2011年6月28日火曜日

キャリアの電子書籍サービスは、実際はどれが読みやすい?

http://ascii.jp/elem/000/000/615/615314/
第2回に続いてキャリアが提供する電子書籍サービスを比較していこう。前回はストアの機能自体を比較したが、今度は買った本の読みやすさに関わる機能を比較した。実際の書物と違い、ページをめくる、しおりを挟む、といった何気ない操作も、スマホ上ではタッチパネルでの操作となる。データの保存先はどこ? というスマートフォンならではの気になる点もある。実は意外と3社とも使い勝手が大きく違った。 

案外大きな違いがある3社のサービス

 比較したサービスは前回と同じくNTTドコモの「2Dfacto」(テスト機種/GALAXY S SC-02B)、auの「LISMO Book Store」(テスト機種/IS03)」、ソフトバンクモバイルの「ソフトバンクブックストア」(テスト機種/003SH)だ。
 電子書籍を見るにあたって必ず気になるだろう点を、下記の表にまとめている。

  ドコモ「2Dfacto」 au「LISMO Book Store」 ソフトバンク
「ソフトバンクブックストア」
ストアとリーダーは別アプリ? 同じ 同じ 別アプリ必要
次ページ表示時の演出 ページめくりまたはスクロール スクロールまたは画面切り替え スクロールまたは画面切り替え
前/次ページに移動する方法 フリックまたはタップ フリックまたはタップ フリックまたはタップ
コミックの見せ方 ページ単位 ページ単位/コマ単位 コマ単位
文字サイズ変更
フォント変更 ×(太さは変更可能) ×(太さは変更可能)
書籍内への書き込み × ×
データ保存先 本体メモリ、またはmicroSD/ユーザーメモリの選択が可能 microSD microSD


 まず最初の「ストアとリーダーは別アプリ?」という項目は、要は電子書籍ストア用のアプリ以外に、書籍を読むために必要なアプリがあるかということ。ソフトバンクブックストアが一部必要としているのは「書籍閲覧アプリ」のことだ。
 スマートフォン上の電子書籍といえば、ページが「めくれる」演出が印象的だが、今回の比較では2Dfactoのみ対応していた。

ソフトバンクはストアアプリとリーダーアプリが別途必要。ページがめくれる演出は2Dfactoのみ


 また、大画面のスマートフォンでも、書籍によっては文字が読みづらいことがあり、ピンチ操作で拡大縮小ができるとやはり便利だ。これは逆にLISMO Book Storeとソフトバンクブックストアで対応。コミックは書籍によって違いがあり、ケータイ風のコマ毎表示するタイプと、1ページをそのまま切り替えるタイプがある。個人的にはスマートフォンでは1ページずつ切り替えるほうが自然な気がする(コマ割や文字の大きさにもよるが)。
 書籍への書き込みについては、2Dfactoのみ自由にマーカーやメモを入力できたので、使い方によっては便利そうだ。書籍の保存先は大量に読む読者であれば、microSDが選択できると安心だ。

2Dfactoは、文章にメモを入れたり、マーカーで色を塗ったり、さらにアプリ内で画面の明るさを変更できたりと芸が細かい


機能が豊富過ぎる!カスタマイズ派に嬉しい「2Dfacto」

 ストアで電子書籍を購入して、データをダウンロードすると、2Dfactoアプリの「一覧」などに本が並ぶ。並び方はワンタッチで、書籍タイトル/購入順/読んだ順/著者名順に変更できる。アプリ内に自分で新しく本棚を作ることもできるので、本の分類に便利だろう。書籍の保存先は本体メモリ、もしくはメモリカード/ユーザーメモリが選択できるようになっているが、本体内に10GBほどのユーザーメモリがあるGALAXY Sの場合はこのユーザーメモリに保存される。ただし、著作権保護のために本体メモリにしか保存できない作品もある。

購入した電子書籍が並ぶ書棚は、ユーザーが複数作れるなど、データが管理しやすくなっている。ただし肝心のデータをGALAXY SではmicroSDに保存できないのは残念

 さて、実際に読み始めると、機能が非常に多いことに気づく。前述の比較表以外でも、書籍内のキーワード検索が可能。文字列を入力すると、その文字列のあるページに飛ぶ。文字を長押しして選択すると、Wikipediaなどで用語検索もできるし、書籍内にマーカーで線を引いたり、メモ(ノート)を入力できる。しおりは何枚も挟むことが可能だ。このマーカーやメモ、しおりは、位置が記録されており、いつでもそのページを簡単に開くことができる。

全文検索や選択した範囲のテキストをWikipediaで検索したりと、機能が豊富


 また「縦組み」「横組み」の変更も可能だ(作品によっては固定になっている)。縦組みでは右開きだった書籍が、横組みでは左開きに切り替わる。文字と背景の色まで変更できるのには驚いた。ルビを振ることができるほか、行間や字間の調整にも対応している。さらには画面タップしてページを「進む」「戻す」場合、それぞれの操作が認識される画面のエリアまで決められるので、“自分に最適な読書環境”を目指すのであれば、本アプリはかなり望みに近い設定が実現できそうだ。もっとも、筆者の場合は初期設定のままでもまったく普通に使えたので、必ず設定をいじらないといけないわけでもない。

