2010年11月4日木曜日

電子書籍の(なかなか)明けない夜明け 第4回 番外編:「電子書籍交換フォーマット」の正体を総務省に聞く

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/yoake/20101104_404239.html

「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」の真意とは?

 現在の電子書籍をめぐる情勢は激動をきわめている。様々な人が電子書籍について発言する一方、どれを信じてよいか簡単に判断がつかない。こうした状況では、なるべく中心にいるキーマンの発言に注視する必要がある。
 2010年10月27日、総務省は『平成22年度「新ICT利活用サービス創出支援事業」(電子出版の環境整備)に係る委託先候補の決定』を発表した[*1]。これは「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」(以下、3省懇談会)による報告書[*2]に基づいて公募された、電子書籍に関わる基盤整備事業の委託先を公表したもの。そのうちの1つが、第3回で取り上げた中間(交換)フォーマットを具体化する「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」だ。これについては、前回の「付記」で簡単に触れた[*3]
 では、このプロジェクトにはどのような真意が込められているのか。誰のために、どんな意図で考えられた計画か、総務省で電子書籍を所管する松田昇剛統括補佐(情報流通行政局情報流通振興課)に、直接話を聞く機会を得ることができた。これはその記録である。
 取材は前記発表の翌28日朝、電話で行われた。読みやすさのために文言に多少の手を加え、専門用語を注で説明するようにした。

「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」との関係について

――先に発表された「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」ですが、3省懇談会の報告書では、「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」(以下、統一規格会議)が中間(交換)フォーマットを審議することになっていたと思います。これとの関係はどうなっているのでしょうか。
松田:今回の公募にあたって、こちらから出した「課題」では、〈国内ファイルフォーマット(中間(交換)フォーマット)の共通化に向けた環境整備(報告書で掲げられた「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」の設置・運営を含む。)〉としています。つまり委託は統一規格会議の「運営を含む」のです。
――なるほど。
松田:今回は日本電子書籍出版社協会(以下、電書協)が受託しましたから、電書協が適切なメンバーを集めて、統一規格会議を開催することになります。我々総務省、文科省、経産省も、オブザーバーという形で参加し、メンバーについても相談いただく形になるでしょう。
――ぼくはてっきり官庁が所管する審議会の形でやるのだと思っていました。だから動きがないことを不思議に思っていたのですが、既に会議の運営を含めて公募していたんですね。
松田:ええ、例えば3省懇談会の報告書では権利処理の集中化の問題ですとか、出版社に何らかの権利を付与するかどうかの問題とか、あるいは電子書籍と図書館の位置付けをどう考えるのかとかいった問題も盛り込まれています。これらは文部科学省の役割となっていますが、やはりこういったテーマでは、行政が主催をしなければならないものだと思うんです。しかしフォーマットの話は基本的に技術の問題ですから、まずは民間の中で標準を決めていただき、我々はその後押しをするのが筋だと思います。

統一規格会議で取り上げられるテーマについて

――分かりました。統一規格会議の関連で少し質問します。報告書の中では、統一規格会議の仕事として中間(交換)フォーマットの検討以外に2つ挙げられていたと思います。1つはいわゆる外字問題[*4]。もう1つは全文テキスト検索の問題です[*5]。統一規格会議では、この2つも含めて審議されるのでしょうか。
松田:報告書で扱われている分野はかなり広いので、3省の間で役割分担を決めております[*6]。外字の関係については「外字・異体字が容易に利用できる環境の整備」ということで、経済産業省の方で実施いただくということになっています。これまでも経産省は、Unicodeの関係も含めコンピューターが利用するフォントをどうするかということに取り組んできました。この10月26日に補正予算案が閣議決定されまして、経産省が外字・異体字の利用環境整備に係る実証実験も含めて2億円の予算要求を行っていたと思います[*7]。補正予算案が国会で了承されれば、今年度内に執行されることになるのではないでしょうか。
――ということは、外字・異体字の関係は統一規格会議と切り離して考えるべきなのでしょうか。
松田:いえ、予算的には切り離すんですが、報告書では当然連携しろというふうになっておりますので、統一規格会議では外字関係のアウトプットも含めて反映していただくことになると思います。
――はい、分かりました。
松田:それから、全文テキスト検索の問題ですが、統一規格会議で審議される中間(交換)フォーマットを、全文テキスト検索を実現するサービスの過程で活用することも考えられます。一方で国立国会図書館において、39の出版社、印刷会社等と共同して、10月から実証実験が始められています。今年度内に、検証用のプロトタイプシステムを構築し、版下データ、電子書籍データ等を基にした全文テキスト検索に関する技術的課題の検証をあわせて行って、過去から現在までの資料の統合的な全文テキストデータ検索の実証実験が行われる予定です。総務省の取り組みと大きく関係するため、密接に連携を行うことにしています。

オープンでフリーな中間(交換)フォーマット変換ツールを開発

松田:いずれにせよ、まずはこの中間(交換)フォーマットを決めてからだと思っています。既存の紙だとか、既存の電子書籍だとか、出版社の保有している様々なコンテンツがありますので、それを電子書籍の形に転換する道を開くのが最優先課題でしょう。
――なるほど。
松田:それを実現するために、既成の紙や電子書籍のデータから中間(交換)フォーマットに変換するツールの開発を行います。それだけではなくて、さらにXMDFやドットブック、あるいはEPUBといった、様々なフォーマットに変換するツールも必要です。さらにそれらの検証を行います。
――ずいぶん大がかりな話なのですね。
松田:中間(交換)フォーマットの目的というのは、要は出版社が電子書籍のフォーマットをこの形式で保管していれば、資産として今後も活用できる、そういうものを作ろうというものなんです。資産として意味がある形にするためには、中間(交換)フォーマットが様々な端末、プラットフォームで利用される閲覧フォーマットに容易に変換可能であることが重要です。
――分かりました。ツールについて一点お聞きしたいのですが、それはオープン、フリーで公開されるのですか?
松田:ええ、ホームページにもあると思いますが、電書協もオープンかつフリーだということを強調されておりますので、その辺は我々の方でも後押ししていきたいと思います。

誰のための中間(交換)フォーマットなのか?

――よく中間(交換)フォーマットのことを、閲覧フォーマットと誤解する人が多かったのは確かで、今回公開された資料(図1)によって、ずいぶんそれが解消されるように思います。
松田:それはありますね。
図1 電書協による「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」の説明
――それで、この資料で驚いたのは、入力の側(左側)に「既存電子書籍」があるのは当然として、「新規作成」「紙書籍」「印刷データ」まで含んでいることでした。
松田:今、印刷用のデータというのは、印刷会社などに保有されていることが多いわけですが、けっこう様々な形で保存されております。やはり印刷用のデータは基本的には電子書籍として販売することを前提としていないものですから、そういう意味ではデータをInDesignで作っていても、バージョンが違っていたりとか、構造化がなされていない、あるいはそもそもデジタルでは保存されていない、つまり紙のものも多いということで。そういうものも簡単に電子書籍として流通できるようになれば、中小の印刷会社、出版社にとってもコンテンツを提供しやすくなるのではないでしょうか。
――なるほど。
松田:さらに言うと、実現にあたっては中小の印刷会社・出版社さんの負担も考えるべきです。その中の1つの要素として、中間(交換)フォーマットが様々な種類のものを変換できて、かつオープン、フリー、さらに印刷会社も含め普及を図る、そういうことであれば、電子書籍ビジネスは中小印刷会社・出版社にとっても1つの選択肢となり得るでしょう。電子出版市場に多様なコンテンツが提供され、ユーザーが多様なコンテンツから端末の種類を問わずに、求める電子書籍を利用できるようにすることが重要です。
――そうですね。

個別の予算額について

――少し話は飛びますが、予算についてお聞きします。個別の額が公表されていないのですが、例えば今お答えいただいていた電子書籍交換フォーマット標準プロジェクト、これはおいくらでしょうか?
松田:契約額については、各社に対して示した契約上限額をもとに、これから詰めていきますので、必ずしもこの額になるということではないので、その旨はご了解いただきたいのですが、「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」の契約上限額は約1億5000万円です。
――それから、イーストさんに決まったEPUB日本語対応のプロジェクトは?
松田:「EPUB日本語拡張仕様策定」の契約上限額は約9000万円です。
――分かりました。

中間(交換)フォーマットはEPUBにも対応

――最後の質問です。たぶん世の中で一番懸念されていることは「ガラパゴス化」、つまり国際標準の大きな流れ、特にウェブ標準の流れと違う規格を作ってしまうことへの懸念だと思います。そういう意味から中間(交換)フォーマットのことを考えますと、ドットブックやXMDFは約10年前の規格です。例えば文字コードひとつとってもシフトJISを前提に考えられています。あるいはXMDFの規格書をみますと、H1タグ、ヘッドラインの親子関係を記述するタグが存在しなかったりします[*8]。これでは通常の意味での文書の構造化ができません。
松田:なるほど。
――ただしぼくはこれが悪いとは思いません。XMDFは少ないCPUのリソースを文書の構造化より画面効果に振り分けた、割り切った仕様だと思います。そしてそれは携帯電話が普及した日本では、非常に功を奏した。ただし他方で、先ほど言いました世界のウェブ標準の流れを考えると、やはり昔の規格であることのデメリットは否めない。例えば中間フォーマットという技術を考えると、その機能の上限は取り扱うフォーマットに制約されます。
松田:そうですね。
――つまり、もしもドットブックとXMDFしか扱えない中間フォーマットを作った場合、その機能はきわめて限定的なものになってしまい、さきほどの「ガラパゴス化」の懸念が的中してしまうことになります。ただし、現代のウェブ標準に基づくEPUBも扱えるなら懸念はなくなります。つまり中間フォーマットでは対象にするフォーマット次第で、能力がかなり左右される訳です。
松田:そこはホームページで出している絵にもあるかと思いますけども、出力側はEPUBも当然あります。
――そうなんですか。見落としていました。
松田:ただEPUBからの入力は、ちょっと分からないですね。EPUBの日本語文献というのは、なかなかないものですから。しかし少なくとも出力側にはあるというふうに聞いております。

