2011年11月10日木曜日

「NOOK Tablet」はKindle Fireに対抗できるか

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1111/09/news083.html

米書店大手Barnes & Nobleが「NOOK Tablet」でローエンドのタブレット市場に参戦。「Kindle Fireよりも優れたハード」という評価はあるものの、形勢は変わらないという声も。(ロイター)

 米書店大手Barnes & Nobleが新型タブレット端末「nook Tablet」を発表し、ローエンドのタブレット端末市場に参戦した。新端末はAmazon.comの競合端末「Kindle Fire」よりも容量が大きく、速度も速いが、価格も50ドル高めだ。

 Barnes & NobleはNOOK Tabletを249ドルで発売する。容量は16Gバイト。Amazonが先ごろ発表したタブレット端末Kindle Fireは容量が8Gバイトだ。NOOK Tabletは来週後半に店頭に並ぶ予定であり、今年の年末商戦では、同じく来週発売予定のKindle Fireとの間で熾烈な戦いが繰り広げられることになりそうだ。

 さらにBarnes & NobleはAmazonの積極的な価格攻勢に対抗し、一部のNOOK端末の値下げも発表している。

 Barnes & Nobleは全米に約700の店舗をチェーン展開しているが、Amazonのような十分な資金力は持っていない。だが同社の端末は、生粋のテクノロジーファンよりも電子書籍リーダーやタブレット端末に関心を持つ読書好きな人たちの間でニッチな市場を形成している。

 「われわれはまずコアな読者に対応したい」とBarnes & NobleのCEOを務めるウィリアム・リンチ氏はニューヨークで開催した製品発表会で記者らに語っている。同氏はAmazonのKindle Fireについては、書籍のほかにも同社の各種サービスに利用できる「自動販売機」となぞらえている。

 さらにリンチ氏はKindle Fireのストレージ容量を「不十分」と指摘、「nook Tabletのほうが速度が速く、容量が大きく、店頭での顧客サービスも受けられ、価格が高めなのはその分だ」と説明している。

 だが一部のアナリストによれば、買い手は二の足を踏むかもしれないという。「この場合、50ドルという価格差は大きい。25%も違うわけだから」とNPDのアナリスト、ロス・ルービン氏はReutersの取材に応じ、語っている。

 NOOK tablet4 件は7インチのディスプレイを搭載し、重さは約400グラム。バッテリー持続時間は動画視聴なら9時間で、Netflixのオンライン映画レンタルやHulu Plusの動画配信サービスを利用できる。1GHzのデュアルコアプロセッサを搭載し、RAMは1Gバイトだ。

 業績悪化に苦しむBarnes & Nobleは2009年に電子書籍リーダーNookの初代モデルを発表して以来、その開発に数千万ドルを投じている。

 その戦略は奏功し、同社は電子書籍リーダーおよびデジタル書籍の市場で約25%のシェアを獲得――ただしトップのAmazonには依然大きく水をあけられている――、実店舗での書籍の長期的な売上減によるダメージの緩和に役立っている。

 Barnes & Nobleは電子書籍リーダー市場への参入がAmazonよりも2年後れたが、まずまずの健闘を見せている。Barnes & Nobleの電子書籍リーダー「nook Color」はタブレット端末ふうの機能も幾つか備えており、「フル装備のタブレット端末を購入するところまではいかない」という顧客層に支持されている。さらに同社はAmazonの「Kindle Touch」に数カ月先立ち、今年5月にタッチスクリーン対応の電子書籍リーダーを発表している。

 Barnes & Noble株はニューヨーク証券取引所の7日午後の取引で2.4%値を下げ、11ドル33セントで取引された。Barnes & Nobleの株価は9月28日、当時同社のトップセラーだったNOOK Colorよりも安価なタブレット端末がAmazonから発表されたのを受けて、急落していた。

優れた製品だが、形勢はそのまま

 NOOK Tabletについての早期レビューは概ね好意的だ。Forrester Researchのアナリスト、サラ・ロットマン・エップス氏は「アッと言わせるような製品」と評している。

 またテクノロジーブログEngadgetの編集者ティム・スティーブンス氏は、「NOOK TabletはKindle Fireよりも優れたハードウェアのようだ」と評価している。

 ただし、NOOK TabletがKindle Fireキラーになると指摘している人はいない。それよりも、この端末は「Kindle FireよりNOOKを好む顧客」をそのまま定着させる役割を果たすことになるようだ。

 「この端末はBarnes & Nobleの買い手の忠誠を保つことになるだろう。手軽なタブレット端末のセグメントは依然として成長している」とMorningstarのアナリスト、ピーター・ウォルシュトルム氏は指摘し、AppleのiPadよりも安価なタブレット端末の隆盛に言及している。「Barnes & Nobleは価格競争は望んでいない。それによって、プレミアムな製品の売り手としての同社のイメージを高められる」と同氏。

 Engadgetのスティーブンス氏は、どちらの端末のユーザーも「現状の路線を進むだろう」と予想している。

 Barnes & Nobleが一部の端末で値下げを敢行したのは、9月にAmazonから受けたプレッシャーへの対応だろう。Amazonは9月にKindleの基本モデルの価格を引き下げ、Barnes & Nobleの端末よりも安価なタッチスクリーン対応の電子書籍リーダーを発表している。

 Barnes & Nobleは7日、NOOK Colorの価格を249ドルから199ドルに引き下げた。ただし、このことでNOOK端末同士の共食いが起きる危険性も高まっている。

 さらにBarnes & NobleはAmazonの競合製品の価格に合わせ、タッチスクリーン対応の NOOK Simple Touchの価格を139ドルから99ドルに引き下げている。

 「NOOK Colorが199ドルに値下げされたことで、この価格帯の端末を探している消費者にとって、NOOK ColorはKindle Fireのより直接的で強力な競争相手となる」とNPDのルービン氏は指摘している。ただし同氏によれば、NOOK ColorがNOOK Tabletの売り上げを侵食することになる可能性も考えられるという。

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