2011年10月11日火曜日

電子書籍アプリ開発者は要注目、米FacebookがHTML5 Webアプリ販売インフラをiOS向けに正式稼働

http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=2785


SNS最大手のFacebook社(本社:米国カリフォルニア州)は現地時間の10月10日、同社が会員ユーザー向けに公開しているiPhone版アプリを大幅アップグレードし、iPadにも対応した。

今回Version 4.0として公開されたこのiPhone/iPad版「Facebook」アプリでは、ここ半年ほどサードパーティ開発者たちの間で噂されていたHTML5アプリ配信サービス(コード名:Project Spartan)に対応。これにより、ゲームなどのアプリデベロッパーや一般のWebデザイナーが、iOS版Facebookユーザー向けに自作のHTML5アプリを配信・販売できるようになる。ただし課金システムは、Apple社の規約により、Facebook独自の「Facebook Credits」ではなく、Apple社のInApp課金を使う必要がある模様。

なお、すでに「Magic Land: Island」「Huffington Post」など一部のHTML5アプリが検索で引っかかるようになっている。さらにFacebook社では、Apple社への配慮から、HTML5形式アプリだけでなく既存のネイティブiOSアプリ(iTunes App Store上で販売されるアプリ)へリダイレクト誘導する機能も提供している模様だ。

ビューワ開発者から見た、電子書籍業界のいま 電子書籍覆面座談会

http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1110/06/news006_1.html

電子書籍において、ビューワの操作性が読書体験に及ぼす影響は大きい。ユーザーとコンテンツの出会いを演出するのがビューワ開発者の力量だ。本企画では、電子書籍ビューワの開発者に集まっていただき、覆面座談会という形で電子書籍市場の今を聞いた。

2人の開発者が電子書籍ビューワ開発の苦労や葛藤を明らかに

電子書籍にまつわるさまざまな課題点が指摘される中で、コンテンツの内容に次いで言及される機会が多いのが「ビューワの操作性」。操作の分かりやすさ、カスタマイズ性など、ビューワの使い勝手がそのまま電子書籍という媒体の評価につながることも少なくない。

ビューワ開発者からすると、世代やリテラシーを問わない実装や、キャリア側が要求する仕様との兼ね合い、さらにiOSやAndroidといったプラットフォームの仕様に依存する制限など、さまざまな葛藤があることだろう。こうした点について、国産の電子書籍ビューワの開発者お二人に覆面座談会という形で事情を伺った。

一人は、ケータイキャリアを中心に採用されている著名な電子書籍ビューワの開発者「T氏」、もう一人は、iOSやAndroid向けに電子書籍ビューワアプリを開発する「X氏」だ。それでは早速ご覧いただこう。ビューワの設計思想、デバイスやターゲットユーザーに応じた設計の違い、さらに各キャリアや出版社との日ごろのやりとりなど、ビューワ開発者から見た電子書籍業界を。

ビューワ開発者かく語りき

―― 今日はよろしくお願いします。まずはお二人の自己紹介からお願いできますか。

T もともとはガラケー向けのビューワの開発をやっていまして、その後Android向けのビューワの開発を手掛けるようになりました。最初は様子見でガラケーの移植版から始めたのですが、世の中の携帯がAndroidに急速に移行しているのと、Android自身のバージョンアップの速さもあり、順次ビューワの機能追加、および各種サービス事業者向けへの展開をしています。

―― いまはAndroidの案件が中心ですか。

T そうですね。自社のソリューションをカスタマイズしてキャリアさんに出すという形です。ガラケーはもう何年もやっていますが、今後販売台数が減っていくのは間違いないので、ビジネスとしてAndroid向けに注力していかなくちゃいけないというところです。

―― Xさんは、最初はiOS向けにビューワをリリースし、その後Android向けにも展開されていますよね。

X はい。ここ数年でネットワーク周りの状況がいろいろ変化し、そこに追いつこうとしている間に、どんどん変わっていったというのが実情ですね。

ユーザーの感覚が落ち着くまでもう2~3年掛かる

―― 今、お二人が開発されているビューワも含めて、世間にはさまざまなビューワがありますが、インタフェースや挙動はバラバラです。例えば画面の右側をタップしたときに、ページが進むものもあれば戻るものもあったり、タップにすら反応しなかったり。お二人はこうした部分の設計をどう決めてらっしゃるんですか。

X 今は何がいいかという正解がありませんし、みんな「どうしたらいいんだろう」といいながらあがいている、そういう時期だと思うんですよ。「こういうのが常識だろう」というユーザーの感覚が落ち着くのにもう2~3年掛かると思うので、その過渡期といったところでしょうね。

T 出版社と話をしていると、最初は「このページめくりのエフェクトはいいね」となるんですが、しばらくして「すいません、やっぱり飽きました。やめときましょう」みたいな展開になることが多いですね。出版社の方はどうしても紙の本のイメージを前提にめくりの話をされますが、慣れてくるとやっぱり邪魔なんですよね。

―― ビューワを開発されるとき、そういった仕様は、出版社からの依頼で決めるのか、それともご自身でいろいろ調べて実装していくんでしょうか。

T まずはOSの作法に合わせます。iPhoneとAndroid、ガラケーもそうですが、OSやプラットフォームならではの作法があるので、それを守るのが第一ですね。例えば、Androidだと1.6まではピンチに非対応なので、ピンチ前提で作ってしまうとUIが破たんします。だからやっぱりプラスマイナスボタンを出さなきゃダメだよね、とか。
また、「画面タップでメニューを出す」というiOSアプリによくある操作は、Androidの作法からするとNGなんです。Androidはメニューボタンを押してメニューを出すから、それに合わせてUIを変えなきゃいけない。ただ、たいていの出版社はiPhoneを前提に話をするんですよね。「そこは違う」と伝えるんですが、押し切られることもあって難しいところです。

