2011年6月25日土曜日

iPad、世界のタブレットからのトラフィックの89%を占める ―米comScore調査

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1106/24/news032.html

調査によると、米国では5月のタブレットのトラフィックの97%がiPadのもので、iPadからのアクセス手段の92%はWi-Fi経由だった。

   世界のインターネットトラフィックをタブレットに限定してみると、その89%以上を米AppleのiPadが占めている――。米調査会社のcomScoreは6月23日(現地時間)、非PC端末によるネットワーク利用に関する新調査「Device Essentials」の5月の結果を発表した。
 日本を含む世界の13の地域でのPC以外の端末(タブレット、携帯電話、iPod touchなど)によるインターネットトラフィックでは、携帯電話では多くの地域でiPhoneと米GoogleのAndroidが競合しているが、タブレットではiPadが圧倒的に優位であることが明らかになった。
この表からはトラフィック全体に占める非PC端末の割合は不明だが、日本ではiPhoneのトラフィックが約半分(49.5%)で、Android端末(30.6%)、iPad(11.3%)と続く。日本ではタブレットからのトラフィックの100%がiPadからという結果になっている。
 非PC端末のトラフィックでは、新聞メディアへのアクセスが他のカテゴリより多かった。PCを含む新聞メディアサイトへのトラフィックを端末種類別に示した以下の表からは、全地域でPCからのアクセスが90%を超えているが、英国、シンガポール、日本では携帯端末からのアクセスが5%以上を占めることが分かる。
また、米国でのiOSとAndroidからのネットワークアクセス方法(Wi-Fiか携帯ネットワークか)の調査では、Wi-Fiの利用率はiPadが91.9%、Androidタブレットは65.2%、iPhoneは47.5%、Androidスマートフォンが21.7%だった。
 なお、この調査にモバイルアプリからのトラフィックが含まれているかどうかは明記されていない。

2011年6月23日木曜日

ソニーの電子書籍端末「Reader」コミックにも対応--こだわりのチューニング

http://japan.cnet.com/digital/pc/35004387/
ソニーマーケティングは6月22日、電子書籍端末「Reader Pocket Edition」と「Reader Touch Edition」をバージョンアップし、電子書籍フォーマット「ドットブック(.book)」形式に対応したと発表した。
  • 「のだめカンタービレ」(C)二ノ宮知子/講談社を表示したところ。5型と6型のどちらでも楽しめる
 今回のバージョンアップに伴い、オンラインブックストア「ReaderStore」でドットブックフォーマットのコンテンツ販売を開始。第1弾として講談社の提供により、伊坂幸太郎著「チルドレン」や松本清張著「殺人行おくのほそ道(上)(下)」など書籍約300タイトル(約300冊)と、かわぐちかいじ作「沈黙の艦隊」や二ノ宮知子作「のだめカンタービレ」などコミック約1360タイトル(合計約5700冊)の計約6000冊をそろえた。国内の「Reader Store」における初のコミック販売となる。
 8月末までには、奥泉光著「シューマンの指」や西村京太郎著「十津川警部 トリアージ 生死を分けた石見銀山」などの文芸書、弘兼憲史作「社長 島耕作」や柴門ふみ作「華和家の四姉妹」のコミックなど、人気の高いコンテンツを追加する予定としている。講談社以外の出版社によるコミックの販売は現時点では未定だが、今後に向けて検討していくとしている。
 なお、コンテンツ容量は文芸書はおよそ1Mバイト。コミックは1巻あたり約40Mバイトという。
 ドットブックフォーマットは、ルビ、縦書きレイアウトなど日本語特有の表示に対応し、日本国内で多数の書籍、コミックならびに雑誌をサポートする電子書籍フォーマットの1つ。国内市場向けReaderが発売当初からサポートしているXMDFやPDF、Textなどの書籍フォーマットならびにテキストファイルに加え、ドットブックフォーマットが今回新たに追加されることで、コンテンツの選択の幅が一層広がるとしている。

