2011年11月4日金曜日

アマゾンが米国で「電子図書館サービス」書籍の無料貸し出しでキンドルの販売後押し

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/28311

米アマゾン・ドットコムが電子書籍リーダー端末「キンドル(Kindle)」とネット小売りの分野でまた攻勢をかけている。

 同社は11月2日、商品配送優遇プログラム「アマゾン・プライム」の米国加入者を対象に、キンドルを使った電子図書館サービスを開始したと発表した。約5000冊の電子書籍の中から好きなものをキンドルに無料でダウンロードできるというものだ。

一度に1冊、貸出期間に制限なし
 これは「キンドル所有者向け貸出図書館(Kindle Owners' Lending Library)」と呼ぶサービスで、会員制DVDレンタルのような仕組みを採り入れている。
 利用者が一度に借りられる電子書籍は1冊のみだが、貸出期間に制限はなく、読み終わらなければいつまでも借り続けられる。
 新たな書籍を借りる際は、既に借りている書籍が返却(自動消去)される。また1カ月に借り換えられるのは1回のみという条件がある。
 アマゾン・プライムとは、同社が米国で提供している商品配送優遇プログラムだ。注文日の翌々日までに品物が届く「急ぎ便」を無制限で利用でき、年会費は79ドル。
 アマゾンはこのプログラムの会員に対し、追加料金なしで約1万3000本の映画/テレビ番組をストリーミング配信できるという特典も付けており、コンテンツ配信事業と、ネット小売りの相乗効果を狙っている。

新端末発売前に顧客囲い込み
 今度はこれに電子書籍も加え、顧客を取り込むというわけだ。アマゾンのキンドルには専用の読書端末と、スマートフォンなどのモバイル端末やパソコンで利用できるアプリ版があるが、今回のサービスはアプリ版を対象にしていない。
 これに先立ちアマゾンは、キンドル端末の最新モデルを発売しており、11月15日には、同社初のマルチタッチカラーディスプレイ搭載タブレット端末「キンドル・ファイア(Kindle Fire)」、同月21日にはタッチスクリーン搭載の電子ペーパー端末「Kindle Touch」を出荷する予定だ。
 アマゾンによると新たな図書館サービスでは、ほかのキンドル向け電子書籍と同様、借りた書籍コンテンツにハイライトや注釈を書き込むことができ、しおり機能も利用できる。
 これらの情報はアマゾンのサーバーに保存され、次回同じ書籍を借りたり、アマゾンから購入したりした際に、記入した内容が表示される。
 こうした機能を盛り込むことで、結果として顧客の利便性が高まり、書籍の販売増にもつながることから、顧客、出版社、作者の3者にとってメリットがあるとアマゾンは説明している。

アマゾン、また赤字覚悟の販売戦略
 アマゾンは赤字になっても製品を普及させるためなら徹底的にサービスを強化する企業として知られており、今回のサービスも同様の戦略だ。
 アマゾンと出版社との契約には、固定料金方式と、貸し出される回数に応じて料金を支払う卸売方式の2つがあるが、いずれにしてもこれらはアマゾンの持ち出しということになる。
 ただ、米ウォールストリート・ジャーナルによると、今回のアマゾンのサービスに脅威を感じている出版社も多いようだ。大手出版社は、書籍販売に及ぼす影響や、ほかの小売店との関係悪化につながる恐れを懸念していると同紙は伝えている。

2011年11月2日水曜日

AAP発表、米国内の2011年8月の電子書籍売上高は前年同期比2倍超の約68億円

http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=2845

米mediabistro.comによると、米国の出版社業界団体の1つであるAssociation of American Publishers(本部:米国ニューヨーク州)が米国の2011年8月の市場統計情報の速報値を発表した模様。

 電子書籍部門の販売高は前年同月比で116.5%増の8,800万ドル(68億円)。次いでオーディオブックが30.2%増の850万ドル(6億6000万円)で、デジタル製品の増加が顕著だった。それ以外の紙書籍は全カテゴリーが前年同期比で減少となった。

 AAPは米国の300社以上の大手・中小・学術出版社などが加盟する業界団体。なお、本統計はすべて出版社純売上(卸売)ベースであるため、小売ベースでの金額はさらにこの2倍強程度になっているものと推測される。

電子書籍革命で攻めに転じた米出版社、守る日本の出版社

http://www.newsweekjapan.jp/column/takiguchi/2011/11/post-406.php


いったい、電子書籍にはどんな価格が適正なのだろうか?