―― Xさんのビューワは「使われないから機能から省く」ではなく、「設定でオフにする」という方向で対処されていますよね。

X ページめくりの機能が必要か否かという議論でいくと、僕たちではなくユーザーが判断すればいい話だと考えています。先ほどお話ししたように今は過渡期なので、いろいろなやり方を「まずはトライしてみてよ」という意味であえて残しています。設定項目が多すぎるとダメという話もあるので、シンプルにしたいのは山々ですが、これは僕が決める問題ではないかなと。

T Android向けの仕事だと、キャリアやサービス側が絡むので、いろんなビューワベンダーに「これは共通仕様として最低限守ってくれ」と言われてその仕様に合わせざるを得なくなることが多いですね。

―― つまり、ある電子書籍ストアで、見た目は1つのアプリだけど、買ったコンテンツの種類によってアプリに内包されているビューワが立ち上がるようになっているので、それぞれで操作性を統一するよう要求されるという、そういうことですよね。

T そうです。同じストアから買ったコンテンツなのにフォーマットごとに作法がバラバラというのはユーザー視点で考えれば確かに大変なので、これはしょうがないかなと思います。
それと、長い歴史を持つXMDFや.bookにも独自の作法が存在しますが、それをひっくり返されちゃうのも逆にあります。例えば右左をタップしたら進むとか、上下で1行ずつ進むとか、ビューワごとの作法があります。XMDFに至ってはザウルス以来の作法があるので、XMDFを使い慣れた人間からすると、「何でこんなに使い方が違うんだよ」みたいになったりもしますね。さらに最近はタッチ操作などUIの前提条件が変わってきているので、それをどこまで踏襲しつつOSの作法に合わせるかが難しいところです。

iOS、Android、Windows Phone 7……UIの設計はますます困難に

―― iOS向けのビューワアプリだと、設定画面の呼び出し方も、画面中央をタップするタイプもあれば、例えば「理想書店」のように上もしくは下にドラッグしたら出てくるタイプもあったりとバラバラですが、これはAndroidのようなメニューボタンがないから、そうせざるを得ないということなんでしょうか。

T そうです。特に電子書籍のビューワは、とにかく全画面にコンテンツ表示させたいというのがあるので、そうした設計になるんですよね。ほかのアプリだとタイトルバーに置かれたボタンから辿れますけど、全画面でコンテンツを出されちゃうともうどうしようもない。iOS系はもう百花繚乱ですよね。Android端末をメインで触っているわたしなんかがたまに触ると、どうすればいいんだろう? てなっちゃう(笑)。

X 全画面表示で使えるボタンはホームボタンしかないということになると、操作としては完全に詰んでいるんですよね。だから、何か操作方法を考えなくちゃいけなくて、その中で一番単純なのが、真ん中タップだということです。どうしようもないんで、とりあえず何かたたいたら起こる、という範ちゅうで収めるしかないですよね。

T だから、既存の電子書籍ビューワの多くが「タップ=進む」なんですよ。気軽に読み進めたいっていうニーズがあるわけですよね。先ほどの理想書店の場合は、タップにそういう割り当て済みの操作が存在するので、ほかの操作にしなくちゃいけなかったんでしょうね。
画像系のビューワは特にそうですが、フリックのつもりが動いちゃったり、逆だったりすることが多いですね。慣れている人と慣れてない人、はらうスピードが速い人と遅い人がいるので、チューニングが難しいんですよ。最大公約数もありませんし。
また、特に問題になりやすいのが、「タップとロングタップの差」です。スマートフォンに慣れている方は使い分けられるんですけど、そうじゃない方だと震えてしまってうまく押せなかったりで、微調整が大変です。画面サイズにも関係するので、なおさらですね。

X 僕もユーザーからメニューが出ないとか、結構クレームが来ましたね。いったいどんな操作をしているんだろうと。

―― 例えばそれは年齢による違いとか、リテラシーの違いとか、有意な傾向はあるものですか?

T やっぱり年配の方は、ロングタップが難しいようですね。後はユーザーのPC歴。慣れてない人の方が、操作中に手がぶれてしまっている印象はありますね。

X 「母親が操作していたら、操作のたびに何か動くといわれた。これをオフにする機能を付けろ」って言われて、機能を付け足したことがありました。タップしてめくろうと思ったら指が当たったみたいで、ピンチになって拡大になっちゃうから、こんな機能は要らないって言われて。

T サービス提供社側から、この機能は使わないから要らないとか言われることもあります。ありすぎて分からなくなるとか、どうせ使われないとか。確かに、そういうオン/オフの設定を触る人ってあまりいないんですよね。そもそもメニューまでたどり着かなかったりするので。だったら取っ払ってくれと。恐らくサポートが大変なので、できるだけ制限して問い合わせがこないようにしてくれということだと思います。

―― なるほど。サポート絡みの事情ですか。概して、Tさんの場合はITリテラシーが低い人に合わせて仕様の部分で切る、といったところでしょうか。

※写真
Metro UIを採用したWindows Phone 7.5。OS間で異なるUIが開発の障壁に?