EPUBよりドットブックとXMDFを重視する理由

松田:日本の出版社が使うという意味では、現状のEPUBはまだまだと言わざるを得ないんですね。今回のイースト、JEPA(日本電子出版協会)のEPUBの縦組み対応プロジェクトを採択したのも、まさにそのためです。世界的に見ればEPUBリーダーはたぶん普及すると思いますので、縦組みで日本の出版が世界に発信されるということは、とても重要だと思います。
――はい。
松田:電子書籍とウェブの融合を考えると、当然EPUBだけじゃなく、本当はHTML5とCSS3も念頭においてやらないといけない。これについても「次世代ブラウザの縦書きレイアウトの規格化」を目指して取り組みを進めていこうとしております[*9]
――そうだったんですか。
松田:話を戻しまして、おっしゃるとおりXMDFやドットブックは10年前のものかもしれません。しかし現実的な問題として、やはり出版社側の理解を得ないと、なかなか電子書籍にするコンテンツが出てこないということがあります。そういう意味では、これまで実績のあるドットブックだとか XMDFというものは、出版社側の理解を得やすい。
――それは大事ですね。
松田:現実にコンテンツを拡大させないと、電子書籍元年だとか言われても、なかなか現状は打破されないと思います。ですから、まずは出していただくのが重要だと思いますし、そのために出版社が何を望んでいるのかをお聞きしながら、行政として環境整備を進めていきたいと思っています。電子書籍の中間(交換)フォーマットの標準化は、3省懇談会を通じて出版社が強く支持したものです。ドットブックとXMDFを統合・発展する形でまとめておけば、そこからEPUBも含めて様々なフォーマットへの変換も可能になります。こうして出版社側が提供する統一中間フォーマットによって制作環境を整え、一方で、配信プラットフォームやメーカーには多様な閲覧フォーマットで自由に競争していただくと、そういうふうに考えております。
――本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。

注釈

[*1]……『平成22年度「新ICT利活用サービス創出支援事業」(電子出版の環境整備)に係る委託先候補の決定』2010年10月27日(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_01000005.html
[*2]……『デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告書』2010年6月28日(http://www.soumu.go.jp/main_content/000075191.pdf
[*3]……「電子書籍の(なかなか)明けない夜明け」第3回、2010年10月29日(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/yoake/20101029_403226.html
[*4]……報告書では〈出版物のつくり手の意図を正確に表現できるようにする〉ことを目標とし、そのためのアクションプランとして〈今後、外字の収集方法、整理方法、文字図形共有基盤の運営方法、利用端末での外字の実装方法などについて、[略]「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」を活用しつつ、関係者における議論等を積み重ね、必要に応じて国として必要な支援の在り方について、検討することが望ましい。〉(P.48)と提言している。
[*5]……全文検索とは〈文書や出版物等の全てのテキストデータ(本文、タイトル、目次、作者名など)を対象に任意のキーワードで検索すること〉(P.35、脚注28)である。具体的にはGoogleブックサーチのような検索サービスを想定し、これらと連携をとるため、電子書籍については直接データを検索業者に渡すこととし、その際の受け渡し用データフォーマットとして〈(中間(交換)フォーマットの利用等)の検討も必要である。〉(P.36)とされている。この問題については、以下のブログエントリーも参照。『日本語の本の全文検索→一部表示サーバーをインターネット上につくる(仮称=ジャパニーズ・ブックダム)』2010年2月22日、沢辺均(http://www.pot.co.jp/diary/20100222_222832493916834.html)、「沢辺さん、国立国会図書館全文テキスト化実証実験定例会で怒る」2010年10月29日(http://togetter.com/li/63874
[*6]……3省の役割分担については、「総務省政務三役会議資料」2010年7月28日(http://www.soumu.go.jp/main_content/000075996.pdf)のうち、「「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」の報告に係る具体的施策の各省分担について」(P.2~P.3)を参照。
[*7]……『「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」経済産業省関連施策・補正予算の概要(資料集)』P.10(http://www.meti.go.jp/topic/downloadfiles/101008strategy04_1027.pdf
[*8]……“IEC 62448 Ed. 2.0, Multimedia systems and equipment - Multimedia E-publishing and E-books - Generic format for E-publishing” (International Electrotechnical Commission, Geneva: 2009.)
[*9]……詳細は「【資料1】国際標準化戦略に関する検討チーム取りまとめ(案)」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000083988.pdf)P.4~P.5 を参照。従来の日本の標準化政策は、ISO、IEC、ITU等の伝統的な政府系国際標準化機関が制定する公的標準(デジュール標準)を重視するあまり、 W3CやIETFなど、非政府系標準化機関の標準(フォーラム標準)を軽視する傾向があった。HTML5やCSS3はいずれもW3Cが管轄するフォーラム標準であり、従来の政策を見直さないとこれらへの対応を誤ってしまう可能性が指摘されていた。こうした背景の元「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース/国際競争力強化検討部会」が、2010年10月5日に開かれた第5回会合で打ち出したのが、この「取りまとめ(案)」だ。

2010年10月30日土曜日

電子書籍の(なかなか)明けない夜明け 第3回 ナゾの「中間(交換)フォーマット」

3つの省庁が連携して電子書籍をめぐる課題を解決

 2010年3月10日、総務省と文部科学省、経済産業省が電子出版をめぐる多くの課題を検討するために、ある懇談会を発足させた。その長い名を「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」という[*1](以下、3省懇談会)。
 この懇談会が3カ月の審議を経てまとめた『デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告』[*2](以下、報告書)は、著作権の集中管理や出版社への著作隣接権の付与、図書館への電子書籍の納本、あるいは日本の出版物をどうやって海外に発信するのかといった幅広い検討を行っている。
 中でも特に注目を集めたのが、前回の終わりに少し触れた「中間(交換)フォーマット」の統一規格化だった。これが何をするものか、なぜ必要なのか、報告書は以下のように説明している。

(1)多様なファイルフォーマットの存在と電子出版のワークフロー
[略]我が国において、電子出版を様々なプラットフォームや様々な端末に向けて提供することに必ずしも成功してこなかった一つの要因として、多様なファイル形式(ファイルフォーマット)に対応することによる電子出版制作の非効率性[略]が指摘されている。
 この結果、出版物のつくり手は、新しい端末や新しいプラットフォームが登場するたびにそれぞれに最適化した電子出版に作り直す必要があり、一つの作品に対していくつものファイルを作らなくてはならない状況[略]にある。
 出版物のつくり手からは[略]様々なプラットフォーム、端末が採用する多様な閲覧ファイルフォーマットに変換対応が容易に可能となる、中間(交換)フォーマットの確立が求められている[略]。
 日本語表記に係る中間(交換)フォーマットの標準が確立できるのであれば、出版物のつくり手にとってコストの削減や、電子出版をリリースするまでの期間の短縮、様々な電子出版端末・プラットフォームでの提供・利用等、大きな効果が期待できる。


(2) 国内ファイルフォーマット(中間(交換)フォーマット)の共通化
[略]この点、本懇談会において、日本語表現に実績のあるファイルフォーマットである「XMDF」(シャープ)と「ドットブック」(ボイジャー)との協調により、出版物のつくり手からの要望にも対応するべく、我が国における中間(交換)フォーマットの統一規格策定に向けた大きな一歩が踏み出された。これについて、出版社や印刷会社から賛同・支援する趣旨の意見が表明されている。(報告書、P.27~P.28)

XMLと中間フォーマットの関係

 この報告書の記述そのものは現実的で、おおむね納得のできる内容だ。補足すれば、「中間フォーマット」とは XML(eXtensible Markup Language)などでよく使われる技術用語。XMLが登場する以前、文書を別のフォーマットに変換しようとする際は、いちいち専用のソフトウェア(コンバーター)を開発しなければならなかった。しかしゼロからプログラムを書かなければならないし、少し複雑な変換をしようとすると工数がかかってしまい効率が悪い。XMLの普及はこれを簡単にした。
 XMLは文書を構造化するための言語だ。文書の中に「タグ」と呼ばれる印を付けることで、その文書を構成する要素が一目で分かるようになる。同時にタグは要素間の親子関係も記述できるので、その文書全体の構造(成り立ち)も明確化される。こうした文書の構造化がもたらすメリットは数多くあるが、フォーマットの変換が簡単にできるようになることもその1つだ。
 例えばデータベース管理ソフト(DBMS)は操作が覚えにくく万人向けとは言いづらい。そこでデータフォーマットをXMLにすれば、同じXMLの仲間であるXHTML(HTML)へ容易に変換できる。これによりDBMSに収納したデータはそのままで、ユーザーが閲覧や入出力を行う際には慣れ親しんだウェブブラウザーを使うことができるようになる。
 しかしXMLによるフォーマット変換が本当に力量を発揮するのは、この例のような一対一よりも、むしろ一対多の変換だろう。中間フォーマットはそこでのキーワードとなるものだ。例えば携帯サイトのコンテンツを作る場合を考えよう。
 よく知られているように、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3キャリアの携帯サイトはタグやその機能、あるいはCSSの構文が微妙に異なっている。また、同じキャリアの中でも端末の世代ごとに仕様が少しずつ変わっている。だからといってキャリアごと、世代ごとに別々のデータを作るとなると、経済的にも時間的にもコストが合わなくなってしまう。何よりそんな作業は不毛だ。そこで3キャリア共通のタグや構文はそのままに、違うものについて新たに中間的な表現を定義することにする。その結果できるものが中間フォーマットだ。
 この中間フォーマットでデータを作成すれば、1つのデータから3キャリアのいずれにも書き出せるようになる。つまり一対多の変換だ(図1)。各種のウェブサイトを制作するコンテンツ管理システム(CMS)でも、XMLの機能を前面に押し出しているものは、この中間フォーマットを使ったソリューションと考えられる。
図1 XMLによる中間フォーマットを使うと、携帯キャリアの微妙な違いを抽象化できる
 このように中間フォーマットとは、何も電子書籍にだけ使われるものではない。ここで報告書に戻ると、ここで示された〈様々なプラットフォーム、端末が採用する多様な閲覧ファイルフォーマットに変換対応が容易に可能となる、中間(交換)フォーマットの確立〉という解決法は、前述した携帯コンテンツ業者の悩みやその解決法と構図が共通していることに気付くだろう。

