2011年6月10日金曜日

米Apple、iTunes課金を迂回する電子書籍アプリなどに対し規約をちょっとだけ緩和「外部リンク無しならOK」

http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=2460

米MacニュースサイトのMacRumors.comによると、Apple社(本社:米国カリフォルニア州)は今週、iPhone・iPadアプリ開発者規約を改訂した。それにより、とくに電子書籍・電子雑誌関係者の間で問題となっていた外部課金システム利用に関する条項も変更されたとのこと。

 記事によると、今年2月に改訂された規約では、サードパーティ製の課金システムを利用するコンテンツ系アプリ(電子書籍アプリ等)は、Apple社の iTunes課金システムも並行採用することが要求されていた。しかし、今回の改訂ではその文言ニュアンスが大幅に書き変えられた模様で、アプリ上で外部リンクや購入ボタン等を使ってサードパーティ製課金システムへ誘導さえしなければ、コンテンツ再生自体は行なえることが明記されているとのこと。

 わずかな緩和ではあるが、少なくとも“閲覧専用”アプリとしてデザインすれば、電子書籍販売ベンダーはiTunes課金を強制採用する必要はない、ということになる。

2011年6月8日水曜日

Apple、「iCloud」を発表、音楽/アプリ/電子書籍などクラウドで管理

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110607/361116/

米Appleは米国時間2011年6月6日、クラウドコンピューティングを利用して音楽や写真、アプリケーション、文書ファイルなどを保存、管理できる無料のサービス「iCloud」を今秋から始めると発表した。
 「iPhone」「iPad」「iPod touch」「Macintosh(Mac)」やWindowsパソコンのアプリケーションと連動し、ユーザーのコンテンツを自動で同社のデータセンターに保存するというサービスで、すべての機器でデータを最新の状態に保てるとしている。
 iCloudは、これまで同社が提供していたオンラインサービス「MobileMe」や、アプリケーション配信サービス「App Store」、電子書籍配信の「iBookstore」なども組み合わせた包括的なサービスとなり、これらに加え新たに、iOS端末のコンテンツをバックアップする「iCloud Backup」、文書ファイルを保存する「iCloud Storage」、写真を一時的に保管する「Photo Stream」、音楽配信サービスと連動する「iTunes in the Cloud」を用意する。
 このうち、iTunes in the Cloudでは「iTunes Match」と呼ぶ、年間24.99ドルの有料サービスを米国で始める予定。iTunes in the Cloudでは、ユーザーがAppleの音楽配信サービス「iTunes Store」で過去に購入した楽曲ファイルを追加料金なしでiOS端末に再ダウンロードできるようになる。iTunes Matchでは、iTunes Store以外で入手した楽曲について、Appleが配信権利を持つ約1800万曲と照合し、合致したものをAAC形式(256kbps)で提供する。これによりユーザーは、「照合できない残りのごく一部の楽曲だけをアップロードすればよく、音楽ライブラリ全体をアップロードする必要がなくなる」と Appleは説明している。
 このほか、文書ファイルを保存するiCloud Storageでは、同サービスのAPIを使って作成した書類をクラウド上に保存し、それらを自動的に各機器にプッシュ配信する。このサービスでは、5G バイトまでのストレージ容量を無料で提供する。Appleで購入する音楽やアプリケーション、電子書籍と、写真保管サービスで必要となるストレージ容量はこの5Gバイトの制限外となる。また、ストレージ容量の追加購入オプションも用意する予定で、料金については後日明らかにするとしている。
 Appleは同日から、iCloudのベータ版とCloud Storage APIの提供をiOSとMacの開発者プログラムで始めた。このほか、iTunes Match機能を搭載しないiTunes in the Cloudベータ版を米国で始めた。iCloudの正式版は今秋、iOSの新版「iOS 5」のリリースに合わせて提供する予定。

http://www.apple.com/pr/library/2011/06/06icloud.html

2011年6月7日火曜日

電子書籍が紙に負ける5つのポイント

http://wiredvision.jp/news/201106/2011060622.html
米Amazon.com社が最初の『Kindle』を発売し、電子書籍という革命を始めたのは3年半前のことだ。現在同社は、紙の本の売り上げよりも電子書籍の売り上げのほうが大きいという状態にある(日本語版記事)。
日本が江戸時代に、銃を捨てて刀に戻ったような、珍しい「時代逆行」が生じないかぎり、電子書籍は、紙の本を引き継ぐ「21世紀の書籍」になることだろう。
実は筆者は、今まで電子書籍リーダーというものを買ったことがなかった。生まれつき、単一機能の機器というものが嫌いだからだ。しかし、iPadを使い始めて以来というもの、紙の本はまったく購入しなくなってしまった。本は今後、完全に消え失せるということはないだろうが、ニッチなメディアという周縁的な存在になっていくことだろう。
しかしそれでも、電子書籍には根本的な欠陥がいくつかある。電子書籍には、紙の本にはかなわない(少なくとも、簡単にはかなわない)側面が、まだいくつかあるのだ。逆にいえば、以下の5つの問題が解決されさえすれば、電子書籍は制限なく成長していくことだろう。