T そうですね。Androidだと、OSの作法に合わせるというのも心掛けています。普通にブラウザを触っていれば、OSの作法に慣れてくるはずなので。逆にビューワ側で勝手なことをやってしまうと、「何か違う」って違和感を覚えるはずなんですよ。

―― OS標準の操作に合わせておくことが、ITリテラシーが低い人への対策にもなるということですね。Androidもこれから初心者がどんどん流入してくる可能性が高いわけですけど、そこはもうOSの作法で学んでくれと。

T はい。ただ出版社の方はiPhoneに合わせて話をしてくるので、Androidのユーザーが本格的に使い始めたら、お互い違う意見を言ってくると思うんですよ。今後そこは揉めるかもという懸念はあります。しかも、Windows Phone 7が新しく出てきたじゃないですか。あれはMetro UIというまったく別のUIなので、iOS、Androidと三つ巴になってきたらとてもじゃないですが共通化できないでしょうね。そうした事情が分からない出版社の方の意見は、今後もっと増えるとみています。

ユーザーに「要らない」と言われる機能は、見せ方に問題があるだけかもしれない

―― ビューワの機能で、本全体のどのくらいの割合を読んだかという、既読表示の機能がありますよね。あれなんかはどう思われますか?

T 「あんまり画面にごちゃごちゃ出さないでくれ、うざったいから」ってユーザーから言われちゃうんですよね(笑)。

―― それに敢然と立ち向かっているのがiBooksなんですけど(笑)。先日の漫画家さんの座談会でも話題に上りましたが、iBooksだとページの左右に紙の厚みを示すデザインがあります。こういうのはXさんの設計思想からするとどうでしょう?

X 厚みが変わらないやつですよね(笑)。こうした縁を付けようと思ったら、その分ページの面積を減らさなくちゃならないので、ちょっと違うかなと思います。

※写真
iBooks

T 余白というのは本来、印刷などの都合であって、コンテンツは関係ないですから。もっとフルに見せて、情報量を増やしてくれと思いますね。
そもそも、既読の割合を気にするコンテンツと、気にしないコンテンツがあると思います。長編作品なら「どのくらいまで読んだかな」というのがあるでしょうけど、短編だとあまり気にしなかったり。ガラケーはどこまで見てるか表示できないことも多いのですが、閉じたときにどこまで読んだかページ位置を保存していることもあってか、あまり批判は聞かないですね。特に漫画は1話売りが多いですし。

X 僕は結構ユーザーから言われますね。

T ただ、声の大きい人が大多数というわけじゃないですよね、実際のところ。

X つまり「要らない」と自信を持って言える人と、「要る」と自信を持って言える人、どっちなんだってことですよね。「どっちでもいい」という人と「要る」人だったら、それは「要る」ってこと。「要らない」と「どっちでもいい」なら「要らない」。その考えでいったら、やっぱり「要る」になるんじゃないかなと。

T ただ、「要る」と思ったけど、消してみたら気にならなかったという人もいる(笑)。
X それは「どっちでもいい」人ですよ。問題なのは「要らない」という人の中に、僕ら開発者の見せ方が下手くそだから要らないといっている人が含まれていることなんですよね。「こんなウザいのは要らない」という声、それが怖いんですよ。それさえクリアできればもちろん付けたいですし。どういったアプローチがいいのかは、開発ですごく悩むところです。

―― 例えばシャープのGALAPAGOSだと、ページ番号の表示は文字サイズを変えても変わらないんですよね。最初全部で500ページって表示があったとするじゃないですか。それで、文字サイズを小さくして1ページに収まる文字量が倍になったら250ページに減るはずなのに、500ページのまま変わらない。どうなるかというと、1ページめくるたびにページ番号が1つずつスキップされるという。

X おお、考えましたね。

T XMDFはザウルスのころからやってて、ノウハウはあるはずなんですけどね。どうやって計算してるんだろう。デフォルトのフォントサイズでやってるってことですよね、それって。

―― デフォルトのフォントサイズでページ数をカウントして、大きくなったり小さくなったりしたら、分母を変えずに分子をいじるということですよね。だから考え方としてはパーセンテージに近い。結果として、めくった次も同じページというケースが発生するわけですよね。1、1、1、2、2、2とか。

X 電子教科書になったときに「教科書の何ページを開いて」って言われてページを開けたところ、みんな違うところを開けていたという笑い話がありましたけど、その辺りを考慮した結果かもしれませんね。

―― それにしても、操作性に多少なりとも共通項のあるページめくりに比べて、既読位置の表示方法はバラバラですよね。デジタルコミックに至ってはコマ単位表示でページという概念もないわけですし。

T そうですね。デジタルコミックではしおりを保存したときや、目次のところに「何コマ目」というのを表示していますね。コマ系だったら何コマ目、ページ系だったら何ページ目というように。

―― なるほど。「何コマ目」なんですよね。そう考えても、ページングで考えられているものとは作り方がまったく異なりますね。

「書庫に保存したい」「買ったらすぐ読みたい」、相反する2つの需要

※写真
写真はezPDFreader(Android版)。画面下部に各ページのサムネイルを表示していることが分かる

―― 最近のビューワのトレンドとして、画面下部に各ページのサムネイルを表示できるというのがありますよね。国内でもそうですし、海外のPDFビューワ、例えばezPDFreaderにもあります。読み込みが遅いのが残念なんですが。

X 読み込みの遅さは、デバイスのハードウェアスペックが高くないので、どうしても出てきます。でもそれは過渡期ゆえのことであって、もう1~2年もしたら解決するんじゃないかと。CPUを2~3個に増やせば済みますから(笑)。

T ヤッパのビューワなんかは、ページをめくったら必ず全体表示するので、それ用に低い解像度の画像を用意していて、ペラペラめくる分にはかなり高速です。キャッシュもしているようですし、そこが1つの売りですよね。頻繁に拡大するユースケースが多いから、そうなっているんでしょうね、恐らく。

―― ガラケーでも、スペック依存の問題はありましたか?

