2011年5月27日金曜日

アマゾンがあっという間に「電子書籍出版社」になった

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110527/1032054/
アマゾンの「出版社」化が進んでいる。
 書籍や日用品を売るアマゾンは、最近メキメキと電子書籍分野の可能性を開拓している。その結果、今や「電子書籍の出版社」と呼べるくらいにまで、その姿を発展させてしまった。あっという間のできごとである。
 ことの始まりは、Kindle Direct Publishingという自費出版のシステムだった。これは、著者が自著の電子ファイルをアップロードすれば、そのままKindle用電子書籍としてアマゾンの店頭に並ぶというスピーディーな出版方法。出版社もいらなければ、印刷所も配送会社も路面の書店もなしに、いきなり自著が世間に向けてお目見えするという仕組みである。中身と表紙のデータさえあれば、ものの20分くらいで出版できてしまう。
 作家志望や主張の強い人々が多いアメリカのこと、以前から自著を出したくて仕方がなかったが、出版社に受け入れてもらえず悶々としていた人々はたくさんいる。彼らが今、ここへ一気に集まっている。アマゾンのほかにも、こうした自費出版プラットフォームがいくつもできていて、自慢のレシピで料理本を作ったり、自分で撮影した写真集を出したりして、楽しんでいる人々も多い。
 さて、アマゾンは、そのプラットフォームを名の知れた作家のためにも提供し始めた。
 実は作家にとっては、従来の出版社経由で電子書籍を出すのと、アマゾンと直接契約して出版するのとでは、収入に雲泥の差が出る。前者では印税がせいぜい20%前後だが、後者ならば70%にもなることがある。そもそもアメリカでは電子書籍の値段がびっくりするほど安いので、出版社経由でやっていたのでは生活が成り立たない。例えば、13ドルの電子書籍だと、1冊売れて作家の手元に入るのは2.6ドル。これがアマゾンだと9.1ドルになる。
 そんな事情があって、現在、作家がパラパラと出版社から離れ始めており、アマゾンがその受け皿になっているというわけだ。
アマゾンはすでに、Amazon Publishingと銘打って、傘下に5つの出版ブランドを抱えている。新しい作家を発掘する「AmazonEncore(アマゾン アンコール)」、ロマンス本ばかりを集めた「Montlake Romance(モントレイク ロマンス)」、スリラーやミステリー専門の「Thomas&Mercer(トーマス&マーサー)」、海外作品を紹介する「AmazonCrossing(アマゾン クロッシング)」、そしてビジネス書の著者として知られるセス・ゴーディンとのジョイントベンチャーである「The Domino Project(ドミノ・プロジェクト)」である。
Amazon PublishingのWebサイト
 ドミノ・プロジェクトは、ゴーディンがディレクターになり、仕事や生活のアイデアになるような小冊子をたくさん出版するものらしい。ゴーディン以外にも、さまざまな著者がかかわる予定だ。
 電子書籍が中心である一方、どうしても紙で読みたいとなれば、ペーパーバックも注文できる。最近は小ロットの印刷に対応する業者も多く出てきており、そうした業者が「カンバン方式」のように、注文があるごとに機械を動かして対応しているのだろう。オンデマンド印刷と呼ばれるものだ。そのあたりもこれまでの出版社のやり方と違って臨機応変、フレキシブル。電子書籍の強みを大いに利用している感じだ。
 電子書籍時代になって変わるものはいろいろあるが、このアマゾンの出版社化は、出版業界の構造を根底から揺るがしかねない。そんな予感がするのである。

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