なぜか閲覧フォーマットと誤解する人が続出

 このように「中間(交換)フォーマット」の統一規格化は、一見すると良いことずくめのように見える。だから発表されると絶賛者が続出……とはいかなかった。むしろ報告書が出た当時、多くの人はこれを否定的に捉えたように思う。じつのところ、そのほとんどはこれを閲覧フォーマットと混同した誤解だった。しかしそのような誤解が生じたのにはそれなりの理由があり、それこそが報告書の大きな問題点であるように思える。
 おそらく最も早い誤解の例は、朝日新聞の「日本語の電子書籍 規格統一出版促す」と題する6月9日朝刊にある記事ではないか。その最後の段落に、以下のような記述があった。

 電子書籍が読める端末は米アップルの「iPad(アイパッド)」など、米国発の端末が先行している。
 ただ、米国の規格では日本語特有の振り仮名や縦書きが出来ない問題があった。新設の会議は、マンガを始めとする国内コンテンツの海外展開を図るため、日本語の電子書籍に最適な閲覧フォーマットの国際標準化も目指す[*3]

 これによると日本政府として国際標準化を目指す電子書籍のフォーマットは、閲覧フォーマットということになっている。しかし後で引用するように報告書にはそのような記述はない。つまり事実と違う。もう少し詳しい記事の例として朝日新聞と同じ日に公開された、以下のブログのエントリーを見てみよう。
・「「日の丸電書フォーマット」とEPUB」2010年6月9日、EBook2.0 Forum、鎌田博樹(http://www.ebook2forum.com/2010/06/j-format-vs-epub/
 この記事が強く非難するのは、「日の丸電書フォーマット」(=中間(交換)フォーマット)がEPUBに背を向けている点だ。 EPUBとはアメリカに本拠を置く電子書籍の標準化団体、IDPF(International Digital Publishing Forum)[*4]が制定する電子書籍の規格のこと。中間(交換)フォーマットが基づくというドットブックと違い、内容が完全に公開されている。この規格の性格を大きく際立てているのは、ウェブ標準であるXHTML/CSSに基づいていることだ。つまり、これらとの親和性がきめわて強い。こうした点を踏まえて鎌田氏は以下のように書く。
EPUBと争うことは有害無益だ。それは進化を続けるWeb(XHTML+CSS)に背を向けることであり、日本語E- Bookの開発と運用に無用のコスト負担を生じさせる。日本の消費者は負担したくないだろうし、海外企業も同様だ。様々な欠点を持ちながらも、EPUBの巨大な利点は、Web技術との共有性であり、それが出版社の自立性を高め、様々なサービスとの自由な連携を可能にする。
 引用からも分かるように、この記事の特徴は国際的な規格、とくにウェブ標準との関係の中で中間(交換)フォーマットを見ようとしているところにある。この記事が出たのは報告書が発表される数週間も前のことであり、こうした早いタイミングから広い視野に立った分析ができるところに筆者の力量を見ることができる。
 ただし、前述したような中間フォーマットの目的と機能からすれば、「EPUBと争う」ことなど本来あるはずがない。すでに上で引用したように、報告書ではこれが何を意図したものなのか、読み間違いようがないほど明確に説明してある。つまり、鎌田氏の批判には根本的な矛盾があるように思える。
 XMLでの変換技術など先刻承知と思われる人が、これを説明した報告書の記述などまるで存在しないかのように誤解し、批判した。彼だけではない。同じような誤解をした人はまだたくさんいる[*5]。興味深いことに、そうした人達にはある共通点があった。彼等は鎌田氏と同様、EPUBがウェブ標準と強い親和性があることを根拠に、日本の電子書籍業界が EPUBと食い違った方向に進むことを心配しているのである。いわば「EPUB派」、というより「ウェブ派」といえるのだが、報告書にはそうした立場の人を強く反応させる何かがあったことになる。では、それはどんな記述か?

国際規格にするのは、閲覧フォーマットでも中間(交換)フォーマットでもなく?

 おそらくそうしたウェブ派が反応したのは、報告書にある「(3)ファイルフォーマットの国際標準化」という見出しをもつ本文のうち、赤字で示した部分であるはずだ。

(3)ファイルフォーマットの国際標準化
 電子出版は工業製品であり、世界への展開・普及のためには、国際標準化が求められる。
 WTOのTBT協定(Agreement on Technical Barriers to Trade)が1995年に発効して以来、各国は国内強制規格等を作成する際、ISO、IEC等の国際規格(公的標準)が存在する場合には、原則として当該国際規格(公的標準)を基礎とすることが義務づけられている。
 また、WTOのGP協定(Government Procurement)により、政府調達品の技術仕様は、国際規格(公的標準)が存在するときは、当該国際規格(公的標準)によることが義務づけられている。
 このため、中国を始めとする各国の電子出版に係る大規模な政府調達に対応した輸出、他国による日本の電子出版規格の排除の防止、今後の我が国の政府調達協定対象機関による電子出版の公共調達を念頭に、我が国の電子出版規格に即した日本語表現が可能なファイルフォーマットを国際規格(公的標準)としていくことが必要である
 こうした観点から、我が国の関係者が強く働きかけを行い、電子出版の国際標準組織である IEC(International Electrotechnical Commission; 国際電気標準会議)Technical Committee 100 Technical Area 10(Multimedia e-publishing and e-book)において、我が国のXMDF等をベースとした中間記述フォーマットIEC62448 の国際標準化を実現したところである。
 今後、2. 1 (2)の日本語基本表現の中間(交換)フォーマットの統一規格の反映や、上述のEPUB等海外のデファクト標準であるファイルフォーマットとの変換に係る技術要件も検討の上、国際規格IEC62448の改定に向けた取組が重要であり、上述の「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」を活用しつつ、国際標準化活動を進め、こうした民間の取組について国が側面支援を行うことが適当である。(報告書、P.30~P.31)

 この部分は次回も取り上げるので、ひとまず前後は読み飛ばし赤字部分だけ読んでもけっこうだ。ウェブ派の人々の懸念は、おそらく以下のようなものではないか。
 もしもこの報告書どおりに、国の支援を受けた独自の電子書籍フォーマットが国際規格になれば、日本は世界のウェブ標準の流れから取り残されてしまう。これでは、またガラパゴスだ!
 彼等がこうした連想をしたことは、ウェブ派が書いた原稿の多くに「ガラパゴス」の語が登場することでも分かる。ここで言うガラパゴスとは、この数年日本のIT業界で「反面教師」の意味で(うんざりするほど)広く流通している言葉だ。大変な努力の末に開発した日本の高度技術が、結果として国際標準から懸け離れ、まるで進化の袋小路に陥ったように進退きわまることを指す。ただし、じつのところ制作途中で使われるに過ぎない中間フォーマットがEPUBと競合し得ないことは、ここまで書いてきたとおり。