T ガラケーは、auだとコンテンツサイズが1.5Mバイトまでという制限があるので、そこに縛られますね。よく「なぜコミックスを話数単位で分割するんだ」といわれるんですが、それは容量制限の問題です。コマ分割は画面サイズの問題で、コンテンツの分割は配信側の問題ということになります。また、スマートフォンでコンテンツサイズの制限が解除になったからといっても、例えば3G回線で50Mバイトのデータを落とすのはきついですからね。
読者からすると「買ったらすぐに読みたい」なんですよ。繰り返して読む方はコンテンツを書棚に残しておきたがるんですけど、読み捨て的な需要も実は多くて、ストリーミングで今すぐ読みたいという相反する需要があったりして、とても難しい問題です。

―― ストリーミングだと、例えばマガストアですね。そういった仕様を最終的に決定しているのは誰なんですか。

T サービス側です。ストリーミングだとダウンロード側よりもDRMを考えなくて済むので、提供する側としては実装が楽なんですよ。DRMを考え出すと、結局出版社がコンテンツを出したくないとか、そういう話も出てくるので。
E Ink採用端末向けには設計に違いも

―― 少し話は変わりますが、電子書籍端末は液晶以外にE Inkを採用した製品もあります。E Ink向けのビューワでは、液晶の場合と設計を変えざるを得ないところがあるそうですね。

T ボタンを押したときの操作性ですね。普通ならボタン押しっぱなしでパッパッとめくるじゃないですか。ところがE Inkは画面の書き替えに時間が掛かるので、表示が間に合わなくてめくれないんですよ。E Inkを採用しているソニーの「Reader」やKDDIの「biblio Leaf SP02」では、液晶の端末と違って、ボタンを押していったん離すことでページがめくられますよね。

―― なるほど。押すだけじゃなくて、押して離さなくちゃいけない。
T ええ、離したときです。だから、押しっぱなしでは連続めくりができません。製品によって多少違いますけど、E Inkはページが切り替わるまで確か0.8秒くらい掛かるので、自然とそうした設計になります。

「デジタルコミックはコマ区切りが標準」という人も実は多い

―― 画面サイズについてはどうでしょう。Tさんだと、これまではガラケー、いまはAndroid中心ということで、サイズの種類も多そうですね。

T そうですね。ガラケーでは多少の大小はありますがだいたい同じ画面サイズで、解像度は基本的にQVGAとWVGAの2種類ですが、スマートフォンになってから、さまざまな画面サイズと解像度のものが登場しています。片手で持てる小さいものから、GALAXY TabやXOOMなどの大きなものもありますし。物理的な画面サイズが違うと、やっぱり世界が変わってきますからね。
基本的には表示倍率を変えて画面に合わせるのですが、何でも無限に拡大すると粗くなりますし、さらにオーサリング時に「最低限この範囲は表示」「最大はここまで」という設定があるのでそれらを基に表示を計算しています。もともとガラケーは、各キャリアごとに標準とするサイズが違います。コンテンツを作る側はそれぞれのサイズ向けに生成する手間は掛けたくありませんから、1つの元データから別々に最終データを作るという概念を導入しているわけです。
出版社の編集の方からは、「ページで作る方が楽なのは分かっているが、ガラケーで漫画を読んでいる人たちは『デジタルコミック』としてその動きに慣れてしまっているので、ページでは売れない」とよく聞きます。つまり、コマ区切りが標準というデジタルコミックならではの動きに慣れている層が一定数いるわけです。だからといって最初からコマ区切りで制作してしまうと、いざ売れたから単行本化しようという段階で困るわけですが(笑)。
―― 今、デジタルコミックは幾つか種類があるじゃないですか。ページ全体を見せるタイプもあれば、ページを拡大しながら右上、左上、右下、左下という逆Zの順序でスクロールするタイプ、完全なコマ単位で横に長ければスクロールするタイプ、だいたいその3パターンですかね。

T そうだと思います。スクロールについては逆Zに限らず、コマに合わせて読む順番をオーサリングできますね。スクロールするスピードも制御できます。

―― こうしたスタイルが出てきたのは2003年前後ということですが、7、8年経ってこのスタイルに慣れたユーザーが増え、漫画の読者の中でも、コマ分割タイプに慣れているユーザーもいれば、1ページ単位で決められたレイアウトがなじむユーザーもいると。

T そうですね。「携帯で見る漫画はこう」みたいな。ガラケーに関しては、9割はコマ形式での配信だそうです。実際に編集者の方に聞くと、「だってコマが売れるんだもん」という(笑)。製作コストが10倍ぐらい違うらしいので、できればコマ形式で配信はしたくないというお話はよく伺います。
実際に使っていても、iPhoneサイズぐらいだと、まだコマ分割タイプの方が見やすいですよね。ページだと頻繁に拡大しなくちゃならないので。GALAXY Tabぐらいの画面サイズになると、まあいいかなという気になるんですけど。

X 元の漫画がどういう形で描かれているかですよね。元からデジタルコミックを前提に制作されているのならともかく、ページング前提で制作されたものを無理やり切り貼りして、バイブのところでブルブルブルっていうのはちょっと。個人的には、ページングで作られたものはそのまま見たいですね。

―― 携帯漫画のバイブ機能、あれは誰がディレクションしてるんですか。

T 出版社によって外注のオーサリング会社に丸投げもあれば編集者がやることもあったりとさまざまなようです。TVアニメを静止画で取り込んで漫画風に見せるコンテンツなどでは、アニメの演出家の方が絵コンテみたいな感じで細かく演出を入れているそうです。

―― その一方で「これ、やっといて」みたいな感じで紙の単行本をポーンと渡されて、自炊みたいな感じで裁断して、後はお任せというパターンもあると。

T あるようですね。聞くところでは、吹き出しが切れているのをくっつけたり、足らないコマを勝手に描き足しちゃうケースもあるそうです。それはちょっとどうかなとは思うんですけど。海外のオーサリング業者に出したらひどいのが返ってきたという話も聞きますね。

EPUB 3はあくまでもフォーマットで、運用フローはまだない

―― 今、EPUB 3という新しい規格が出てこようとしています。お二人はEPUB 3についてどのような見解をお持ちですか?