“自炊”よりもお手軽に--Readerのこだわり

  • 左が製品版で右が自炊のもの。美しさは一目瞭然
 Readerは、月2冊以上を購入する書籍ヘビーユーザーに向けて開発された製品だ。ユーザーアンケートによれば、月2冊以上購入するユーザーが6割以上に上るとし、6冊以上購入するユーザーも13%に上り「ターゲット通りのユーザーが獲得できている」と話す。
 男女比率も徐々に変わってきており、当初13%だった女性ユーザーは、発売から3カ月~6カ月で20%にまで増えている。「当初、ガジェット好きだった男性が購入していたが、徐々に一般層へ広がってきているのではないか」と分析する。
 Readerが評価されている点は、本体の持ち歩きやすさと文字の読みやすさ、バッテリの持ち時間だという。これらは、電子書籍専用端末とライバルと言われるタブレットとの棲み分けの大きなポイントになると見る。ソニー自身もタブレットの発売を秋に控えており、ターゲットを明確にしていくことで共存させたい考えだ。
 これまでソニーは、Readerで文芸書を中心に提供してきたが、コミックも約3割の人が希望しているとし、コミックにも力をいれていくことにしたという。また、こだわったのが、Readerに最適化したスキャンのチューニングだ。
 ソニーと講談社が開発を進める中で、もっともスキャンが難しいと言われていたのは、細かい描写が多い沈黙の艦隊と手書きの擬音や小さい文字が多いのだめカンタービレで、それらがうまく行けばほかも上手くいくと考えていたという。
 今回は両者で最適なアルゴリズムを調整して濃淡部分などを美しく実現したこだわりの仕上がりで、ユーザー自身が裁断してスキャンする「自炊」するよりも手軽で見やすく美しいマンガが楽しめるとしている。

富士通、電子書籍ストア「BooksV」を正式オープン

http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1106/22/news081.html

富士通が開設した電子書籍ストア「BooksV」は、国内最大級となる30万点超のコンテンツと、ダウンロード型の提供形態で独自のポジションを築きそうだ。

富士通は6月22日、電子書籍ストア「BooksV」をオープンした。
 同社が「富士通が提供する書籍・雑誌、ビジネスに使える統計・レポートなどのコンテンツを販売するサービスサイト」と位置づけるBooksVは、3月に設立が発表されており、当初は5月のオープン予定だったが1カ月ほどずれ込んでの開始となった。
 BooksVの特徴は、ほかの電子書籍ストアを圧倒するラインアップ。大日本印刷の関連会社であるモバイルブック・ジェーピーのほか、同社グループのジー・サーチ、富士通エフ・オー・エムの出版ブランド「FOM出版」からコンテンツの提供を受け、30万点を超えるラインアップとなった。これは国内最大規模。
 BooksVサイト上で確認できる各ジャンルのタイトルを合計すると33万6496点。このうち、雑誌の特集などを個別に切り出した雑誌記事・レポートのジャンルは、タイトル数が32万2580点と全体の約95%を占めている。個別に切り出しているとはいえ、週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済、エコノミスト、日経ビジネス、日経コンピュータなどに掲載された記事は有用なものも多い。
 昨今の電子書籍ストアでは珍しく、ダウンロード型のコンテンツ提供形態を採っているのも特徴。一般書籍は主にXMDF形式、雑誌記事/調査レポートはPDF形式で提供されている。購入したコンテンツは、雑誌記事/レポートは購入後24時間以内に5回まで、そのほかの書籍は、購入後1年間(365日)ダウンロードが可能。先日開催されたワイヤレスジャパン2011では一部のPDFコンテンツがDRMフリーであるとことが明かされている。
 一方で、利用までの手順はやや複雑だ。BooksVは、AzbyClub(富士通製PCユーザーの会員組織)、もしくは@nifty会員のIDが必要で、かつBooksVの利用登録(無料)も必要となる。コンテンツの購入は、クレジットカードもしくは@nifty決済で行う。海外からのコンテンツ購入は行えない。
 ストアのオープンを記念し、富士通エフ・オー・エムのFOM出版が刊行したPC操作解説や資格試験対策などの書籍20点を7月10日まで無料で提供する。ITパスポート試験や基本情報技術者試験などの対策テキストなどが無料で手に入る豪気なキャンペーンだ。