実は今のところ、その正解を知っている人間は誰もいない。電子書籍では日本の数年先を行き、無数に出版されているアメリカでも、価格はまちまちだ。同じ書籍でも、注意深く見ていると時々値段が変わっていることもある。

ただ、ハードカバーの単行本と値段がほとんど変わらない日本の電子書籍に比べると、アメリカでは格段に安い。アメリカではハードカバーの単行本が日本よりずっと高く、平均して25ドルほどの価格がついているが、電子書籍ならば10ドル前後が普通。だいたい半分、あるいはそれ以下の価格で買えるのだ。

この価格破壊を先導したのはアマゾンだった。新しい市場を開拓するために出血サービルで激安値段をつけるのは同社の常套手段。電子書籍でも同様で、ほとんど持ち出しの9.99ドル均一で売り出し、電子書籍の普及に大いに貢献した。

ただ、電子書籍に安値を付けたのはアマゾンだけではない。出版社も、安すぎるアマゾンの価格設定には抵抗していたものの、ハードカバーよりも安く設定すること自体には前向きだった。安い電子書籍に読者が流れていってプリント版書籍が売れなくなれば、プリント版書籍にかかっている印刷や流通のコストが賄えなくなる。そんなリスクも大きかったが、とりあえずはハードカバーよりも安い値段でスタートすることは当初から想定していた。

さて、これをハードカバーと同じ値段、あるいは似たような値段を付けられている日本の状況と比べてみよう。この違いの理由は何か。

ひとつは、日本ではそれがまかり通ることである。日本の電子書籍市場はまだ揺籃期で、はっきりしたかたちがない。どのプラットフォームでどのデバイスを用い、どこからコンテンツを買うのかついて、クリアーな選択の全貌が見えないのだ。そうした状況の中では、適正価格の見極めようもなく、したがってどんな価格でもかまわないのだ。

ふたつめは、消費者、つまり読者による圧力がないことが挙げられるだろう。印刷にも流通にも金のかからない電子書籍をプリント版と同じ値段にしてしまったりすると、少なくともアメリカでは出版社が総スカンを喰う。アメリカの消費者は価格に厳しい上、デジタル時代になって以降、企業が技術導入によって価格を押し下げて当たり前と感じるようになっている。そんな努力やイノベーションをアピールしない企業は、魅力半減なのだ。

さらに、これはよく言われることだが、硬直的な日本の産業構造にも言及しないわけにはいかない。アメリカではデジタル技術に合わせて、あらゆる産業が再編成されているのだが、日本の場合は現状の構造をがっちりと維持したまま、ある限られた部分がデジタルによって置き換えられるということになっているようだ。ハードカバーと変わらない電子書籍の価格設定もその現れで、取り次ぎ構造などの複雑な現状を維持するコストなのだろう。これでは電子書籍が大きく離陸できるはずもなく、既存の産業がデジタル技術によって受ける恩恵も限られたものになってしまう。

さらに大げさなことを付け加えると、産業界がどんな世界観を描いているのかの違いもある。日本は電子書籍や、出版界で今「黒船」と呼ばれているアマゾン、アップルなどアメリカのプラットフォームの到来によって、市場の取り合いが激しくなると見ているようだ。書籍市場、読者市場はこれ以上大きくならないという見方だ。だが、アメリカでは、多少プレイヤーの入れ替えはあるだろうが、やり方次第で市場自体が大きく拡大し、そこに参加したみながその益に利するのだという、漠然とした楽観的な世界観がある。