X EPUB 3はHTMLの拡張でしょ。HTMLの拡張ということは、HTMLを表示しなくてはいけない。HTMLを正確に表示するためには現状WebKitとかのライブラリを使うしかない。
でも、文字を表示して横にルビを打つだけなんて、文字を書ければ出ますよね。そこに対してHTMLのレンダラを持ってきて、CSSのレンダラを持ってきて……となると、初めから書けないくらい実装難度が高いんですよね。オープンソースのソフトウェアを持ってきたらいいと簡単に言う方もいますけど、どうやって使っていいか分からないものを持ってきても、うまくはまるか分かりませんしね。今のビューワをEPUB 3対応させたいとは思いますが、実装するのはコストが高いので悩ましいところですね。

T わたしは直接EPUB 3にはタッチしていませんが、組版をそこまで意識しなきゃいけないのかな、という気はします。それと、あんなに仕様が大盛りだと、果たしてそれに合わせたコンテンツが作れるのかなという。
あと、例えばiBooksは今のEPUB 2でも独自拡張していますよね。だからEPUB 3といっていても、昔のブラウザ問題みたいな、例えばIEだけスクロールバーの色を変えられたりとか、そうなる懸念はありますね。特にEPUB 3はJavaScriptも全部動いちゃうんで、高機能なものを作ろうとすると、挙動もみんな違うし、作るコストも高くなるという。

―― コンテンツについては、紙を前提に制作されたものと、これから増えるであろうボーンデジタルの違いもあるかと思います。例えば漫画なら、既存のものはPDFやZIP圧縮JPEGで見せるとか、あるいはEPUB 3で一手間掛けてコマ単位で切って見せていくかという。それに加えて、今後、何か出てくるかもしれないけど、現時点ではまだ見えてないと。

T そうですね。作り手側もいきなり作れるわけじゃないですからね。EPUB 3はあくまでもフォーマットであって、アウトプットをEPUB 3にする標準的な運用フローはまだないじゃないですか。

X ユーザーにとってはフォーマットなんてどうでもいいですしね。ましてやDRMが掛かっていたらどのフォーマットも無理ですからね(笑)。

T そこがFlashが支持される理由の1つですよね。凝ったものが確実に作れて、しかも実行モジュール込みだからDRMも掛けられる。結局のところ、リッチなコンテンツで作るんだったら、じゃあ、みんな「やわらか戦車」つくるのか、という話になってきますよね。あれは全然違うものじゃないですか。アニメでもない、まあ、パラパラアニメですよね。

X 個人的には、漫画家さんにはそういったものにチャレンジしてもらうのではなく、その時間を使って、好きなように描いてほしいですね。
T 漫画家さんは本を出して初めてまとまった収入になるわけですし、もちろんデジタルコミックがお金になるのならやる人は増えるでしょうけど。何だかんだ言って電子書籍単体で収益を上げている方はそうそういないですしね。

1年でこれだけ変わったら、むしろ十分

―― 最後に、ビューワに限らず、電子書籍界隈で最近気になっていることがあれば。

T これからの新しいサービスですが、楽天の「Raboo」は、すでに楽天市場でECとしての実績がある分、ほかの電子書籍ストアとは違うかなと思います。楽天で買い物しました、楽天スーパーポイントが500ポイントある、じゃあ電子書籍でも買おうかみたいな。配送料も要らないですし、そういう強みがありますよね。

X 僕は、日本に来るといわれていたAmazonやGoogleに何の動きもないのが「まだ来ない」なのか、それともこのままスルーされてしまうのかが気になっています。もしかして、日本という狭い市場に対してコストが合わない、やるだけの価値がないと判断されたのかなと。

T ある会社で電子書籍のコンテンツ制作をやっている人から、彼らから打診があってテストコンテンツを作ったという話は聞きましたね。

X ええ、いろいろなところに打診は行ってるようですが、Goしないというところがやばいのかな、という気がしますね。

T Amazonは流通から課金から何から全部抑えているわけで、普通に考えると出版社がちょこちょこやったところで勝ち目はないので、出版社はあれを使って商売するしかないのかなと思います。特にKindleはマルチプラットフォームでやっていますから、あれに勝つのは難しいですよ。
ただ、日本の出版や流通は複雑で、出版社に話を持って行っても、コンテンツがそろうわけじゃなかったりもしますし。本来は出版権であって著作権ではないはずが、出版社が全部握っている。そういう日本特有の構造があるから「面倒だな」ってなると思うんですよね。

X 出版社としては、黒船が来たので身を潜めて「過ぎ去れ」と思ってるんでしょうけどね。たいていの出版社は電子書籍なんか望んじゃいないですからね。望んじゃいないものはやりたくないですよね。