2011年6月22日水曜日

大英図書館とGoogleが提携、25万冊の蔵書をすべてデジタル化

http://www.rbbtoday.com/article/2011/06/21/78136.html
大英図書館(British Library)と米グーグルは20日、同館のコレクションである25万冊の書籍を、デジタル化するために提携したことを発表した。デジタル化された電子書籍は、順次「Googleブックス」と同館のサイトで無料公開される。

 書籍は、著作権が消失した物を中心に大英図書館によって選ばれて、Googleによって数年をかけてデジタル化される。総計4000万ページにもおよび、1700年から1870年までの、フランス革命・産業革命、クリミア戦争、鉄道や電話の発明、そして奴隷制度の終わりといった膨大な範囲が対象だという。これは大英図書館とグーグルが掲げる、誰もが書籍にアクセスできる「2020 Vision」に基づく計画とのこと。なお経費はグーグルがすべて負担する。グーグルはすでに40以上の世界の図書館と提携を行っている。

 デジタル化される最初の作品としては、マリー・アントワネット女王についての冊子、初の燃焼エンジン主導の潜水艦に関する解説書、ジョルジュ=ルイ・ルクレール・ビュフォンの博物誌「The Natural History of the Hippopotamusor River horse」などの稀覯本があげられている。

電子書籍、先行き“読めず” 専用端末・コンテンツが伸び悩み

http://www.sankeibiz.jp/business/news/110622/bsj1106220503000-n1.htm
米アップルのタブレット型端末「iPad(アイパッド)」の人気とともに、急速な普及が期待された電子書籍市場の足踏み状態が続いている。昨年末に投入されたシャープとソニーの専用端末の売れ行きは、非公表ながらも「芳しくない」というのが業界の共通認識だ。印刷大手や通信、電機メーカーが展開しているコンテンツの配信サービスも順調とはいえない。関係者が期待するのは販売が好調なスマートフォン(高機能携帯電話)。通常の携帯電話よりも画面の大きい「スマホ」利用者の取り込みを急ぐ考えだ。
 「シャープ製は端末の直販制度が不評で、ソニー製は端末から書籍を直接購入できず、使い勝手がいまひとつ悪い」
■厳しい「2台持ち」
 シャープとソニーが昨年12月10日に発売したタブレット型の電子書籍端末「ガラパゴス」と「リーダー」の伸び悩みを、業界関係者はこう説明する。
 ガラパゴスはインターネットと郵送で注文を受け付ける通信販売が中心で、ソニーの「リーダー」はコンテンツを取り込むにはネットに接続したパソコンが欠かせない。この点が不評を招いているという。
 誤算だったのは端末の利用者が30~40代中心で、画面での読書に抵抗感を持たない若年層への浸透が進んでいないことだ。携帯電話に加え、もう1台の端末を所有する「2台持ち」は若者には費用的に厳しい。
ユーザーからは「新聞や雑誌などの定期配信コンテンツが好評」(シャープ)、「紙に近い画面で読みやすい」(ソニー)といった声もあるというが、専用端末の前途は厳しさが漂う。
 東芝やパナソニックもタブレット型端末を今後投入する予定だが、調査会社BCNによると5月の同端末の国内シェアは多機能タイプのiPadが87.6%と圧倒的。日本勢が牙城を崩すのは容易ではない。
■著作権問題など壁
当初の見通しを下回っているのは端末だけでなく、コンテンツも同様だ。
 シャープはガラパゴス向けに配信するコンテンツの目標数として「2010年12月末までに3万冊」を掲げたが、著作権問題などが壁となって5月20日時点でも約2万6000冊。リーダー向けも2万冊にすぎない。
 「『コンテンツが先か、端末が先か』といわれれば、絶対にコンテンツが先。残念ながら今年前半はユーザーが期待する作品が出ていない」
 野村総研主任コンサルタントの前原孝章氏は、売れ行きを牽引(けんいん)するような魅力的なコンテンツの少なさが、電子書籍が伸び悩んでいる原因だと指摘する。同総研は10年を「電子書籍元年」ととらえ、国内市場は右肩上がりで伸びると予測したものの、その通りに運ぶかどうかは雲行きが怪しくなってきた。
コンテンツ不足を解消し、電子書籍ビジネスが花開いたのは米国だ。ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムは英語圏向けに95万冊以上をそろえ、「紙の書籍の販売ランキング上位の9割以上が電子化され、価格も紙の半額以下」(前原氏)といい、質・量ともに日本の先を行く。
 4月以降は電子書籍の販売数が紙の書籍を上回るという逆転現象も起きた。
■「スマホ突破口」青写真描く関係者
日本では足踏み状態の電子書籍だが、将来をにらんで大手書店が動き出した。5月に国内最大手の紀伊国屋書店が配信サービスに参入。昨年の「本屋大賞」受賞作で映画化も決まった「天地明察」(沖方丁著)や「カラマーゾフの兄弟」(亀山郁夫訳)などの話題作をほかの電子書店に先んじて配信する。
 同書店の担当者は「独自コンテンツの効果で『紀伊国屋にはほかの本屋にないものがある』と感じてもらいたい」と話す。
 「電子書籍の行方を左右するのはスマートフォン」というのが業界の一致した見方だ。「ガラケー」(ガラパゴス携帯)と呼ばれる携帯電話向けの小説やコミックの配信は昨年、市場規模が米国を上回ったとされる。
 「日本人の若者はガラケーでもストレスなく小説やコミックを読んできた」(前原氏)だけに、画面の大きいスマホで突破口を開き、専用端末やタブレット型端末向けのコンテンツが拡大する。電子書籍ビジネスに取り組む関係者は、そんな青写真を描いている。