植村資料に見る中間(交換)フォーマットの実像

 もっとも、報告書の側にも誤解されても仕方ない点があった。もう一度、報告書の赤字引用部分をよく読み直してほしいのだが、この部分では国際標準にするのが閲覧フォーマットとは書いてないのは当然として、あれほど熱心に推進していたはずの中間(交換)フォーマットとも書いていない。国際規格にする主体は、あくまで〈我が国の電子出版規格に即した日本語表現が可能なファイルフォーマット〉であり、それ以上でもそれ以下でもない。逆に言えば閲覧でも中間でも、極端な話EPUBでさえも〈我が国の電子出版規格に即した日本語表現が可能〉であれば何でもOKという論理になる。まさに玉虫色の官僚文学であり、これでは読む人が誤解しても仕方はない。
 では、実際のところ国際規格に提案されるのは閲覧フォーマットなのか、それとも中間(交換)フォーマットなのか。これについては「電子書籍中間(交換)フォーマット統一案とIEC62448改訂」という公開資料を見ると一目瞭然だ(図2)。これは3省懇談会において、フォーマットをはじめ技術的な分野の審議を行った下部組織、「技術に関するワーキングチーム」の第6回で配布された資料。作成者は植村八潮構成員(日本書籍協会)。
図2 中間(交換)フォーマット統一規格に対する提案(技術に関するワーキングチーム資料6-1、植村八潮、P.5)[*6]
 植村資料を見ると中間(交換)フォーマットの位置付けが非常にクリアになる。これによれば、その目的は〈配信フォーマットではなく、コンテンツを交換する為のフォーマット〉だ。これを〈中間(交換)フォーマット統一規格〉として国際規格化するというのが植村構成員の提案した概要である。
 具体的な内容としては、構造とスタイルの記述は分離し、そのうち構造記述部分を〈日本語ミニマムセット〉とそれ以外の〈拡張セット〉の2つに分けるという点が目を引く(以上、植村資料p.5より)。さらに別のページには、もっと踏み込んだ計画が語られている(図3)。
図3 中間(交換)フォーマット統一規格のスコープ(技術に関するワーキングチーム資料6-1、植村八潮、P.6)
 スコープとは規格の適用範囲のことだが、これによると、統一規格は多様なジャンルの出版物の「日本語の基本表現部分」、つまり最大公約数を規定するものだという(図3中央の赤線で囲まれた円内)。これによって構成の単純な小説等はカバーできるだろうが、複雑な雑誌や芸術書等については新たにジャンルごとの拡張中間フォーマットを作ることを想定する(図3で赤丸の外周部分を指す)。さらには独自のハウスルールに基づく各社版拡張中間フォーマットを規定することも可能という(図3で最外縁部の花びら状部分)。このように3段構えのなかなか気宇壮大な計画なのだ。そして最後のページには日程が示されている。
図4 スケジュール案(技術に関するワーキングチーム資料6-1、植村八潮、P.8)
 これによると、IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)に対する国際提案と、JIS(Japanese Industrial Standard:日本工業規格)に対する国内提案の二本立てで考えられている。前者は既成の電子書籍の規格、IEC 62448の改訂案として中間(交換)フォーマットを今年12月に委員会提出、来年第4四半期に最終投票案提出、そして再来年2012年の第3四半期に制定されることを目指すという。なお、このIEC 62448は現行版で中間(交換)フォーマットの核の1つとなるシャープのXMDFを附属書Bとして収録している。ただし、改訂とは附属書Bの改訂なのか、それとも新たに附属書Cを追加しようというものなのか、今のところまだ分からない。
 JISの方は、まず現行のIEC 62448を来年2011年第1四半期にJIS化完了、国際の方でIEC 62448の改訂作業が終了するのを待って、そのJIS化に着手するのだという。この計画通りに進むならば、かなり早く標準化が終了できる印象だ。
 技術に関するワーキングチームは全部で7回開催されたが、その最終回の議事要旨だけが公開されていない[*7]。したがって現在のところワーキングチームとして植村資料にどういう結論を下したのかは不明とするしかない。しかし、報告書の内容が植村資料に即した内容であることから、植村氏の提案がほぼそのまま了承されたものと考えられる。もっとも、報告書が設立を表明した「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」は、10月下旬現在開催されていない。何か不測の事態が生じたのだろうか(この部分、付記参照)。

新たに浮かび上がる、2つの疑問

 さて、このようにして中間(交換)フォーマットに対する実像はかなり明確になった。するとより新しい本質的な疑問が湧いてくる。それは以下のようなものだ。

  • 日本語のローカルなフォーマットを変換するための規格が、果たして国際規格として適格と言えるのか?
  • 果たしてドットブックとXMDFを基礎にして、〈日本語をめぐる基本的なフォーマットの根幹〉(報告書、P.28)になり得るのか?

 これについては、次回考察を進めることにしよう。

付記

 以上の原稿は2010年10月25日に脱稿し編集部に送られた。ところがその2日後、10月27日になって事態が大きく動いた。総務省が発表した「平成22年度「新ICT利活用サービス創出支援事業」(電子出版の環境整備)に係る委託先候補の決定」[*8]である。
 かねて同省は、報告書が示していた課題を解決するプロジェクトの提案を公募していた。これは応募されたものに対して外部有識者による評価を実施、その結果を参考に委託先候補として決定したもの。お恥ずかしい話だがこの動きはノーマークであり、迂闊と言わねばならない。
 「別添1 平成22年度「新ICT利活用サービス創出支援事業」に係る委託先候補」[*9]という文書を見ると、7つの課題に対して10のプロジェクトが決定されている。その筆頭に〈国内ファイルフォーマット(中間(交換)フォーマット)の共通化に向けた環境整備(報告書で掲げられた「電子出版日本語フォーマット統一規格会議(仮称)」の設置・運営を含む。)〉という課題が示されており、その解決法として「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」が提案されている。提案者の代表は日本電子書籍出版社協会(電書協)であり、共同提案者として東京電機大学、大日本印刷、凸版印刷、慶昌堂印刷、豊国印刷、ボイジャー、シャープ、シャープビジネスコンピュータソフトウェアが名を連ねている。まさに今回の原稿で扱った中間(交換)フォーマットを決めようというプロジェクトだということが分かる。
 さらに「別添2 平成22年度 新ICT利活用サービス創出支援事業 採択案件(10件)概要一覧」[*10]を見ると、提案者が提出した解説の図がまとめられている(図5)。
図5 提案者による「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」の説明
 これを見ると、今回の原稿で取り上げた「中間(交換)フォーマット」が「電子書籍交換フォーマット」という名前で登場している。おそらく以降はこの名前が流通するのだろう。これが変換を目的とする中間フォーマットであることは当然として、この図によると、入力側は「新規作成、紙書籍、印刷データ、既存電子書籍」となっている。個人的にはこれは意外だった。というのは、中間(交換)フォーマットについて、それまで既存の電子書籍データを変換・統一する目的としか考えていなかったからだ。しかし、この図によれば新規作成はもちろん、印刷データ、たとえばInDesignのデータさえも変換することを目的としている。さらに出力側にドットブック、XMDFがあるのは当然として、EPUBも明記されていることは注意すべきだろう。
 このプロジェクトについて、総務省でこの案件を管轄する情報流通行政局・情報流通振興課の松田昇剛統括補佐に話を聞くことができた。ごく短い電話取材に過ぎないが、総務省が中間(交換)フォーマットにかける意気込みを聞くことができたように思う。これを番外編としてまとめ、遅くとも11月5日までに公開する予定で作業中だ。どうかご期待いただきたい。

注釈

[*1]……設置のプレスリリースは『デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」の開催』総務省/文化庁/経済産業省、2010年3月10日(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02ryutsu02_000026.html)、議事録・配布資料は『デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会』総務省(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/shuppan/index.html)を参照。
[*2]……「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」報告の公表』総務省/文化庁/経済産業省、2010年6月28日(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02ryutsu02_02000034.html
[*3]……「日本語の電子書籍 規格統一出版促す」朝日新聞、2010年6月9日、朝刊、東京本社第13版、13面。これに先行して、ほぼ同様の記事が前夜から同社「asahi.com」(http://www.asahi.com/business/update/0608/TKY201006080359.html)にて公開されている。
[*4]……International Digital Publishing Forum(http://www.idpf.org/
[*5]……他に中間(交換)フォーマットを閲覧フォーマットと誤解した例として、以下の2つの記事を挙げておこう。「電子書籍の政府での議論が心配だ」2010年6月29日、Publickey、新野淳一(http://www.publickey1.jp/blog/10/post_112.html)、「日本の電子書籍は、ガラケーと同じ道をたどるのか?」NETMarketing Online、中村祐介(http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20100810/215764/)。両者とも本文で引用した鎌田氏とよく似た立場をとっていることが分かる。なお、前者の記事では「XMDF+ドットブックは中間交換形式として用いるとのことだったので、この部分は的外れでした」として、閲覧フォーマットとして扱った部分を削除している。もう1つ、似た立場のものを紹介しておこう。「電子書籍でも失敗を繰り返すメディア業界の「ガラパゴス病」」2010年8月4日、ASCII.jp、池田信夫(http://ascii.jp/elem/000/000/544/544407/)。この記事は先に紹介したものと違って事実誤認がきわめて多い。例えば〈XMDFファイルは独特のソフトウェアでテキスト変換したもので、仕様は非公開〉という一文は少なくとも2つの誤認、もしくは嘘が含まれている。かねての持論を喧伝したくて中間フォーマットやXMDFに牽強付会したと理解すべきか。
[*6]……「電子書籍中間(交換)フォーマット統一案とIEC62448改訂」(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/digital_network/gijutsu_06/pdf/shiryo_6_1.pdf
[*7]……この原稿を執筆している2010年10月26日現在。なお、議事要旨を除く配布資料は、以下から入手可能(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/shuppan/30752_1.html)。
[*8]……「平成22年度「新ICT利活用サービス創出支援事業」(電子出版の環境整備)に係る委託先候補の決定」(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_01000005.html
[*9]……「別添1 平成22年度「新ICT利活用サービス創出支援事業」に係る委託先候補」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000086456.pdf
[*10]……「別添2 平成22年度 新ICT利活用サービス創出支援事業 採択案件(10件)概要一覧」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000086457.pdf

2010年9月30日木曜日

電子書籍の(なかなか)明けない夜明け 第2回 日本のコンテンツ産業の黄昏

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/yoake/20100928_396436.html

携帯電話の普及とパケット定額で成長

 2010年に生きるあなたは「電子書籍端末」と言われたら、どんなものを思い浮かべるだろう。最近は電車の中でもよく目にするようになったAppleのiPad? それとも新型が出たAmazon Kindle?
 もしもあなたがそれらをイメージしたとすれば、それは日本の電子書籍の実態とは違う。実際には最も普及している電子書籍端末は携帯電話なのだ。さらに言えば意外に思われるかもしれないが、日本の電子書籍市場は既に世界有数の売上高を持つまで成長している。
 また、多くの人は「電子書籍」というと、小説だとか実用書のような活字系を想像するかもしれない。しかし実際に現在の日本で最も多く売れている電子書籍は電子コミックであり、より具体的に言えばエロ系コンテンツだ。ここまでは前回説明した。つまり、一般に電子書籍としてイメージされるだろうものと、実際の姿とでは大きな隔たりがあるように思える。
 こうした日本における電子書籍の急成長の追い風となったのは、爆発的とも言える携帯電話の普及だ。図1は携帯電話やパソコンの世帯普及率の推移をグラフ化したもの。携帯電話単体で見ると、1995年には16.3%にとどまっていたものが、わずか3年後の1998年には57.7%、2003 年からはずっと90%を超えている。パソコンと比較しても、携帯電話がこれを下回っていたのは初回調査の1995年のみで、それ以降は常にパソコンを上回る普及率を維持している。このような携帯電話の普及なしに、日本の電子書籍は考えることはできない。