T いままでの仕組みと違うものになっていくと、既得利権を持つ方はどうしても抵抗しますよね。ある印刷会社は、極端な話、既存の印刷工場などを縮小していきたいらしいんですけど、電子を全面的に推進して人を切れるかというとそうもいかないので、そこはソフトランディングしていくしかないと。

―― なるほど。

T ただ出版自体が下り坂であるのは間違いないので、新たな媒体ができたつもりでやっていくしかないと思います。ある総合書籍ストアは、電子書籍サービス側でユーザー情報を取りながら紙の本と電子書籍で総合的にマネタイズしていくという話をされていて、それはそれで正しいと思いました。
ただ実際は、パブーのような新興勢力がやるか、Amazonのような大きいところがやるか、そのどちらかだと思います。特にAmazonは本屋であると同時にIT企業なので、あそこまでできるという。ただ、どんなにいいサービスを作っても、コンテンツを集めないことには誰も振り向いてくれないので。問題はそこですよね。

X 構図はこれからいろいろ変わってくるでしょうが、いきなり勢力図が変わることはないでしょうし、焦らずもうちょっとゆっくり見ていても構わないんじゃないかなと。「1年たってこれだけしか変わらなかった」ではなく「1年でこれだけ変わったら十分じゃない?」という。紙の印刷を始めて何十年、何百年ってやってきたわけですからね。Amazonだって、いきなりKindleをバーンと売り出したわけじゃなくて、それまでに書籍通販として経験を積んできたからできたわけで。

―― 確かに、総括を急ぎたがっているような感はあります。

T 電子書籍ビジネスって、例えば電子書庫パブリやeBookJapanなどは2000年ぐらいから、パピレスは1995年にサービスインしているわけで、別に去年はじめて出てきたわけじゃないですか。出版社からするとXMDFや.bookでいままで培った運用フローがあるので、当面はそれでモノを出していくしかないんですね。だからこそ角川とかはひとまず.bookでやろうとなったわけで。
要するに今現在、できる運用フローはそれだけなわけです。EPUB 3も研究はしているでしょうが、今すぐ始められる状態じゃないわけで、その辺りが実際に立ち上がるのは来年、再来年といったところではないでしょうか。

―― 今年来年といわず、もう少し長いスパンで見ていく必要があるということですね。今日はありがとうございました。

Kindle Fireの裏側

http://www.ebook2forum.com/members/2011/10/business-model-behind-kindle-fire/

アマゾンの新製品発表(9/28)に関して、同社のKindle事業担当デイブ・リム(Dave Limp)副社長(写真=下)がシアトル・タイムズ紙に行っていたインタビューには、Kindle Fireに関して注目に値する論点が含まれていた。たとえば、$199という価格は「出血価格」ではない、EPUBはサポートしていない、OSは「Gingerbread (2.3)ベースのHoneycomb (3.0)変種」、iPadとは競合しない、Netflixアプリを搭載していること、などだ。アプリ内決済の問題など、iPadとの比較上問題となることは順次明らかにされていくだろう。


デバイスでもサービスでも利益を上げる
Fireの原価についてはiSuppliが部品ベースで約199ドルという推定を発表し、赤字はほぼ確実と思われているが、リムVPは、「それは私たちのビジネス観とは違う」と否定し、「デバイスでもサービスでも利益を上げ、それを持続可能にすることが株主に対する責任でもある。」とした。慎重な答えだが、これは
•採算ラインをかなり高く設定し(たとえば100万~200万台)
•台湾メーカーからの調達価格を他より安く抑えた
ことを意味しているものと考えられる。100万台以上をコミットすれば、部品ベースで100ドルに近いものとすることも不可能ではない。部品の中で最も高いのは液晶パネルとメモリだが、Fireのメモリは2GBと最低水準だ。2007年12月発売の初代Kindleでも利益は確保していたと考えられている。

「Gingerbread (2.3)ベースのHoneycomb (3.0)変種」
この表現は、オープンソースのAndroidを独自に拡張し、Googleがソースコードを公開していないHoneycomb相当品を開発したことを意味している。最新版ではないが、現在のAndroidアプリのほとんどが使用可能だ。リム氏も互換性を重視していると述べている。これは次のことを意味する。
•Googleのライセンス(統制)は受けず、互換性はアマゾンが保証する
•アプリ開発者はAndroidの開発環境をそのまま利用することが出来る
この「付かず離れず」というスタンスは、まだ成長途上のAndroid Marketに大きな影響を与える。膨大な顧客を擁するアマゾンの引力は大きく、開発者はGoogleよりもアマゾンを見て開発するようになる。それに、開発者はiPad (iOS)と同時に開発しなければならないから、Androidの方言には付き合いたくない。両手10本指(iOS)、片手2本指(Kindle)というタッチスクリーンの操作性の違いに対応するだけでも簡単ではない。

EPUBはサポートしない:外部環境・ファイルへの対応
外部ポートはUSB (とヘッドフォン端子)しかないが、という質問にリム氏は、Kindleと同様、Fireの外部接続はすべてUSBを通じて行うことを明らかにした。PCやMacと接続するとフォルダーが立ち上がり、他で購入したDRMなしのコンテンツ(たとえばiTunesの音楽ソース)をドラグ&ドロップで移せばFireで再生することが出来る。これはローカルだけでなく、クラウドでも対応する。他のデバイスのMP3音源や画像はこうして保存・利用することも想定されているようだ。

ではE-Bookはどうか。「EPUBはサポートするのか」という質問に、リム氏は「当社はサポートしない。」と答えた。これでアマゾンがEPUBをサポートするのではという観測は否定されたことになる。その代わり、デスクトップ級の強力なPDFエンジンを搭載し、書籍・雑誌に対応する。これを解釈すれば、アマゾンの認識は次のようなことであろう。
•今後ともEPUBファイルを受け入れ、自社でKindleコンテンツ化する
•商業的コンテンツは、ほとんどすべてがKindle対応になっている
•EPUB仕様は、実用上問題のない範囲でKindleフォーマットに吸収可能

