2012年1月26日木曜日

〈はじめての青空文庫〉タブレット広まり利用者急増

http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201201240364.html

 インターネット図書館の先駆けとして、15年前に始まった青空文庫。昨年、収録作品が1万点を超えた。折からのタブレット型端末の普及で、利用者も着実に増えている。

■元日の告知

 「あまねく人の上に広がる青空のように、万人が本を共有できたら」。横浜市のライター、富田倫生(みちお)さん(59)ら4人の呼びかけで始まった青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)。毎年元日に、著作権が新たに切れ、収蔵可能になった作家が告知される。今年は童話作家の小川未明ら15人が加わった。

 利用が無償なら、入力や校正もすべてボランティア。これまで編集者や学校の先生など延べ800人が支えてきた。高校のクラスや大学のサークルなど団体で参加する例も。ネットの掲示板やメールでやりとりしているという。

 入力方法は、元の本を見ながら手作業で打ち込むか、スキャナーで読み取って文字ファイルにする方法がほとんどだ。できあがったものをメールで運営サイドに送ると、ファイルが文庫の仕様に合わせた形に変換され、掲載される。

 文庫には、少数だが著作権の保護期間中のものもある。「スローなブギにしてくれ」などの著作がある片岡義男さん(71)の一部作品もそう。入力ボランティアの知人から公開を持ちかけられた片岡さんは「作品を広く読んでもらおうと賛同した」という。

■急増のわけ

 青空文庫はここ数年、アクセスが急増している。なぜだろうか。

 一つは、アップル社の「iPad(アイパッド)」などタブレット型と呼ばれる薄い板状の情報端末が続々と登場したのが理由だ。無料または有料の専用ビューワー(閲覧用ソフト)を導入すれば、画面にタッチしてめくったり、ワンクリックで次ページに進めたりと、紙の本を読む感覚に近づいた。また、図書館や電子書籍販売サイトなど多方面から文庫にリンクが張られるようになったのも大きい。

 青空文庫は現在、テキストファイルとXHTMLファイルの2種類が中心だ。テキストファイルはダウンロードしてワードやメモ帳に貼り付けても読めるし、XHTMLファイルなら「インターネットエクスプローラ」などのウェブブラウザーで、そのまま読める。

■「暗黒」の恐れ

 急成長の青空文庫だが、富田さんは「暗黒時代に突入する可能性がある」と危惧する。かぎを握るのは、著作権だ。

 出版物の場合、日本の著作権は、作者(翻訳ならば翻訳者も)の死後50年で切れて利用は自由になる。ところが、ここにきて環太平洋経済連携協定(TPP)などで、著作権の保護期間を20年延長して70年にできないかという議論がクローズアップされてきた。

 保護期間が延びても「今切れているものについて再延長にはならない」(文化庁)が、仮に来年から延びるとすれば、新たに文庫に仲間入りする作家が2033年まで途絶える。ゲーム機の文学全集ソフトや視覚障害者のための点訳など文庫の二次利用も制限され、富田さんは「文化の発展にとって大きな損失」と話す。

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