Kindleにあふれる電子書籍スパム 出版革命のプラスとマイナス

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1106/21/news073.html


AmazonのKindleで初めて100万部を販売した自費出版物が現れる一方で、Kindle向けオンライン書店にはスパム電子書籍があふれている。「Kindle書籍を1日に1冊ずつ作成する方法」まで出回っているという。
米Amazon.comの大ヒット商品である電子書籍端末「Kindle」がスパムの標的とされている。同端末向けのオンライン書店には目下、読む価値があるとは到底言えないような代物が溢れ、出版業界への進出を目指すAmazon.comの取り組みを阻害しかねない事態となっている。
 Amazonのセルフパブリッシングシステムでは現在、電子書籍あるいはデジタル書籍などと呼ばれる書籍が毎月何千冊と出版されている。その多くは、従来の意味では「書かれていない」書籍だ。
 そうした書籍は、代わりにPrivate Label Right(PLR)として知られるコンテンツを使ってまとめられている。PLRコンテンツとは、オンラインで非常に安価で入手し、自由にデジタル書籍にフォーマットし直すことができるデータのことだ。
 AmazonのWebサイトでは、従来型の書籍とともにこうした電子書籍がしばしば99セントで販売されており、その結果、読者は自分の読みたい書籍を見つけるために大量のタイトルの中を探して回らなければならないようになってきている。
 熱心なスパム業者であれば、「Autopilot Kindle Cash」というDVDボックスセットも購入しているかもしれない。このDVDセットは、「自分では一語も書かかずに1日に10~20冊もの新しいKindle書籍を出版する方法を伝授する」とうたったものだ。
 出版の世界では目下、著者に「読者に直接アクセスするための新たな方法」を与えることによって出版業界の従来の在り方を覆すというオンライン革命が進行中だが、最近のスパム現象はそうした革命の影の部分を表している。