図 1 携帯電話、PHS、パソコンの世帯普及率の推移。携帯電話のグラフの色が途中で入れ替わっているのは、当初の設問が携帯電話のみ、PHSのみの世帯所有を聞いていたところ、1995年からは「携帯電話とPHSのいずれかを所有」も聞くようになり、PHSの衰退とともに2005年からは「いずれか」だけを聞くようになったため。ただし、グラフ化すると設問の変更にかかわらず普及率の推移を辿ることができるのが興味深い(総務省「通信利用動向調査(世帯編)報告書及び統計表一覧」)
 加えて、2003年11月にKDDIが開始したパケット料金定額サービス「EZフラット」の登場が大きな意味を持つことになる[*1]。これによりユーザーはインターネットの接続料金をあまり気にすることなくコンテンツを楽しむという、アメリカなどでは考えられない環境を手に入れることができた。この2003年当時、まだ凸版印刷の一部門だったビットウェイが電子書籍サイト「Handyブックショップ」をスタートさせ、ここから携帯電話向けの電子書籍配信事業が始まる。
 翌2004年6月、KDDIに追従してNTTドコモもパケット定額を開始する。前回掲載したグラフ「日本における電子書籍市場の市場規模の推移」を図2に再掲しよう。2004年以降、携帯電話における電子書籍の売り上げが急増、その一方でパソコン向けが漸減していることが確認できるだろう。このように、今日ある日本の電子書籍市場は、携帯電話とパケット定額が作りあげたものと言ってよい。

図2 日本における電子書籍市場の市場規模の推移(『電子書籍ビジネス調査報告書2010[ケータイ・PC編]』インプレスR&D、P.25、資料1.2.1を再構成)

急激に売り上げを落としている出版界と新聞界

 さて、前回の終わりでは、講談社首脳による日本電子書籍出版社協会発足の際の発言を引用した。それはどこかしら苛立ちや焦り、さらには怯えのようなものさえ感じられるものだった。では、彼を怯えさせているものは何か?
 前述のとおり、携帯電話における電子書籍の売り上げを支えているのは電子コミックだ。前回掲載した「携帯電話の電子書籍売り上げにおける種類別の内訳」を再掲しよう。

図3 携帯電話の電子書籍売り上げにおける種類別の内訳(前掲『電子書籍ビジネス調査報告書2010[ケータイ・PC編]』P.26、資料1.2.2 電子書籍市場規模のジャンル別内訳を再編)
 その一方で、急激に売り上げを落としているものがある。電子コミックとは書店ルートで売られるマンガを電子化して再利用したものなのだが、肝心のマンガ雑誌やマンガ単行本が売れなくなってきているのだ(図4)。

図4 マンガ単行本、マンガ雑誌の推定販売金額(『2010出版指標年報』全国出版協会出版科学研究所、2010年、P.215)
 一見すると図3よりも変化のカーブが緩く見えるが、図4の縦軸は1けた違うことにご注意いただきたい。例えば2005年のマンガ単行本とマンガ雑誌の合計は5023億円あったのだが、その4年後には836億円も減って4187億円になってしまっている。この差額は図2で示した日本における 2009年の電子書籍全体の売り上げなどよりずっと多い! ただごとではない事態がマンガ業界で起きていることがお分かりいただけよう。
 しかし急激に売り上げを減らしているのはマンガ業界だけではない。そもそも出版業界全体が大きく売り上げを落としている(図5)。

図5 書籍と雑誌の推定販売金額(『2010出版指標年報』全国出版協会出版科学研究所、2010年、P.3)
 書籍と雑誌のいずれもが1996年をピークとして、以降急カーブを描いて下降していることが分かる。合計金額で見ると、2009年は1996年よりも7208億1000万円も落ちている。この金額は、日本の全人口(1億2776万7994人[*2])に対し、1人あたり約5500円ずつを配ることができるほどの大きな金額だ。
 つまり、新しく登場した電子書籍が売り上げを伸ばしている反面、旧来の書店ルートで販売される「モノ」としての本がそれを上回る勢いで売り上げを落としている。ただしここが大事なのだが、いくら急成長しているといっても、電子書籍は旧来の本の売り上げ減をカバーするほどの数字はあげていない。つまり、総体としては売り上げの減少の方がずっと目立つ。これが現在の出版界の構図だ。
 そして、これは出版社だけではない。売り上げという意味では、新聞の世界もまったく同様だ(図6)。ピーク時の2005年から比べ、2008年はなんと2788億円も減っている。

図6 新聞の総売上高の推移(日本新聞協会「新聞の総売上高の推移」)[*3]

本体の売り上げだけでなく広告まで

 出版社や新聞社の収入を支えているのは本体の売り上げだけではない。新聞はもちろん、雑誌においては広告収入を加えて収支収益を成り立たせるビジネスモデルになっている。また、NHK以外のテレビ、ラジオでは、時間枠をスポンサーに販売し、その広告を入れることにより利益を上げるビジネスモデルだ。ところが、これらの媒体において広告収入が急激に落ちている(図7)。

図7 テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、およびインターネットにおける広告の売り上げ(総務省特定サービス産業動態統計調査)[*4]
 横軸(時間軸)を長目にとってグラフ化しているので一見すると分かりづらいが、じつは新聞、雑誌、ラジオのいずれも、ピーク時に比べてほぼ半減している。1兆円を超えるテレビはさすがに半減までしないが、それでもピーク時の2000年から3645億円も減っている。
 そんな中で独り気を吐いているのがインターネット広告だ[*5]。 2006年に1200億円だったのが、4年後には65%増やして1980億円と、希望にあふれた急成長をとげている。つまり、ここでも旧来モデルが大きく落ち込む一方、まったく新しいモデルが成長しているという構図が見られる。そして、いくらインターネット広告が成長しているといっても、旧来の広告をカバーするまで至っていないことも共通している。
 ところで、よくグラフを見るとここ数年の落ち込みが特に激しいことに気付かないだろうか。中でもテレビ、新聞、雑誌は不吉なほど急な角度で下降している。図7のうち、インターネット広告の集計が開始された2006年から2009年の3年間だけを抜き出したグラフを作成してみた(図8)。

図8 2006~2009年におけるテレビ、新聞、雑誌、ラジオ、およびインターネットにおける広告の売り上げ(出典は図7と同)
 たった3年の間にテレビと新聞は2000億円以上、雑誌も920億円という気が遠くなるような金額が減っている。このカーブの陰で、いったい何人の人が収入を減らし仕事をなくしたのだろうか。考えただけでぞっとする。
 ここで図5・図6の出版社や新聞社の売り上げ急降下を考え合わせてほしい。これらの業界はまさに存亡の淵に立たされていると言える。そしてそれは広告が主な収入源であるテレビも同様だ。注意してほしいのは、近年の経済状況からいってしばらくは売り上げが下がることはあっても上がることは望めそうもないということだ。

音楽・映像産業でも売り上げ減少

 だんだん書いていて辛くなってきたが、売り上げが低下しているのは出版・新聞・テレビ・ラジオだけではない。同じコンテンツ産業である音楽・映像業界もご同様だ(図9)。

図9 12センチCD、有料音楽配信、DVDビデオの売り上げ(前2者は日本レコード協会、後者は日本映像ソフト協会調べ)[*6]
 12センチCDにおける売り上げピークは2000年の5088億円、それが2009年には半分に減って2459億円。その落差はなんと 2629億円。そしてDVDビデオにおける売り上げのピークは2005年の3477億円、それが2008年には2757億円。その落差は720億円。なんとも目を蔽いたくなるような惨状だ。
 ただし、その一方で売り上げを伸ばしているものがある。有料音楽配信だ。2005年には333億円なのが、その4年後には3倍近くになる910億円。書店ルートの「モノ」としての本が売れず、その一方で電子書籍が急成長している動きと奇妙なくらい符合する。
 こうした売り上げ減少の要因について、2008年10月からのリーマンショックの影響を見るのが大方の見方かもしれない。しかしそればかりでは説明がつかない。売り上げの下降はそれより前から始まっているからだ。
 ここまで挙げた活字、映像、音楽などのコンテンツ産業は、ずっと人々の余暇を支え、それによって収益をあげてきた。しかし図1から分かるように、21世紀に入って日本に住むほとんどの人が携帯電話やパソコンを持つようになった結果、多くの人々の「ヒマな時間のつぶし方」が大転換を遂げつつあるあるのではないか。もちろん、それを加速したものこそがインターネットだ。つまり、人々の消費行動そのものが「モノ」から「ネット」に比重を移しつつあるように思える。