周知のように、EPUB仕様はHTML5/CSS3を土台としたEPUB3に移行しつつある。通常の欧文書籍に関する限り、EPUB2とKindleが使っているMobiの違いは僅かで変換も可能だが、たとえば日本語組版を含めたEPUB3をサポートするとなると、Mobiもそれに対応した拡張を実装する必要がある。アマゾンはEPUB3対応の実装をすでに行っている可能性が高い。つまり、Acrobat PDFではない独自のPDFビューワでいくPDFの場合と同様、EPUB 3対応のエンジンをを開発してサポートするということだ。

出版社にとっては実質的な影響はない。アマゾンの独自仕様を気にする必要もないだろう。つまりアマゾンの独自フォーマットは、著者・出版社・読者がいちばん気にする文書構造の記述と表現に関することではなく、独自のWhisper Syncや図書館からの借り出し、DRM認証、SNSなど、もっぱらサービス・インタフェースに関連するものなのだ。アマゾンのロックインの仕掛けは巧妙だ。

アプリ開発者への条件提示は近日発表
Kindle FireとiPadの違いは、iPadがPCを代替することも可能な全方位タブレットであるのに対して、Fireはもっぱらメディア・コンテンツの消費に特化しているということだ。リム氏はそれが$500と$200という価格の違いでもあり、「おそらく比較の対象にはならない」と述べている。もちろん、額面どおりに受け取る必要はない。Fireは現在のiPadの用途の大半をカバーしているからだ。Fireはフルブラウザとメールソフトを搭載し、メールソフトではWordとExcelファイルを読むことが出来る(PowerPointは不明)。
外部のネットサービスとの関係では、Netflix、Pandora、Facebook、Twitterに関してはアプリの搭載で合意した、としているがその他については近日中に明らかにされるという。つまり有償サービスを受け入れる場合には売上の一部をシェアするのだが条件はまだ提示されていない。アップルiOSでのアプリ内決済を経験したアマゾンが、どんな条件を提案するかが注目される。

2011年10月7日金曜日

EPUB採用の電子書籍サービス「Yahoo!ブックストア」年内開始へ

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/ceatec2011/20111007_482445.html

ヤフー株式会社は7日、自社の最新サービスを紹介するカンファレンス「Yahoo! JAPAN Day」を「CEATEC JAPAN 2011」の会場で開催した。その中で、電子書籍配信サービス「Yahoo!ブックストア」を2011年中にもスタートさせることが表明された。フォーマットとしてEPUBを全面的に採用。2012年4月には、オンラインストレージサービス「Yahoo!ボックス」を活用したクラウド型の書庫機能も提供する計画。

● 「Yahoo!コミック」を総合電子書籍販売ストアへリニューアル

電子書籍配信サービスについて講演を行ったのは、ヤフー株式会社の高田正行氏(R&D統括本部 フロントエンド開発2本部 開発1部 部長)。現在の電子書籍市場については「昨年ごろから『電子書籍元年』と言われ続けているが、現在もリクープ(費用回収)しきれていないというか、大成功している事業者は少ない」と分析する。

その理由については、作品の品揃え、サービスの仕様などが一般に課題として挙げられるが、電子書籍を閲覧するために必要なスマートフォンやタブレットの市場規模が現時点で2000万台に達していない点が重要ではないかと高田氏らは分析する。「2000万」という数字は、関連する商品の市場が成立するために必要な「マジックナンバー」なのだという。

高田氏は「スマートフォンやタブレットが1000万台を超えはしたものの、PCの普及の実績を鑑みると、やはり2000万台がリクープラインになると思う」と解説。今年末から来春にかけて2000万台達成が見込まれることから、事業展開上でのスケールメリットは拡大するとした。

また、ヤフーでは、紙製の書籍を電子化した「電子書籍」だけでなく、各種のコンテンツ配信サービスを「電子出版」と捉えている。マスコミから提供を受けたニュースをウェブに最適化した上で配信する「Yahoo!ニュース」、著名雑誌の記事が一部読める「X BRAND」なども、ある意味において「ブラウザーで閲覧する電子書籍」と定義。さらに、いわゆる電子書籍型の漫画配信サービスである「Yahoo!コミック」や、「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!オークション」での紙版書籍の流通も電子出版の一形態とすることで、各サービス間の相乗効果を高める方針を従来から示している。

Yahoo!ブックストアは、この既存電子出版サービスの1つであるYahoo!コミックをリニューアルする形式でスタートさせる。これまでは漫画のインターネット配信専門だったが、その他のカテゴリーの取り扱いを開始。総合電子書籍販売ストアへと発展させる。当初はスマートフォン、タブレット、PCからの閲覧を想定する。

リニューアルは年内にも実施する予定という。なお、Yahoo!コミックはすでに約8年に渡って運営。累積利用者数は約300万人としている。

● 「Yahoo!コミック」を総合電子書籍販売ストアへリニューアル

Yahoo!ブックストアの開設にあたっては、サービスの基本理念にあたる「電子書籍3原則」を消費者向け・出版社向けにそれぞれ制定した。

まず消費者向けには「すべての本を探せる、買える」「マルチデバイスで読める、所有できる」「ソーシャル連携で感動が深まる、繋がる」の3つを標榜。高田氏は「“オープン”を第一にするということ。端末も、フォーマットもオープンにしていく」と、そのオープン性を特に強調した。