急激な変化

 米国では2010年、電子書籍も含め、非従来型の書籍が280万点近く出版されたのに対し、従来型の書籍の出版点数はわずか31万6000点強にとどまった。2009年には、非従来型書籍の出版点数は133万点、従来型の書籍が30万2000点だった。これは、出版業界の専門家であるフォーダム大学ビジネススクールのアルバート・グレコ氏によるデータだ。
 同氏によると、2002年には、米国で出版された非従来型書籍は3万3000点にも満たず、一方、従来型の書籍は21万5000点以上が出版されていたという。
 「これは驚異的な増加だ。気が遠くなるような変化だ。プラスの側面として挙げられるのは、この変化のおかげで、書籍を執筆したものの取次を介した従来の方法ではそれを出版できずにいた非常に多くの人たちが助かっているという点だ」と同氏は言う。
 だがグレコ氏はマイナスの側面も指摘している。問題の1つは、著者がより多くの書籍を相手に読者の争奪戦を繰り広げなければならない点だという。「そうした書籍の多くは従来であれば決して日の目を見ることのなかったようなものだ」と同氏。
 こうした書籍の中には、ほかの作品をそのままコピーしただけのように見えるものもある。ニュージーランド在住の歴史小説作家であるシェイン・パーキンソン氏は今年早くに、自身のデビュー作「Sentence of Marriage」がAmazonで別の作家名で販売されているのを見つけたという。
 この件は最初、Amazonの英国のオンラインフォーラムでユーザーが突き止め、その後、解決に至ったという。
 「最初はショックだったし、信じられなかった。だがその一方で、この問題が見つかった経緯を思うと、誰かがわざわざわたしにこのことを知らせてくれたということに非常に感謝している」とパーキンソン氏は語っている。
 Amazonにとっては、Kindleを襲っている電子書籍スパムの波は、同社のセルフパブリッシングビジネスの推進を阻害し、同社の大ヒット商品であるKindleのブランドを損なうことにもつながりかねない。Barclays Capitalの推定では、Kindle端末は同社の2012年の売上高の約10%を占めている。
 「この問題はますます広まっていくだろう。いったん一部のスパム業者がこうした新しい販路を見つけたら、大量の同業者がその後に続くものだ」と書籍とソフトウェアの出版業者であるLogical Expressionsのスーザン・ダフロン社長は指摘する。
 Amazonは電子書籍の価格に応じて、その売上高の35~70%を著者に支払っている。これはスパム業者にとっては、この新たな販路に注力するための大いなる金銭的誘因となる。
 「自社製品の健全性を守りたいのであれば、Amazonは間違いなく、もっと品質管理に力を入れるべきだ」とダフロン氏は言う。
 「Amazonはこの問題の解消に懸命に取り組むだろう。この問題は、この市場における同社の優勢の多くを阻害する要因になる」とForrester Researchの電子リーダー担当アナリストであるジェームズ・マキビー氏も指摘している。
 同氏によると、セルフパブリッシングサービスがいかに急速に変質したかを目の当たりにした結果、Amazonは目下、同社の新サービス「Kindle Singles」については、提出物のチェックを行っているという。Kindle Singlesでは、短編小説や長めの報道記事、エッセイなど、短めの文章が扱われている。
 「差別化が一切、あるいはほとんど行われていない同じ内容の本が何種類も出版されても、顧客体験は向上しない。われわれは同一の内容が複数のバージョンで出版されている書籍を検出して排除するプロセスを設けた。当社のストアからそうしたコンテンツを排除することが狙いだ」とAmazonの広報担当者サラ・ゲルマン氏は6月14日付でReutersに送ってきたメールで述べている。同氏にはさらに問い合わせを行ったが、返答は得られなかった。