この点における両国の違いはけっこう大きく、アメリカ企業が守りよりも攻めに出ているのはそのためだ。そうすることによって、次の時代の正式プレイヤーになろうとしているのだが、同じような意気込みが日本からは感じられない。

先だって、マーケティングのグルと呼ばれるセス・ゴーディンと話す機会があった。超人気の著者であるゴーディンは既存の出版界を離れ、今や一切の活動をアマゾン上に移してしまった。同社のプラットフォームを利用し、プリント版書籍も電子書籍もアマゾンから発行するというのである。ゴーディンは個人作家だが、彼も「攻め」に出ていると言えるだろう。

ゴーディンは、電子、プリント版に限らず、果たして書籍の適正価格があるのかどうか自体がわからなくなっていると語っていた。同じ著作でも、安い電子書籍で出すものもあれば、手作り風にして、特製のおまけなどをつけて高価な値段で売ることもできる。特定のスポンサー付きで、限定期間の特価バーゲンもありだ。つまり、こうなると「本」という定義自体が伸縮自在なわけで、それもデジタル技術によって可能になったことのひとつだろう。

ここ数年、電子書籍関係の会議に連続して参加しているのだが、電子書籍に対するアメリカの出版社の姿勢はその間に180度変わった。今や躊躇することなく壮大な大実験に乗り出しているという様相である。どう本が再定義されるかも興味深いが、個人読者としては本が安くなったことが何よりも嬉しい。

アマゾン電子書籍契約は妥当か無茶か 大手は反発、中小は興味示す?

http://www.j-cast.com/2011/11/01111860.html?p=1

ネット通販最大手の米アマゾンが各出版社に電子書籍の契約書を送ったと報じられ、その内容が妥当か無茶かどうかを巡って論議になっている。
日経が2011年10月20日付朝刊1面トップでアマゾンが日本で年内にも電子書籍事業に参入とスクープしたのに続き、今度は一部メディアがその「契約書内容」を報じた。

売り上げの55%をアマゾンになど
それは、ライブドアのサイト「BLOGOS」が29日に配信した「『こんなの論外だ!』アマゾンの契約書に激怒する出版社員」だ。
記事によると、アマゾンは、10月上旬に日本の出版社約130社を集めた説明会を都内で開き、出版社には、それから数日後に「KINDLE電子書籍配信契約」が送られてきた。
そこでは、すべての新刊を電子化してアマゾンに提供し、出版社がそうしないときはアマゾンが電子化すること、アマゾンの推奨フォーマットでは、売り上げの55%をアマゾンのものとすること、書籍より価格を低くすること、そして、出版社が著作権を保有すること、などの条項が挙げられていた。アマゾンへの回答期限は、10月31日までになっている。
記事では、説明会に参加したある中堅出版社の怒りの声を紹介した。その書籍編集者は、いずれも出版社側には不利となる内容で、特に、出版社が著作権を保有するのを1か月以内に決めろというのは無理難題だと反発している。欧米流の著作権管理だが、著者から了解を取るなど難しい手続きが必要だからだ。
こうした契約書内容は、本当なのか。
日経が「詰めの交渉」中と報じた小学館や集英社では、それぞれ「交渉は進展しておらず、内容も守秘義務があるのでお答えできません」「(日経で)報道されている事実はありません」とだけコメント。交渉中という講談社でも、「契約状況はまったく明かせません」とした。一方、日経がアマゾンと合意したと報じたPHP研究所(京都市)は、その報道を否定。検討中ではあるものの、まだ合意していないとし、内容については、「守秘義務がありますので、一切話せません」と言っている。