1)読了へのプレッシャーがない。
今年2月、『The New York Times』のテクノロジー記者(元Wiredで記事を書いていたジェナ・ワーサム)が興奮した様子で、電子書籍をやっと最後まで読み終わることができた、と書いていた。ハイテクに精通した記者が、なぜそこまで時間がかかったのだろうか。本人が素晴らしい説明をしている。読み始めても、電子書籍だと「続きを読む」ことを忘れてしまうのだ。読み通すには、真摯な「新年の決意」が必要だった。
電子書籍は、視界のどこかに存在するということがない。読み始めたものは最後まで読め、と訴えてくる力に欠けるのだ。1,000冊を超える電子書籍を持っていたとしても、視界に入ってこなければ忘れられてしまう。
この問題を解決する方法は、『A Shore Thing』を読み始めてもう17日がたつが、まだ47ページめだ、ということを思い出させてくれる通知がポップアップで登場することだろう。

2)購入した本を1カ所にまとめられない。
物理的な本では、本棚を自分で整理し、その中から本を選ぶというプロセスがある。しかし、タブレットやスマートフォンの場合は、アプリごとに「本棚」ができてしまい、いろいろな所から購入した電子書籍を、まとめて1カ所で見ることができない。まとめるためのアプリが存在しないのだ。(電子リーダーはさらにつらい。専用の店以外からは何も買えないのだから)。
小さな問題だと思うかもしれないが、本屋がユーザーの本棚のサイズや形を決め、本棚にはその本屋で買った本しか並べるな、というルールを強制してきたとしたらどう思うか、考えてみてほしい。
iOSデバイス上で共通ライブラリーのようなものを作るとすれば、ルート情報を使うことが必要になるが、米Apple社は開発者にそれを許していない。また、仮にこの制限がなくなったとしても、各ベンダーの協力を取り付けるという問題がある。各社が競合していること、このような均一化が価格競争につながりかねないことなどを考えると、協力が得られるとは限らない。

3)思考を助ける「余白への書き込み」ができない。
文章をハイライトする機能だけでは十分ではない。注意深い読み手は、著者と議論したり、論点を展開したり、読んですぐに思いついたことを書き留めたりしたいものだ。そして、そのようなメモはオリジナルの近くにある必要がある----別のノートにというのでは話にならない。発明されそうでまだ発明されていない、気の利いたインデックス化システムがあろうと、それは変わらない。
本への書き込みというものは、本を誰かと共有すると、また興味深い「偶然の発見」を生み出していくものだ。こうした書き込みがまったくできないことは電子書籍の弱点だ。
書き込みの体験を再現するには新しい標準が必要だ。そしてそういった標準は、プロプライエタリな電子書籍技術を用いている各社によって共通して採用されなければならない。こうした新しい方向性は、『OpenMargin』[以下の動画]を見てもらうと、どんなものかわかるだろう。

4)位置づけとしては使い捨てなのに、価格がそうなっていない。
ハリウッドがDVDの特典でやっているように、電子書籍がそれ自体の価値をきちんと追加しない限り、レンタルに等しいものに13ドルを出すのは納得がいかないところがある。電子書籍は発行にほとんど費用がかからないのに、出版社が設定している基本となるカバープライスは、紙で出された新作の割引価格よりわずかに安いだけなのだ。
電子書籍は、貸すことも、地元の図書館に寄付することも、転売することもできない。物理的な空間を占めておらず、そのため、データを削除する際にも複雑な感情が生じにくい。このことは、次の項目とも関係してくる。

5)インテリア・デザインにならない。
くだらないと言うかもしれないが、物理的な本棚というものは、自分の人となりをほかの人々に無言で紹介するものではないだろうか。われわれが公共スペースに置く本、置かない本、そしてその並べ方は、世間に自分をどう思ってほしいかを雄弁に語るものだ(虚栄も混じるだろうが)。本棚はわれわれの紋章や名刺のようなもので、会話を始めるきっかけにもなるものだ。電子書籍リーダーの奥深くに隠されてしまえば、本棚の語る言葉は誰にも聞こえなくなってしまう。
ただし、古いメディアが完全に廃れるということは、今までもなかった。インターネット以前のラジオやテレビや映画は、いまでも存在する。だから、本がすぐ廃れるということはあり得ないだろう。電子書籍と物理的な本の両方を使い続ける方法が、両方の世界のいちばんよいところを取り入れる方法なのかもしれない。