スパム急増の背景

 Kindleスパムはここ半年間で急増している。インターネットマーケティングの専門家、ポール・ウルフ氏によると、これは、Kindle書籍を1日に1冊ずつ作成する方法を伝授する内容のオンラインコース、そして皮肉なことにはそうした内容の電子書籍までもが幾つかリリースされている影響という。
 その手法の1つには、売れ始めた電子書籍をコピーして、タイトルと表紙をつけかえ、それまでとは若干異なる顧客層向けに出版し直すというものがある、とウルフ氏は説明する。
 Kindleと競合する電子書籍リーダーにはBarnes & Nobleが販売する「Nook」があるが、同社のオンライン書店にはまだスパムはあふれていない。
 「Barnes & Nobleは恐らくAmazonよりも積極的に電子書籍の内容を管理しているのだろう。もっとも、単にスパム業者にとってはKindleの大量のユーザーがより魅力的だからというだけかもしれない」とForresterのマキビー氏は指摘している。Barnes & Nobleにコメントを求めて問い合わせたが、返答は得られなかった。
 電子書籍の出版と流通を手掛けるSmashwordsもスパムには悩まされているが、同社創業者のマーク・コーカー氏によれば、AmazonのKindleほどひどい状況ではないという。
 Smashwordsでは、提出された電子書籍については、書式などの基本的な特徴を手作業でチェックした上で出版するという方針を採っている。コーカー氏によれば、スパムの明らかな特徴としては、表紙のデザインがお粗末だったり、表紙に作者の名前が載っていなかったり、書式が雑だったりといった点があげられるという。
 また同氏によれば、Smashwordsは四半期ごと著者への支払いを行っているが、Amazonの支払いは毎月だという。「当社の場合、支払いまでに時間があるため、その分、スパム業者を追跡するための時間を多く取ることができ、支払い前にアカウントを閉鎖できる可能性も高まる」と同氏。
 またAmazonは無料の電子書籍はあまり提供していないが、Smashwordsは多数提供している。そのため、スパム業者にとってはKindleで多くの書籍を出版する方が金銭的誘因が大きい、とさらにコーカー氏は続けている。
 同氏によると、Smashwordsで出版された無料の電子書籍がコピーされ、AmazonのKindleストアで再出版され、最低99セントという料金で販売されている例をこれまでに5~6件見つけたという。
 Forresterのマキビー氏によると、Amazonはソーシャルネットワーク的な解決策を編み出す必要があるという。読者が「自分の知っている人たち、あるいは過去にレビューを読んで気に入った人たちからの推薦」を見られるようにすれば、自分の希望のコンテンツを追跡しやすくなり、不正な推薦の回避にも役立つだろう、と同氏は言う。
 Logical Expressionsのダフロン氏は、「AmazonはKindleの出版システムへのアップロードを有料にすべきだ」と指摘している。そうすればスパム業者にとっての金銭的誘因は大幅にダウンすることになるからだ。
 「電子メールのスパムがこれほど問題になったのも同じ理由からだ。コストが一切かからないからだ」と同氏。「もし1冊の本のタイトルや作者を変えて12種類ものバージョンを異なる価格で出版できるのなら、たとえ1冊か2冊しか売れなくても、利益を上げられる。それでは業者の勝ち、Amazonの負けだ」

自費出版の電子書籍で初の100万冊販売 米アマゾン

http://www.asahi.com/national/update/0621/TKY201106210122.html
米インターネット通販最大手アマゾンは20日、出版社などと契約せずに自分で出版する米国人作家が、電子書籍を初めて100万冊売ったと発表した。誰でも手軽に出版できる電子書籍の仕組みを使い、「出版社抜き」の本が本格的に流通し始めた。
 ケンタッキー州に住むスリラー作家のジョン・ロック氏がアマゾンの電子書籍販売サービスで出版する仕組みを使って10作品を出し、19日までに計101万370冊を売った。アマゾンで電子書籍を100万冊以上売った作家は7人いるが、出版社を通さない作家では初めてという。
 ロック氏の電子書籍はほとんどが99セント(約79円)で売られ、ロック氏によるとそのうち35セント(約28円)が同氏の取り分になる。ロック氏は「電子出版は独立系の作家が巨大な出版産業と公平に戦える機会をもたらした」とコメントした。

Kindleにあふれる電子書籍スパム 出版革命のプラスとマイナス

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1106/21/news073.html
AmazonのKindleで初めて100万部を販売した自費出版物が現れる一方で、Kindle向けオンライン書店にはスパム電子書籍があふれている。「Kindle書籍を1日に1冊ずつ作成する方法」まで出回っているという。(ロイター)
 米Amazon.comの大ヒット商品である電子書籍端末「Kindle」がスパムの標的とされている。同端末向けのオンライン書店には目下、読む価値があるとは到底言えないような代物が溢れ、出版業界への進出を目指すAmazon.comの取り組みを阻害しかねない事態となっている。
 Amazonのセルフパブリッシングシステムでは現在、電子書籍あるいはデジタル書籍などと呼ばれる書籍が毎月何千冊と出版されている。その多くは、従来の意味では「書かれていない」書籍だ。
 そうした書籍は、代わりにPrivate Label Right(PLR)として知られるコンテンツを使ってまとめられている。PLRコンテンツとは、オンラインで非常に安価で入手し、自由にデジタル書籍にフォーマットし直すことができるデータのことだ。
 AmazonのWebサイトでは、従来型の書籍とともにこうした電子書籍がしばしば99セントで販売されており、その結果、読者は自分の読みたい書籍を見つけるために大量のタイトルの中を探して回らなければならないようになってきている。
 熱心なスパム業者であれば、「Autopilot Kindle Cash」というDVDボックスセットも購入しているかもしれない。このDVDセットは、「自分では一語も書かかずに1日に10~20冊もの新しい Kindle書籍を出版する方法を伝授する」とうたったものだ。
 出版の世界では目下、著者に「読者に直接アクセスするための新たな方法」を与えることによって出版業界の従来の在り方を覆すというオンライン革命が進行中だが、最近のスパム現象はそうした革命の影の部分を表している。