さらには横組みに変更したり、背景色を変えたりとカスタマイズの自由度は一番だ
画面のどの範囲までタップ操作を認識するかも変更できる

全体的にシンプルだが表示設定にはこだわれる「LISMO Book Store」

 2Dfactoと比べるとシンプルなアプリだが、特に印象的なのは画面をタッチしてもツール関連のメニューが表示されないことだろう。設定を変更したい場合は「MENU」ボタンでメニューを開く。
 2Dfactoは機能が多いために、どこを操作して目的の設定を変更するのか、正直パッと見ではわかりにくい。しかしLISMO Book Storeの場合は、とりあえずメニューを開けばいいので慣れていなくてもすぐに覚えられる。ただしシンプルゆえに、カスタマイズの楽しみは少ない。本棚もデフォルトのもののみを使うことになる。その本棚は「作品」「著者」「カテゴリ」「ダウンロード」「サンプル」でのみ分類されるので、書籍の数が増えると少々整理が大変になりそうだ。ただし、本棚でメニューを開くと検索は可能である。

操作は基本的に「MENU」ボタンから行なう。書棚は2Dfactoと比べると随分シンプルだ

 読書を中断して手動でしおりを挟む場合もやはりメニューから行なうが、肝心のしおりが2枚しか挟めないのは残念。ページ移動は目次からの指定や、全ページをパーセント単位で表わし、その数字で移動する。
 ここまではLISMO Book Storeのシンプルな面をお伝えしたが、「表示設定」は非常に細かい。文字サイズは5パターン、太字設定もある。縦横表示の切り替え/余白調整/行間/ルビ表示/柱(書籍の余白に記載された文字)の表示、さらには1行送りで読んでいくこともできる。コミックの表示ではバックライト表示や、作品によっては「コマ表示」「ページ表示」を好みで選択が可能だ(表示方法が「コマ表示」のみに決められている作品もある)。

ただし文章の見せ方などの設定項目は多い

 そして「レビュー投稿」機能があるのも今後使っていくうえで期待したい機能だ。最後のページまで到達したときや、作品タイトルの長押しで投稿メニューが表示される。

読み終わったあとにレビューを投稿できる機能があるのは電子書籍ならではだ


自作データや仕事の書類もまとめられる「ソフトバンクブックストア」

 保存先の設定は特に見当たらず、データは自動的にmicroSDへ保存された。表ではアプリが2つに分かれているように書いたが、ユーザーが実際に操作するのはソフトバンクブックストアアプリからのみだ。また標準のリーダーである「書籍閲覧アプリ」以外にも、「BSReaderアプリ for ソフトバンク」が必要な作品もあった。これらは操作の中でインストールするように誘導されるので気にする必要はない。
 ソフトバンクブックストアには、ケータイと同じように単行本単位ではなく、1話単位で販売されているコミックが大量にある。そのような作品では1話分を読み終わったときに次の話を探す検索メニューが表示される。これは単純だが良い機能だと思う。

著作権保護の関係か、一部キャプチャー不可能な画面もあったので実機を撮影している。コミックなどで次の話数や関連書籍を続けて検索して購入できる点は便利だ

 ただしリーダーとしての機能はLISMO Book Store以上にシンプル。並び替え機能はもちろん著者名/ジャンル別に分類することは可能だが、書籍内に挟めるしおりは1枚だけというのはさすがに不便だ。特に実用書/解説書の類では、後で読み返したい部分に多数目印をつけておきたものである。これは今後の機能強化に期待だ。

表示のカスタマイズやしおり機能などはとことんシンプルだ

 他の2サービスと違い、この「ソフトバンクブックストア」には自作した電子書籍のデータや、仕事のファイルの管理機能がある。対応ファイル形式は PDF/Word/Excel/ePub。実際にファイルを読むためには別途ビューアーアプリが必要だが、書籍をまとめて管理できるのは便利だ。
 また読まなくなった本は「書庫」に移動する機能がある。書庫に移動した本は普段は本棚(マイブック)に表示されないので、本を整理しやすくなるだろう。簡単に取り出せるので、削除はしたくないが今は読まない本を入れておけばいい。なお、あくまで本棚機能に表示されなくなるだけなので、データ自体は端末に保存されている。

書棚である「マイブック」機能もやはりシンプルなもの。ただし、ユーザーのファイルについても一括して管理できる

 また「マイブックス検索」という、microSDカード内にある書籍とストア内の書籍を探す機能がある。1回のキーワード入力で同時に探せるわけではないが、本を大量に管理するようになったときには便利だろう。

しばらく読まない書籍は「書庫」に移動することで表面には出てこなくなる。また、メモリーカード内のデータやストア内のデータをキーワード検索できる

電子書籍を読むだけならスムーズだが
本の管理とまでなると、機能的にはまだまだ

 3サービスとも単に購入した電子書籍を読むだけなら、特に不満は生じない。しおり機能については、2Dfacto以外はもっと充実してほしいし、マーカー機能やメモ機能も実用書やビジネス書では、使えると大変便利になる。機能が増え過ぎると使いきれないかもしれないが、せっかくスマートフォンで見ているのだから、紙の書籍では難しいことができると「電子書籍で良かった!」と実感できるように思える。
 そういう意味では2Dfactoの「書籍内検索」、LISMO Book Storeの「レビュー投稿」、ソフトバンクブックストアの「次話検索」「マイブックス検索」といった機能は、それぞれ他のサービスにも入ってくるとうれしい。ストア同様これからさらに充実することを期待したい。

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