2012年1月19日木曜日

日本の電子書籍普及率が低い3つの理由

http://news.nicovideo.jp/watch/nw180150

 日本でiPadが発売され、“電子書籍元年”ともいわれた2010年。紙の本と電子書籍の同時発売などの話題で盛り上がりを見せたが2011年には、市場が少し落ち着いたかのように感じられた。
 一方、アメリカでは電子書籍端末Kindleが浸透し、amazonでは電子書籍が紙の本の売り上げを上回るなど、電子書籍の普及率の高さをうかがえる。それでは、日本がアメリカに比べて電子書籍の普及率が低いのはなぜなのか。
 ダ・ヴィンチ電子ナビで、電子書籍に関する疑問、質問に答えるITライターのまつもとあつし氏がその理由を分析した。

 まつもとあつし氏によると、日本の電子書籍の普及率が低い理由は3つあげられるという。

1.日本とアメリカで本のパッケージ(文庫の存在や大きさや重さ)が異なる。
2.本が作られるプロセスが異なり、販売価格も異なっている。
3.Kindleが実現しているような利便性がまだ多くの国内電子書店では実現されていない。

 まず、1に関しては「日本には新書とか文庫というとても持ち歩きに適した本のフォーマットがあります。北米ではそうではなくて、本は大きくて重いものという捉え方が一般的のようです。もちろん一応ペーパーバックという種類の本はありますが、かなり質の悪い紙を使っていて、しかも分厚いので、お世辞にも読みやすいとは言えません。そんな環境なので、Kindleの薄さと軽さは“紙の本では得られない”メリットとして強いインパクトがあったはずです」と話す。
   
 さらに、Kindleで本を買えば内蔵された通信機能で本が配信されるので本屋さんに行く必要がないが、そもそも日本は世界的にみても書店の数がとても多い。手間がかかるくらいなら、最寄りの駅の本屋さんで手軽に本を買った方が早くて楽だ、というのは現状、合理的な考え方だといえる。

 続いて2に関しては本が作られる過程が日本とアメリカでは大きく異なる点がポイントになる。
「日本では、出版社が著者に原稿を書いてもらって、原稿料を払い、書店に本を流通させる「取次」と呼ばれる会社に本を納入します。その際、まず取次会社から出版社にお金が支払われるんですね。
 対して、北米では、“エージェント”と呼ばれる専門家が著者と契約して本を書いてもらい、出版社と交渉して本を世に出していきます。交渉の過程で販売方法や販売数が練り込まれますし、出版社もリスクをできるだけ小さくするため、マーケティングに工夫を凝らします。

 個人的には日本も少しずつ北米型に移行していくと考えていますが、少なくとも現時点では、紙の本に比べるとリスクが高くなってしまっている電子書籍にどうしても二の足を踏んでしまう会社も多いのも事実です。電子書籍元年と呼ばれた2010年に、電子書籍部門を立ち上げたところも、2011年はまずは、試しにアプリを作ったり、数多く生まれた電子書店に一部の作品を提供して売れ行きを試したり――という形で石橋を叩きながら進んだというのが実態ではないでしょうか?」

 最後に3番目の理由についてはこう話す。
「Kindleがすごいのは、Kindle専用端末だけじゃなく、パソコン、スマホ、タブレットなどいろんなデバイス用のアプリを用意していて、“一度買えば、どの端末でも読むことができる”“どこまで読んだか、どこに下線を引いたか”といった読書情報が同期されるところなんですね。あくまでKindleで買った本に限られますが、自炊したPDFと同じかそれ以上の使い勝手が実現されています」

一方日本の電子書籍は「ある程度、いろんな電子書店で電子書籍アプリを買っていくと、何をどこで買ったのかわからなくなってしまったり、機種変更の際買った電子書籍がどうなるのか、という不安もユーザーの側には出てくると思います。App Storeで買った電子書籍アプリの多くは、たとえばAndroidタブレットには移行できません(ただし、紀伊國屋書店のKinoppy、角川書店のBOOK☆WALKERなどのように移行のための仕組みを備える電子書店も増え始めている)」などの改善点を抱えている。

(ダ・ヴィンチ電子ナビ 「まつもとあつしのそれゆけ!電子書籍」より)

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