大手は「無茶」多く、中小の一部は理解示す
アマゾン・ジャパンに取材すると、広報部は外出中だったため、契約書内容の事実関係は確認できなかった。
もし内容が本当だとすると、出版社には受け入れられるものなのか。
ある大手出版社の担当者は、アマゾンの契約書について、「あんな無茶な要求は、飲むわけがありません」と明言した。特に、出版社が著作権を保有するという条項については、著作物の複写などを認める著作隣接権を出版社が求めても著者らが拒否しているような状況で、実現させるのは難しいと指摘した。
また、この出版社はアマゾンと交渉中だが、飲めない条項ではそもそも交渉しない。こうしたことから、担当者は、「同一の契約書を配っているとは思えませんね」として、アマゾンが中堅出版社などとの二刀流を使っている可能性を示唆した。
アマゾンと交渉している別の大手出版社では、出版社が著作権を保有という条項の話はないといい、「そんな厳しいことは無理では」と漏らした。売り上げの55%をアマゾンのものとすること、すべての新刊を電子化してアマゾンに提供することなどの提示もなかったという。
一方、中小の出版社からは、アマゾンの条項は必ずしも法外とは言えないとの声も出ている。ある出版社は、契約書は来ていないとしながらもこう話す。
「55%は法外かもしれませんが、出版社に入る利益は、紙と大差ないんですよ。電子書籍なら、取り次ぎへの支払いや印刷などのコストがかからないからです。著作権の保有についても、アップルがiTunesを手がけたときに無理とぼろくそに言われながら成功していますし、ケースバイケースでしょう。大手の営業の力が強くて本をなかなか書店に卸せない中小の出版社にとっては、逆にチャンスかもしれないですね」
ネット上でも、アマゾンの契約書について、賛意を示す書き込みも多い。「半分以上とかボリ過ぎだろ」といった指摘もあるが、「消費者は望んでいます」「動揺してたら作家と直接取引し出すぞ」との声が出ている。

2011年11月1日火曜日

「Sony Tablet」向け電子書籍3万冊

http://www.yomiuri.co.jp/net/news/bcn/20111031-OYT8T00402.htm

 ソニーは、10月28日、Android搭載タブレット端末「Sony Tablet」向けのネットサービスとして、eBookストア「Reader Store(リーダーストア)」、位置情報サービス「PetaMap(ペタマップ)」のサービスを開始した。

 「Reader Store」は、雑誌や絵本などのカラーコンテンツを含む3万冊以上の書籍を揃えたeBook(電子書籍)ストア。EPUB3やXMDF、ドットブック(.book)規格対応の電子書籍を販売する。EPUB3は、EPUB規格の最新バージョンで、縦表示やルビなど、日本語組版に対応。欧米に続き、日本国内でも利用が広がると予測されている。

 EPUB3対応のカラーコンテンツは順次販売を開始し、10月中に雑誌『オズマガジン』『GQ JAPAN』『DIME』『SPA!』『AERA』など、約200冊をラインアップする予定。また、「Reader Store」で購入したXMDF、ドットブック規格のコンテンツは、「Sony Tablet」とソニーの電子書籍リーダー「Reader」のどちらでも読むことができる。

 「PetaMap」は、5.5型のデュアルディスプレイを備えた折りたたみ形状の「Sony Tablet」Pシリーズ専用のオリジナルアプリ「PetaMapガイド&ナビ」として提供。Pシリーズの2画面ならではの快適な操作感で、ソニーが提供する位置情報サービス「PetaMap」の全国100万件の豊富なスポット情報をもとにナビゲートする。

 ソニーは「Sony Tablet」向けに、すでに10月からプレミアム映像配信サービス「Video Unlimited」と初代「プレイステーション」のゲームなどを購入して遊べる「PlayStation Store」を開始しており、タブレット端末上で、さまざまなエンタテインメントコンテンツを楽しむことができる。

 「Sony Tablet」は、現在、2シリーズ計4モデルをラインアップ。9月17日に9.4型ディスプレイを備えたSシリーズのWi-Fiモデル「SGPT111JP/S」「SGPT112JP/S」を発売し、10月28日にSシリーズの3G + Wi-Fiモデル「SGPT113JP/S」と、3GとWi-Fiに対応するPシリーズ「SGPT211JP/S」を発売した。価格はオープンで、ソニーストアでの販売価格は「SGPT113JP/S」「SGPT211JP/S」ともに6万2880円。3G対応機種を販売するNTTドコモでは、2012年4月30日まで「FOMAタブレットスタートキャンペーン」を実施している。