急激な変化

 米国では2010年、電子書籍も含め、非従来型の書籍が280万点近く出版されたのに対し、従来型の書籍の出版点数はわずか31万6000点強にとどまった。2009年には、非従来型書籍の出版点数は133万点、従来型の書籍が30万2000点だった。これは、出版業界の専門家であるフォーダム大学ビジネススクールのアルバート・グレコ氏によるデータだ。
 同氏によると、2002年には、米国で出版された非従来型書籍は3万3000点にも満たず、一方、従来型の書籍は21万5000点以上が出版されていたという。
 「これは驚異的な増加だ。気が遠くなるような変化だ。プラスの側面として挙げられるのは、この変化のおかげで、書籍を執筆したものの取次を介した従来の方法ではそれを出版できずにいた非常に多くの人たちが助かっているという点だ」と同氏は言う。
 だがグレコ氏はマイナスの側面も指摘している。問題の1つは、著者がより多くの書籍を相手に読者の争奪戦を繰り広げなければならない点だという。「そうした書籍の多くは従来であれば決して日の目を見ることのなかったようなものだ」と同氏。
 こうした書籍の中には、ほかの作品をそのままコピーしただけのように見えるものもある。ニュージーランド在住の歴史小説作家であるシェイン・パーキンソン氏は今年早くに、自身のデビュー作「Sentence of Marriage」がAmazonで別の作家名で販売されているのを見つけたという。
 この件は最初、Amazonの英国のオンラインフォーラムでユーザーが突き止め、その後、解決に至ったという。
 「最初はショックだったし、信じられなかった。だがその一方で、この問題が見つかった経緯を思うと、誰かがわざわざわたしにこのことを知らせてくれたということに非常に感謝している」とパーキンソン氏は語っている。
 Amazonにとっては、Kindleを襲っている電子書籍スパムの波は、同社のセルフパブリッシングビジネスの推進を阻害し、同社の大ヒット商品であるKindleのブランドを損なうことにもつながりかねない。Barclays Capitalの推定では、Kindle端末は同社の2012年の売上高の約10%を占めている。
 「この問題はますます広まっていくだろう。いったん一部のスパム業者がこうした新しい販路を見つけたら、大量の同業者がその後に続くものだ」と書籍とソフトウェアの出版業者であるLogical Expressionsのスーザン・ダフロン社長は指摘する。
 Amazonは電子書籍の価格に応じて、その売上高の35~70%を著者に支払っている。これはスパム業者にとっては、この新たな販路に注力するための大いなる金銭的誘因となる。
 「自社製品の健全性を守りたいのであれば、Amazonは間違いなく、もっと品質管理に力を入れるべきだ」とダフロン氏は言う。
 「Amazonはこの問題の解消に懸命に取り組むだろう。この問題は、この市場における同社の優勢の多くを阻害する要因になる」とForrester Researchの電子リーダー担当アナリストであるジェームズ・マキビー氏も指摘している。
 同氏によると、セルフパブリッシングサービスがいかに急速に変質したかを目の当たりにした結果、Amazonは目下、同社の新サービス「Kindle Singles」については、提出物のチェックを行っているという。Kindle Singlesでは、短編小説や長めの報道記事、エッセイなど、短めの文章が扱われている。
 「差別化が一切、あるいはほとんど行われていない同じ内容の本が何種類も出版されても、顧客体験は向上しない。われわれは同一の内容が複数のバージョンで出版されている書籍を検出して排除するプロセスを設けた。当社のストアからそうしたコンテンツを排除することが狙いだ」とAmazonの広報担当者サラ・ゲルマン氏は6月14日付でReutersに送ってきたメールで述べている。同氏にはさらに問い合わせを行ったが、返答は得られなかった。