そこにやってきたKindleとiPad

 以上の分析によって、出版や新聞業界のみならず、かつて盛況を誇ってきた多くのコンテンツ産業が、音を立てて崩れ始めているのがお分かりいただけたと思う。たった数年の間に業界全体で数百億、数千億も売り上げが減っている中で、平気な顔をしていられる経営者がいるだろうか。前回引用した講談社首脳の焦りや怯えとは、つまりこうした事実を背景にしたものと考えられる。
 これら売り上げを減らしている業界の中で、ただ独り成長しているのは、すべてインターネットを媒介にしたものだった。電子書籍、有料音楽配信、インターネット広告、いずれもそうだ。これらの成長は、前述した「モノ」から「ネット」へ人々の消費行動が移ったことを背景としたものだ。
 まさに、このようなタイミングで、米Amazonにおけるクリスマス期間中の電子書籍販売額が、初めて紙の本を上回ったと発表され(2009年12月26日)[*7]、AppleのiPadが発表された(2010年1月28日)[*8]。 KindleもiPadもインターネットをインフラとしてうまく取り込んでいるのが特徴であり、旧来の携帯電話をリーダー端末とする日本の電子書籍と比べると、一歩も二歩も進んでいると見えるものだった。このままでは今まで苦労しながら育ててきた、しかしまだ十分に成長しきっていない日本の電子書籍市場を、彼等アメリカの資本にごっそりと持って行かれてしまうのではないか?
 なるほど、前回述べたような、今年に入ってからの電子書籍をめぐる大手出版会社、大手印刷会社、取次、電機メーカー、そして新聞社までを巻き込んだ合従連衡は、こうした連想に基づくものだったのか。一言でいえば内憂外患。内では業界全体の地盤沈下、加えて外からは魅力的なアメリカ製品の上陸。
 では、これに対処するにはどうするか。短期的に紙の本の売れ行き増が期待できない以上、現に成長している電子の本に希望を見出すのはむしろ必然だ。しかしそれにはコンテンツの確保や制作だけでなく流通の問題も密接に関係する。だから業種の枠を越えた幅広い連繋が必要――そういうことなのだろう。
 一部にはまるで大手出版社が守旧派のように電子書籍を拒んでいるように言う人もいるが、ぼく自身は懐疑的に思っている。ここに挙げたような数字を前に紙の本の売り上げにしがみつけば、どのような未来が待っているか? 経営者のみならず誰が考えても分かることだ。

「中間(交換)フォーマット」への不安

 では、こうした日本企業の合従連衡は十分に合理的な判断に基づいたたものだろうか? そう考えると、いくつも不吉な兆しが見えてくるのが正直なところだ。おそらく、この問題が最も凝縮されているのがファイルフォーマットの選択だろう。調べれば調べるほど、どうも日本陣営の選択には無理があるように思える。
 2010年6月28日、総務省、経産省、文化庁の肝いりによる「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」が報告書を発表、そこで「中間(交換)フォーマット」が提案された[*9]。これは従来の電子書籍市場で主流であるシャープのXMDFとボイジャーのドットブックを統一するものだ。そして、これを具体化させようというのが、同年7月20日にシャープが発表した「次世代XMDFフォーマット」だ[*10]
 しかしここまで繰り返し述べたように、もともと日本の電子書籍市場における主要なリーダー端末は携帯電話だった。パソコンなどに比べて限られたメモリー、貧弱なCPUパワーを前提に、そうした環境に適応したファイルフォーマットを開発し、その基盤の上で成長を遂げてきた。
 例えば現在の携帯電話において主流を占めるファイルフォーマットであるシャープの現行XMDFには、見出しを付けることによって文書を構造化する、HTMLのH1~H6要素にあたるものが規定されていない[*11]。その反面で縦書き表示や簡単な禁則処理、音声再生、画面自体を振動させる効果等が用意されている。これは文書の構造化をあきらめる代わりに、画面表示に限られたリソースを配分したものと考えられる。
 一方で日本の携帯電話などよりはるかに遅く開発をスタートさせたiPadやKindleは、かつての日本の開発者が苦労したようなスペックの制限とは無縁だ。例えばiPadで標準的な電子書籍用のファイルフォーマットとして採用されているEPUBは、現在の一般的なウェブ標準である XHTMLとCSSのサブセットで構成されている。そのため、開発コストがかかる画面表示用のレンダリングエンジンなどは、パソコン用のものをそのまま流用することができた。
 いくらこれから策定される「次世代」といっても、旧来の貧弱な携帯電話の尻尾をひきずったフォーマットで、さらに旧来のコンテンツとの互換性を保証したまま、現代ウェブ標準の直系フォーマットに対抗できるのか? ぼくにはこの提案が不自然な手であるように思えてならない。
 そもそも上陸してくる「アメリカ製品」とは、倒すべき敵なのか? インターネットがもたらしたグローバル経済が隆盛を誇るこのご時世に、内と外で単純に敵味方に分ける二元論には、違和感を感じざるを得ない。それでも、この戦略には日本の多くのコンテンツ産業の未来がかかっているのは間違いない。舵取りを誤れば取り返しのつかないことになるだろう。次回はこの問題について掘り下げてみたい。
【追記 2010/09/30 20:55】
 この原稿は2010年の7月から8月にかけて執筆された。本文の最後ではこの時点での取材に基づき、シャープの次世代XMDFを中間(交換)フォーマットと同一のものとして扱っている。しかし、この見方は9月27日にあったシャープの記者会見では、「次世代XMDFは新聞や雑誌に、中間(交換)フォーマットは文芸系の書籍にフォーカスしたもの」として、正式に否定された。これは重要なことと思われるので、この件について少し詳しく追記したい。
 7月20日、都内ホテルでシャープの記者会見が開かれた(関連記事「シャープが電子書籍事業に参入、タブレット端末を年内発売」http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100720_381927.html)。この会見で、ぼくと同社の間で以下のような質疑応答があった。

小形:今日発表された次世代XMDFフォーマットと、先月発表された三省デジ懇報告書にあった統一中間フォーマットの関係は? 大畠昌巳執行役員(情報通信事業統括):報告書にあるフォーマットそのものだ。
小形:報告書ではドットブックとの統一が謳われていた。ということは今日発表された次世代XMDFフォーマットは、ドットブックと統合済みと理解してよいのか?
千葉徹執行役員(システムソリューション事業推進本部長):現在のXMDFについてはドットブックとの変換ソフトを開発済みだ。今回発表したものは三省のサポートを得て優良なコンテンツを広く再生可能にしようとするもの。業界の皆さんと一緒にドットブックはもちろん、EPUBとの間でも再生できるよう努めていきたいと思っている。
 今回の原稿は、上記の回答を踏まえて書かれたものだ。ところが、9月27日の会見での同社の言い方は、かなり違ったものになっていた。やりとりは以下の通り。
小形:前回の発表会で三省懇談会報告書にある中間(交換)フォーマットと次世代XMDFは同じものという説明があった。しかしフォーマットを決める審議会は、いまだ開かれてない。新製品は12月発売とのことだが、その影響は? 中村宏之所長(電子出版事業推進センター):多少誤解があるようだ。今日発表した次世代XMDF と、三省懇談会報告書の中間(交換)フォーマットとは、当面……あくまで当面だが、別物と考えてほしい。三省懇談会のフォーマットは、文芸系の書籍にフォーカスしたもの。一方、今日発表したものは新聞や雑誌にフォーカスしたもの。次世代XMDFはオーサリングから配信までシャープが新しく開発したものだが、まだまだ未完成。出版社様ともよく話し合い、良いものにしたい。そして、実績が出てくれば、あらためて交換フォーマットの次のバージョン等に提案させていただきたいと考えている。そうしたステップ・バイ・ステップのものとしてお考えいただければ。
 関連して、会見終了後に中村所長から直接話を聞いた。
小形:先ほど次世代XMDFは新聞・雑誌、中間フォーマットは書籍という話があった。しかし、その一方で書籍を扱う電子書店を始めるとも言っていた。そこで考えたのだが、これは新聞・雑誌の配信は次世代XMDFを使ってシャープ自身がやり、電子書店では各種団体に場所を貸し、EPUB、PDF、現行XMDF等、複数のフォーマットで販売するということなのか? 中村所長:国内と国外とで変わってくるが、少なくとも国内に話を限ればその通り。別に私共は XMDFしか売らないということではない。三省懇談会ではボイジャーさんと仲良くなれた。どちらのフォーマットが良いなどということではなく、電子書籍の世界をどう広げていくかが重要。そのためにはオープンでフリーでなければいけないということで検討を進めている。
 シャープが7月20日に発表したニュースリリース(http://www.sharp.co.jp/corporate/news/100720-a.html)を見ても分かるが、この時点で同社は次世代XMDFを電子書籍全般のソリューションとして位置付けている。ところが9月になると、次世代XMDFは新聞・雑誌だけで使うよう方針を転換したことになる。
 おそらく時間が経過するに従って各領域のビジネスモデルが明確化し、その結果、ファイルフォーマットによって排他的に事業を進めることの損得も明確化したのではないか。
 例えば新聞・雑誌の配信では配信システムを自社がゼロから構築するので、フォーマットは自前のものに限定した方が都合よい。もちろん電子書店でも配信システムを自社が握るのは同じだ。しかしこちらは多くの出版社からコンテンツの提供を受けなければならず、多少煩雑でも出版社が提供しやすいようフォーマットの壁をなくした方が収益を見込める。だから中間(交換)フォーマットを活用して、なるべく多種多様なフォーマットを扱えるようにしたい、そういうことではないか。
 ここで重要なことは中間(交換)フォーマットは制作の過程で必要になるもので、読者が読む配信フォーマットとは違うということだ。仮にこれを配信フォーマットとして捉えれば、その欠点が露呈してシャープが目論むようなビジネスモデルも崩れざるを得ないだろう(このあたりは次回詳しく書く予定だ)。
 この原稿はシャープの9月27日の会見翌日に配信だったので、本文を修正しようと思えば間に合った。しかしそこまで考えが至らず、はてなブックマークのコメントを見てこの文章を書いている。これからも厳しい(またできれば温かい)コメントをお寄せいただければ幸いです。

