、しかも3万円台の「ICONIA TAB A500」を提供するなど、競争力に欠けるのは明白です。ホームタイプがAndroid 3.xを搭載する可能性は限りなく低いでしょうし、仮にアップグレードされたとしても、スペック的に動作は厳しいでしょう。市場のニーズに合わせたといえば美談ですが、どこで差別化を図るのかといった部分が見えてこないのは危険な兆候です。

一方で、“第3の”GALAPAGOSタブレットがリリース間近であると取り上げられています。記事では7型のタブレットではないかと予想されていますが、恐らくAndroid 3.xを搭載してくるでしょう。7型タブレット市場は「GALAXY Tab SC-01C」や「Dell Streak 7」などをはじめ、最近多くのベンダーから製品がリリースされているホットスポットです。7型タブレットを「どっちつかず」と批判するAppleのスティーブ・ジョブス氏に負けることなく、今年後半は7型タブレットが大きく注目されそうです。

ちなみに、シャープは4月に、XMDFビルダーなどのオーサリング環境を7月に無償公開することを発表していましたが、7月24日時点で、まだリリースされていないことも気がかりです。シャープの動向はしばらく注視しておいてもよいでしょう。
楽天も電子書籍ビジネスに参入、専用端末はまずはパナソニックから

7月の上旬には電子書籍市場の祭典ともいえる「第15回国際電子出版EXPO」が開催され、各社がこの前後に大きな発表をしています。第15回国際電子出版EXPOでは幾つか大きな発表もありましたので、特設ページで確認するとよいでしょう。

そんな中、今注目を集めているのは、電子書籍ビジネスに本格参入する楽天です。
楽天は6月13日に、紀伊國屋書店、ソニー、パナソニックとともに、日本での電子書籍サービスを普及拡大させる取り組みを検討していくことで合意したと発表、国際電子出版EXPOでは、楽天が8月10日に立ち上げる予定の電子書籍ストア「Raboo」の専用端末と位置づけられるパナソニックの「UT-PB1」が披露されていました。ちなみにこの端末も7型の端末です。

楽天が立ち上げるRabooは、楽天経済圏を生かし、ユーザーにとって身近な存在になりそうですが、専用端末のUT-PB1は、Androidベースの電子書籍専用端末という意味では上述のGALAPAGOSが登場した当時と同じような路線なのが懸念されます。ただし、楽天、紀伊國屋書店、ソニー、パナソニックの4社連合では、れぞれが提供、運営している電子書籍端末や電子書籍ストアが相互接続できる環境の構築を進めるとしており、極端な話、ソニーのReaderなどでもRabooのコンテンツが読めるようになるでしょうから、少し洗練されている印象を受けます。

Kindleのような専用端末と、iPadなどの汎用タブレット端末との中間に「電子書籍用のタブレット端末」という市場があるのかどうか。それともそこも汎用タブレットが陣取るのか――ここでその答えを出す気はありませんが、1つの興味深い意見を紹介しておきます。先日eBook USERに掲載された、うめ・小沢高広氏、一色登希彦氏、藤井あや氏という電子書籍の出版経験を持つ現役漫画家による座談会で、電子書籍専用端末について語った部分です。


藤井 若い女の子が、本を読むために4万円出すかといったら出さないですよね。

小沢 しかも本そのものではなく、本棚のためにってことですし。ガラケーで漫画が読める利点というのは、電話の「ついで」に読めるからですよね。

Amazonタブレットの死角でNOOK2が高評価
国内の電子書籍市場では、いまだ外資勢の国内参入もはっきりとしない状況ですが、それぞれのプレイヤーが忙しく動き回っています。

その筆頭はやはりAmazon.com。5月ごろからうわさになっているタブレットが8月、いや10月、と人によってまちまちですが、リリースが迫っているようで、Appleとの競争が激化しそうです。

市場ではAmazonタブレットの話題で持ちきりですが、米非営利調査機関Pew Research Centerのレポートによると、米国ではタブレット端末より電子書籍端末の方が普及しており、電子書籍端末の保有率は過去6か月間で倍増したと報告されています。そうした中、Barnes & Nobleの新型電子書籍専用端末「NOOK2」が米消費者団体の評価で初めて「Kindle」を抜き、IDCが発表した2011年第1四半期(1~3月)における電子書籍端末出荷調査でも、Burnes & NobleがAmazonを追い抜き初の首位となるなど、Burnes & Nobleが勢いを増しています。

そんなAmazonからは、毎日のように電子書籍関連のニュースが発表されていますが、大きな動きになりそうなものが、学生向けにKindle版の教科書を貸し出す「Kindle Textbook Rental」サービスです。最大80%のコストセーブが可能な点なども魅力ですが、若いうちから電子書籍に慣れさせておくというのは、長期的に電子書籍市場にプラスに働きます。こうした取り組みが日本でも今後起こることに期待しましょう。
Google eBookstoreに対応した電子書籍端末も登場

Amazonに負けじと、IT業界のガリバーであるGoogleも大きく動き出しました。同社のGoogle eBookstoreは、数十万冊の有料タイトルだけでなく、著作権切れ作品を中心に300万冊の無料タイトルを取り扱う巨大な電子書籍ストアですが、このGoogle eBookstoreに対応する電子書籍リーダーがiriverから登場しました。それが「iRiver Story HD」で、AmazonのKindleの価格帯に近い約140ドルで販売されています。Wi-Fi接続経由でクラウド上の電子書籍を直接読むことができるようになっています。

正確には新製品というより、iRiverが2009年に発売した「iriver Story」の後継に位置づけられるStory HDが、米国発売に合わせてGoogle eBookstoreに対応したというものですが、AmazonにおけるKindle、AppleにおけるiPad、Barnes & NobleにおけるNOOKに相当する製品です。もっとも、Google eBookstoreはAPIが公開されていますので、今後同じような製品が登場してくる可能性は高いです。初物は避ける、という賢明なあなたのために、Story HDについては近日レビューをお届けする予定です。

この動きとは直接関係はありませんが、Googleは現在、書籍全文検索サービス「Google Book Search」(現Google Books)について、米国著作者協会(AG)や米出版社協会(AAP)から訴訟を起こされており、その和解締結でもめています。オプトイン方式への和解案修正にGoogle側が難色を示しているというもので、裁判が再開されるシナリオが濃厚になってきているようです。エンドユーザーというよりはコンテンツプロバイダー向けのトピックですが、気になる方はチェックしておきましょう。