スパム急増の背景

 Kindleスパムはここ半年間で急増している。インターネットマーケティングの専門家、ポール・ウルフ氏によると、これは、Kindle書籍を 1日に1冊ずつ作成する方法を伝授する内容のオンラインコース、そして皮肉なことにはそうした内容の電子書籍までもが幾つかリリースされている影響という。
 その手法の1つには、売れ始めた電子書籍をコピーして、タイトルと表紙をつけかえ、それまでとは若干異なる顧客層向けに出版し直すというものがある、とウルフ氏は説明する。
 Kindleと競合する電子書籍リーダーにはBarnes & Nobleが販売する「Nook」があるが、同社のオンライン書店にはまだスパムはあふれていない。
 「Barnes & Nobleは恐らくAmazonよりも積極的に電子書籍の内容を管理しているのだろう。もっとも、単にスパム業者にとってはKindleの大量のユーザーがより魅力的だからというだけかもしれない」とForresterのマキビー氏は指摘している。Barnes & Nobleにコメントを求めて問い合わせたが、返答は得られなかった。
 電子書籍の出版と流通を手掛けるSmashwordsもスパムには悩まされているが、同社創業者のマーク・コーカー氏によれば、AmazonのKindleほどひどい状況ではないという。
 Smashwordsでは、提出された電子書籍については、書式などの基本的な特徴を手作業でチェックした上で出版するという方針を採っている。コーカー氏によれば、スパムの明らかな特徴としては、表紙のデザインがお粗末だったり、表紙に作者の名前が載っていなかったり、書式が雑だったりといった点があげられるという。
 また同氏によれば、Smashwordsは四半期ごと著者への支払いを行っているが、Amazonの支払いは毎月だという。「当社の場合、支払いまでに時間があるため、その分、スパム業者を追跡するための時間を多く取ることができ、支払い前にアカウントを閉鎖できる可能性も高まる」と同氏。
 またAmazonは無料の電子書籍はあまり提供していないが、Smashwordsは多数提供している。そのため、スパム業者にとってはKindleで多くの書籍を出版する方が金銭的誘因が大きい、とさらにコーカー氏は続けている。
 同氏によると、Smashwordsで出版された無料の電子書籍がコピーされ、AmazonのKindleストアで再出版され、最低99セントという料金で販売されている例をこれまでに5~6件見つけたという。
 Forresterのマキビー氏によると、Amazonはソーシャルネットワーク的な解決策を編み出す必要があるという。読者が「自分の知っている人たち、あるいは過去にレビューを読んで気に入った人たちからの推薦」を見られるようにすれば、自分の希望のコンテンツを追跡しやすくなり、不正な推薦の回避にも役立つだろう、と同氏は言う。
 Logical Expressionsのダフロン氏は、「AmazonはKindleの出版システムへのアップロードを有料にすべきだ」と指摘している。そうすればスパム業者にとっての金銭的誘因は大幅にダウンすることになるからだ。
 「電子メールのスパムがこれほど問題になったのも同じ理由からだ。コストが一切かからないからだ」と同氏。「もし1冊の本のタイトルや作者を変えて12種類ものバージョンを異なる価格で出版できるのなら、たとえ1冊か2冊しか売れなくても、利益を上げられる。それでは業者の勝ち、Amazonの負けだ」

2011年6月21日火曜日

イースト、EPUBファイル生成サービス「epubpack」を無償公開

http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1106/20/news076.html

イーストは、EPUB 3.0に対応したEPUBファイルを生成できるクラウドサービス「epubpack」を公開した。無償で利用可能だ。

電子出版標準化団体IDPF(International Digital Publishing Forum)が5月23日に発表した「EPUB 3.0」は、日本語の縦書き、禁則などをサポートしており、電子書籍ファイルフォーマットの本命と目されている。
 MicrosoftのWindows Azureを使って立ち上げられたepubpackは、ユーザーがアップロードしたHTMLやCSSなどのファイルからEPUBファイルを自動生成するサービス。EPUB 3.0のほか、従来のEPUB仕様(EPUB 2)に準拠したファイルの生成も可能。EPUB 2で出力する場合はファイル構成や文法の整合性を確認する「epubcheck」によってチェックされ、仕様に沿ったEPUBファイルが出力される(EPUB 3.0で出力時はチェックされない)。