注釈

[*1]……『電子書籍ビジネス調査報告書2010[ケータイ・PC編]』高木利弘(インプレスR&D、2010年、P.55)
[*2]……「2005国勢調査:人口総数」総務省統計局(http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/kihon1/00/01.htm
[*3]……「新聞の総売上高の推移」日本新聞協会(http://www.pressnet.or.jp/data/03finuriage.htm
[*4]……「特定サービス産業動態統計調査:広告業」総務省(http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabido/result/result_1/xls/hv14403j.xls
[*5]……この調査では一括しているが、インターネット広告とは検索エンジンに入力したキーワードに連動する検索連動型広告、携帯電話のウェブを対象としたモバイル広告、ユーザーの閲覧履歴に連動する行動ターゲティング広告などに分類される。より詳しい分析には、例えば「今後5年でモバイル2.3倍、検索連動1.6倍、行動ターゲティング8.7倍へ……インターネット広告市場規模推移」不破雷蔵、Garbagenews.com(http://www.garbagenews.net/archives/976884.html)がある。
[*6]……12センチCDは、社団法人日本レコード協会「音楽ソフト種類別生産金額の推移」(http://www.riaj.or.jp/data/money/index.html)、有料配信は、同協会「有料音楽配信売上実績」(http://www.riaj.or.jp/data/download/index.html)、DVDビデオは、社団法人日本映像ソフト協会「各種調査報告」(http://www.jva-net.or.jp/report/report_bn.html)。なお、DVDビデオの統計には音楽DVDを含んでいないことに注意。
[*7]……“On Christmas Day, for the First Time Ever, Customers Purchased More Kindle Books Than Physical Books”, Amazon.com (http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=176060&p=irol-newsArticle&ID=1369429)
[*8]……「Apple、iPadを発表」アップル(http://www.apple.com/jp/news/2010/jan/28ipad.html
[*9]……「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会報告書」(http://www.soumu.go.jp/main_content/000075191.pdf
[*10]……「シャープが電子書籍事業に参入、タブレット端末を年内発売」INTERNET Watch(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100720_381927.html
[*11]……“IEC 62448 Ed. 2.0, Multimedia systems and equipment - Multimedia E-publishing and E-books - Generic format for E-publishing” (International Electrotechnical Commission, Geneva: 2009.) ※IEC 62448は2009年の第1次改訂において、附属書BとしてXMDFの仕様を追加している。

2010年9月28日火曜日

電子書籍の(なかなか)明けない夜明け 第1回 携帯電話で成長できた日本の電子書籍市場

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/yoake/20100927_396277.html

それはKindleとiPadで始まった

 よその国で始まったドミノ倒しが、いつのまにか海を渡って自分にも倒れかかってきた。今年に入ってからの電子書籍「ブーム」は、ぼくにはそのように感じさせられるものだった。いったい何が起きているのだろう? ブームに踊らされて、ぼくもこの現象に向き合ってみたくなった。
 これから始める連載では、主に技術や規格の側面から電子書籍を考える。あまりポピュラーとは言えない視点だが、かえって見えにくいものが見えてくるかもしれない。
 しかし今これを語るには、あまりにも情報が錯綜している。そこで電子書籍を考える前提として、2回に分けて今起きていることの整理をしたい。既に多くの人が同種のことを書いているので周回遅れという気もするが、できるだけ信頼できる資料を吟味して、これからの連載の基本となるような視点を提出したいと思う。
 まず試みに昨年末からの電子書籍に関する主なニュースを挙げてみよう。

  • Amazon.com、クリスマス期間中の電子書籍の販売額が、初めて紙の本を上回ったと発表(2009年12月26日)[*1]
  • Apple、iPadを発表(2010年1月28日)[*2]
  • 電子書籍の課題や制度を検討、3省合同の懇談会が初会合(2010年3月18)[*3]
  • 「日本電子書籍出版社協会」発足、出版31社が参加し規格など検討(2010年3月24日)[*4]
  • 日本電子出版協会、「EPUB」日本語要求仕様案を策定(2010年4月1日)[*5]
  • ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社、電子書籍配信事業に関する事業企画会社の設立を発表(2010年5月27日)[*6]
  • 専門書・実用書出版社14社、「電子書籍を考える出版社の会」設立(2010年6月8日)[*7]
  • 紀伊國屋書店が電子書籍販売事業に参入(2010年6月21日)[*8]
  • 電子書籍の3省懇談会、著作権集中管理や統一中間フォーマットの検討を提言(2010年6月22日)[*9]
  • Google、この夏に「Googleエディション」開始~電子書籍販売に参入(2010年7月8日)[*10]
  • シャープ、新たな電子書籍ソリューションを発表(2010年7月20日)[*11]
  • 大日本印刷と凸版印刷、「電子出版制作・流通協議会」の設立を発表(2010年7月27日)[*12]
  • NTTドコモと大日本印刷、電子出版ビジネスで提携(2010年8月4日)[*13]
 一連の騒動の始まりが、海の向こうで生まれたAmazonとAppleの製品であることは間違いない。これに反応して、まるでドミノ倒しのように国内の主立った出版社、印刷会社、書籍流通、電機メーカー、通信キャリア等が合従連衡を始めた。こうした報道を見ると、すごい勢いで世の中が変わりつつあるようにも思えてくる。しかしよく調べると国内各社の動きは、冷静に考え抜かれたというより、どこか小鳥の群れが風に驚いて飛び立ったようなもののように思えてくる。

10年以上も前からあった日本の電子書籍

 冒頭「よその国で始まったドミノ倒し」などと書いたが、ぼくが不勉強なだけで、じつは日本ではとっくの昔から電子書籍をめぐる試みは始まっている。図1を見てほしい。これはGoogleウェブ検索における特定キーワードのトラフィックの増減を視覚化してくれる「Googleトレンド」で、「電子書籍」をグラフ化したもの[*14]

図1 2004年1月4日~2010年7月28日まで、日本において「電子書籍」が検索されたトラフィックの増減。全期間の平均値を1として算出されている
 グラフを見ると、2009年末からトラフィックが急増しているのは当然として、2004年にも2つの小さな山があることが分かる。時間軸の早い方の山は2004年3月21日からの、遅い方は同年6月20日からの週に記録されたものだ。
 この種のキーワードは報道に反応することが多い。これに対応するニュースを探すと、同年3月24日にソニーがリブリエを発表している[*15]。しかし6月20日の週に対応するニュースは見つけられなかった。同年1月29日に松下電器産業(当時)がΣBookを発表[*16]しているが、1月にトラフィックの増減が見られないことから、何らかの理由でデータがずれて集計されているのかもしれない。
 ΣBookもリブリエも「そういえば」と懐かしく思い出す読者もいるはずだ。ただしこれらの機器はあまり売れず、現在は販売されていない。それでも、現在の電子書籍ブームのはるか以前、2004年にも小さな「ブーム」が存在したことが、このグラフから見て取れる。それだけでない。表1を見てほしい。

表1 現行のKindle、iPadと2004年の読書専用端末の比較
 2004年に発売された製品は、6年後のものより特に劣っていない。それどころか部分的には上回る項目さえある。つまり現在売られている読書専用端末と、あまり性能が変わらないものが、既にこの時代から売られていた。では、同じような性能の機械でありながら、なぜΣBookやリブリエは尻すぼみに終わり、KindleやiPadは華々しい売り上げを出しているのか? このあたりが今日のブームの行方を占う1つのカギなのかもしれない。
 もう少し検証を進めよう。じつは2004年ですら「電子書籍元年」ではない。もし図1のグラフがもっと以前まで集計できれば、例えば以下のような電子書籍に関するニュースのトラフィックも拾っていたはずだ。

  • 電子書籍コンソーシアムがオンデマンドによる販売実験(1999年9月16日)[*17]
  • 出版大手8社の電子書籍を販売する「電子文庫パブリ」9月1日オープン(2000年8月30日)[*18]
  • イーブックイニシアティブ、読書用PDA「イーブック端末」を発表(2001年4月10日)[*19]
 さらに言うなら、1993年のフロッピーによる電子書籍端末、NECデジタルブック[*20]や、1990年の8センチCD-ROMを使ったソニーのデータディスクマン[*21]、あるいは1987年のワープロ専用機OASYS 100用のCD-ROM版『広辞苑』[*22]という先行例もある。

世界に誇る日本の電子書籍市場

 このように、日本ではずっと以前からいくつもの電子書籍端末やそのサービスがリリースされてきた。ここで忘れてならないことは、2000 年に発足した「電子文庫パブリ」の参加メンバーが、そのまま10年後に発足した日本電子書籍出版社協会の中核メンバーであるように、あるいはデータディスクマンやリブリエを作ったソニーが、そのまま2010年の電子書籍配信事業準備株式会社の設立にも参加しているように、主立った出版社、印刷会社、電機メーカーが何度も電子書籍に挑んでは撤退するのを繰り返してきたことだ。
 ただし、こうした日本の電子書籍の試みは失敗ばかりだったわけではない。むしろ着実に成長を重ね、売上高だけを見れば、今や世界有数の規模を持つ電子書籍市場になるまで成長している。2009年の日本における電子書籍の売り上げは574億円[*23]。これに対してアメリカは2009年は3316万ドル(約368億円)[*24]、他には中国は2009年が45億円[*25]。つまり日本は、これらの国を大きく引き離しているのが現状だ(図2)。

図2 2009年における日本、アメリカ、中国の電子書籍売上額(単位は億円、出典『電子書籍ビジネス調査報告書2010[ケータイ・PC編]』および『同[新プラットフォーム編]』インプレスR&D)
 こうした日本における高い電子書籍の売り上げを支えているのが携帯電話だ。図3のグラフを見ると、圧倒的な売り上げをあげているのは携帯電話であり、iPhone、iPad、Kindle等の新プラットフォーム向け[*26]は微々たるものに過ぎず、パソコン向けもごく少数にすぎないことが分かる。

図3 日本における電子書籍市場の市場規模の推移(前掲『電子書籍ビジネス調査報告書2010[ケータイ・PC編]』P.25、資料1.2.1を再構成)
 日本での主な電子書籍端末が携帯電話であるという点は、Kindleなど専用端末が多くを占めるアメリカ、パソコンで閲覧するのが主である中国とは異なる、日本独自の特徴であることを覚えておきたい。

電子コミックが主流の日本の電子書籍

 では、この携帯電話向けの電子書籍の内容はどんなものなのか。図4を見てほしい。市場が立ち上がった直後から、一貫して電子コミックが多くを占めている。図5として2009年におけるジャンルごとの内訳も出しておいた。

図4 携帯電話の電子書籍売り上げにおける種類別の内訳(前掲『電子書籍ビジネス調査報告書2010[ケータイ・PC編]』P.26、資料1.2.2 電子書籍市場規模のジャンル別内訳を再編)

図5 2009年における種類別の内訳(出典は図4と同)
 そこで、日本の電子書籍の過半を占める携帯電話における電子コミックとは、いったいどんな内容のものなのか? 図6をご覧いただきたい。

図6 電子コミックの売れ筋ジャンル(前掲『電子書籍ビジネス調査報告書2010[ケータイ・PC編]』P.48、資料1.5.15)
 これはインプレスR&Dが携帯電話向けの電子書籍業者に行ったアンケート調査の一部。自社の売れ筋コンテンツをたずねたところ、上位3つが成人用コミック、ボーイズラブ、ディーンズラブ、つまりエロ系コンテンツなのである。
 この調査は2010年6~7月に質問を送った313社のうち、32社が返答した結果をまとめたものだ(回収率20.4%)[*27]。32社だけの回答をそのまま業界全体に当てはめるのは無理がある。しかし、実際に携帯電話の電子書籍サイトを見て回ると、確かに全体の傾向としてエロ系コンテンツは多いと感じられる。
 さらに、アンケート調査で聞いているのは「売れ筋」である点に注意しよう。量としてエロ系コンテンツが多いというだけでなく、事業者にとってはこれがあるからこそ電子書籍ビジネスが成立していることを伺わせる。

彼等は何に怯えているのか?

 以上をまとめよう。日本では20年以上も前から電子書籍に関するさまざまな挑戦が繰り返されてきた。何度も失敗した後、ようやく実を結んだのが携帯電話を舞台にした電子書籍の配信事業であり、近年は倍々ゲームで成長を続けている。そしてそのジャンルを見ると、多くは電子コミック、中でもエロ系コンテンツが目立つ。
 日本では主な電子書籍端末が携帯電話だという点は、アメリカや中国とは違う、日本独自の電子書籍市場の特徴だ。そこでの売り上げの多くを占めているのがエロ系コンテンツであることは、かつてビデオやDVDにおいて、最も最初に普及したのがやはりエロ系コンテンツであったことを思い出させる。
 この連想が本当なら、今の市場の姿は過渡期のもので、本当に多くの売り上げをあげるようなキラーコンテンツは、これから登場するということになる。ひとまず冒頭ならべた電子書籍に関する各社の合従連衡も、そうした思惑が込められているという推測が成り立つ。つまり、現在のエロ系コンテンツの代わりに、書店で売られているようなベストセラーがそのまま置き換わるという図式だ。
 しかし、それにしては登場する顔ぶれが大袈裟すぎないか。冒頭引用した報道では、大手出版会社や携帯キャリア、電機メーカーが顔を出しているのは当然として、取次や大手印刷会社、そして新聞会社まで登場するのだ。
 何より彼等は切羽詰まっているように見える。例えば2010年3月24日、講談社の野間省伸副社長は、日本電子書籍出版社協会の発足にあたり、記者会見で次のような発言をしたという。
「日本の出版界に電子書籍やデジタル化の波が押し寄せてきても、紙か電子のゼロサムで考える必要はなく、優れたコンテンツを読者に提供する手段が増えることはむしろ望ましいこと。作家や漫画家の発掘・育成、才能の拡大再生産こそが出版社の役割であり、それはデジタル化でも変わることはない。」[*28]
 ゼロサム……? ぼくがこの発言を読んで印象に残ったのは、そこで強調されている「出版社の役割」などよりも、むしろ言葉の端々から漂ってくる何かへの苛立ちや焦り、さらには怯えのようなものだった。同じようなものは、他の報道に登場する日本の大企業首脳の発言からも嗅ぎ取れる。では、彼等は何に苛立ち、何に怯えているのだろう? それを探るには、もう少し範囲を広げてデータを集める必要がありそうだ。次回は、これについて考えてみたい。

注釈

[*1]……“On Christmas Day, for the First Time Ever, Customers Purchased More Kindle Books Than Physical Books”, Amazon.com(http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=176060&p=irol-newsArticle&ID=1369429
[*2]……「Apple、iPadを発表」アップル(http://www.apple.com/jp/news/2010/jan/28ipad.html
[*3]……「電子書籍の課題や制度を検討、3省合同の懇談会が初会合」INTERNET Watch(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100318_355430.html
[*4]……「『日本電子書籍出版社協会』発足、出版31社が参加し規格など検討」INTERNET Watch(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100324_356586.html
[*5]……「EPUB日本語要求仕様案(解説)」日本電子出版協会(http://www.jepa.or.jp/press_release/epub_jp_pressrelease.html
[*6]……「ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社、電子書籍配信事業に関する事業企画会社を設立」ソニー(http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201005/10-0527/
[*7]……「これからの電子出版や電子書籍・雑誌に取り組むための団体『電子書籍を考える出版社の会』を設立」電子書籍を考える出版社の会(http://ebookpub.jp/press/20100608.html
[*8]……「紀伊國屋書店、ハイブリッドデジタル販売モデルで電子書籍流通を」紀伊國屋書店(http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=254399&lindID=2
[*9]……「電子書籍の3省懇談会、著作権集中管理や統一中間フォーマットの検討を提言」INTERNET Watch(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100622_376075.html
[*10]……「Google、この夏に『Googleエディション』開始~電子書籍販売に参入」INTERNET Watch(http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100708_379334.html
[*11]……「新たな電子書籍ソリューションで、電子書籍事業に参入」シャープ(http://www.sharp.co.jp/corporate/news/100720-a.html
[*12]……「NTTドコモ 大日本印刷 電子出版ビジネスで提携」NTTドコモ/大日本印刷(http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2010/08/04_00.html
[*13]……「電子出版制作・流通協議会の設立について」大日本印刷(http://www.dnp.co.jp/news/1217630_2482.html
[*14]……http://www.google.com/trends?q=%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%9B%B8%E7%B1%8D&date=all&geo=jp&ctab=0&sort=0&sa=N
[*15]……「ソニー、フィリップス、E Inkによる電子ペーパー・ディスプレイ」ソニー(http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200403/04-0324B/
[*16]……「松下、電子ブック『ΣBook』を書店・ネットで発売 」INTERNET Watch(http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/29/1921.html
[*17]……「電子書籍コンソーシアムがオンデマンドによる販売実験」INTERNET Watch(http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/1999/0916/ebj.htm
[*18]……「出版大手8社の電子書籍を販売する『電子文庫パブリ』9月1日オープン」INTERNET Watch(http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2000/0830/paburi.htm
[*19]……「イーブックイニシアティブ、読書用PDA『イーブック端末』を発表」PC Watch(http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010410/ebook.htm
[*20]……「NECデジタルブック」Katsuhiko Nishida [NEC] / Kazuo Shimokawa [EAST](http://www.est.co.jp/ks/dish/nec_db/nec_db.htm
[*21]……「ソニー商品のあゆみ(PDA)」ソニー(http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/sonyhistory-i.html
[*22]……「EPWINGコンソーシアム入会について:変遷(略歴)」EPWINGコンソーシアム事務局(http://www.epwing.or.jp/member/admission/index.html#history
[*23]……『電子書籍ビジネス調査報告書2010[ケータイ・PC編]』高木利弘(インプレスR&D、2010年、P.24)
[*24]……アメリカの電子書籍業界団体IPDF(International Digital Publishing Forum)の統計(http://www.idpf.org/doc_library/industrystats.htm)による。このページの説明によれば、ここにある数値は卸値とのこと。同じく説明では〈Retail numbers may be as much as double the above figures due to industry wholesale discounts.〉(小売りの統計数値は表にある卸値を2倍にすれば同程度になるだろう)とあるので、単純にこの数値を2倍にした上で、 2002~2009年のドル円為替レートの平均値である111円によって円換算した。なお、為替レートは『通貨換算機能システム』(http://fxtop.com/jp/cnv.htm)の数値を使用した。
[*25]……『電子書籍ビジネス調査報告書2010[新プラットフォーム編]』高木利弘(インプレスR&D、2010年、P.125)所載の『China Book Business Report』の統計による。ただし同報告書では引用元の書誌情報や、円元換算レートが明示されていないなど、データの扱いに若干の不安があることをお断りしておく。
[*26]……前掲、『電子書籍ビジネス調査報告書 2010[ケータイ・PC編]』によれば、「新プラットフォーム」の定義は次の通り。〈スマートフォン向けのモバイルマーケットプレイスの電子書籍カテゴリ、スマートフォンやタブレットPC等のビューワーアプリ経由で購入する電子書籍、iBookStoreやKindleやこれに類似した電子書籍配信サービス、PC・スマートフォン・電子ブックリーダーなどマルチデバイスで閲覧が可能な電子書籍配信サービス、PSPやNintendo DSなどゲーム機向け電子書籍配信サービス。〉(同書、P.24)
[*27]……なお、この質問では複数回答を許しているため、回答数と回答者数が一致していない。
[*28]……注4で挙げたINTERNET Watch「『日本電子書籍出版社協会』発足、出版31社が参加し規格など検討」より。

2010年5月21日金曜日

出版も本格的に電子化の時代に入るとのことだが…

実際にはまだまだ実用段階には程遠い気がする。
もうしばらく時間が要るんだろう。
ということでそれまでの間、ボチボチと関連ニュースなど拾って行こう。