対して、Yahoo!ブックストアで電子書籍を販売する業者、つまり出版社向けには「販売価格や期間を自由に設定できる」「課金のみならず、広告モデルも選択できる」「国内外を問わず同じプラットフォームで販売できる」の3つを示した。

高田氏は「Yahoo!ブックストアは、ヤフー自らが本を編集したり独自に値付けして販売するサービスではない。本が購入しやすい場所を提供するが、あくまでも(販売の)主体となるのは出版社や、コンテンツの権利を保持する会社。形態としては、Yahoo!ショッピングやYahoo!オークションを思い浮かべていただくとわかりやすいだろう」と説明。販売業者と消費者を取り持つプラットフォーム役に徹する方向性を示した。さらに、単なる書籍の販売だけに止めず、ヤフーの強みである検索、広告との連動はもちろん、海外市場への展開なども模索していく。

 Yahoo!ブックストアはオープン性の高さを標榜することから、書籍のフォーマットにはEPUBを全面的に採用する。「(オープンな仕様である)HTMLを使ってウェブでサービスを展開してきた我々としては、HTMLにより近しい(EPUBという)フォーマットでやっていきたい」と説明する。

 その技術仕様が完全には確定していないEPUBだが、Yahoo!コミックではすでに相当の利用実績があるという。「実は今年3月から、部分的にEPUBを導入している。国内の商用運用実績はナンバーワンだろう」と、高田氏は胸を張る。

 具体的な例としては、東日本大震災発生直後、集英社が実施した「週刊少年ジャンプ」のネット向け無料配信がある。このフォーマットにEPUBが採用されており、アクセスの集中を踏まえた運用実績もすでに積んだ。また、EPUBによる有料配信作品もすでに600点程度ラインナップ。EPUBビューアー自体の提供も行っている。

 出版社向けには、EPUBによるコンテンツ作成のコンサルティングも計画。高田氏は「EPUB 3.0が先般策定され、縦書きやルビといった日本ならではの出版表現も再現できる可能性が高まってきた。ただ、我々が勝手にフォーマットを決めるのではなく、出版社とも十分協議し、最適な、一度作ればずっと使えるフォーマットを提案していきたい」とも説明。柔軟な対応方針を見せた。このほか、人気コンテンツの品揃えに注力する姿勢も示している。

● 1つのIDで複数端末に対応、「クラウド書庫」も
 
国内最大手ポータルサイトを持つ強みを生かし、電子書籍販売サイト以外でのプロモーションがワンストップで行えるようにする。「Yahoo! JAPAN」トップページでの露出はもちろん、動画サイトの「GyaO!」で関連動画を配信したり、同様に「Yahoo!モバゲー」でゲームを配信するなど、多面的な販売促進策がとれると高田氏はアピールした。

 サービスの細かな仕様面では、まず「Yahoo! JAPAN ID」1つで複数の端末から閲覧できるようになる予定。割引プラン、ポイント、プレミアム会員向け特典なども制度として導入されるという。また、コンテンツの配信形態についても、ダウンロード型の買い切り(売り切り)だけでなく、ストリーミングによる期間限定提供なども可能。

 Yahoo!ブックストア年内開始後のマイルストーンも示された。まず来年1月ごろに縦書き対応を予定している。高田氏は「現状でも縦書きは可能だが、クオリティ的に納得できていない。出版社とも協力して、何とか来年頭には実現させたい」と語る。同時に、外部サービスとの連携機能も追加する予定。外部電子書籍ストアの作品をYahoo!ブックストアで検索・購入できるようになる見込みという。

 続いて3月には、ソーシャル連携機能の追加、複雑な組版書籍への対応も実施。さらに4月には、近く開始予定のオンラインストレージサービス「Yahoo!ボックス」とも連動させた「クラウド書庫」の提供を計画している。

 壇上では、実機を使ったデモンストレーションこそ行われなかったが、高田氏は「リニューアルを正式発表できる段階で、また改めてサービスの詳細を説明したい」と予告。講演を締めくくった。

2011年10月6日木曜日

2011年10月4日火曜日

iPad追撃へ燃えるキンドル・ファイア

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/111003/mcb1110030502013-n1.htm

■成功の絶対条件はコンテンツ戦略

 世界中のPCメーカーがこぞってタブレット型端末を生み出そうと試みてきた。しかし、これらの端末は消費者が一番求めていたある物を欠いていたため、成功には至らなかった。コンテンツがなかったのだ。

 だが、先週その全貌が明らかになったアマゾンのキンドル・ファイアは、それら敗者を尻目に成功を遂げるだろう。タブレット型端末を世に送り出すよりもずっと前から、アマゾンはコンテンツの獲得に力を注いできたからだ。

 多くの解説者が「果たしてファイアはアップルのiPad(アイパッド)に対抗できるだろうか」との視点から分析を加えているが、私はこの2つの端末が競い合うことにはならないと考えている。少なくとも、現時点では。

◆抜けて2社が優位

 なぜなら、現状の未成熟の市場では、タブレット型端末において本当のユーザー体験を提供できるアマゾンとアップルの2社だけが他社に比べて優位に立っており、それぞれがお互いの売り上げを奪い合う構図にはならないからだ。

 キンドル・ファイアの価格は199ドル(約1万5300円)。単なる好奇心からでも多くの人が購入を検討する手ごろな価格だ。もしかしたら、私がかつて経験したように、iPadとキンドル端末の両方を購入するかもしれない。

 長期的に見れば、2年後にアップルとアマゾンが互いに商売敵となって競争をし始めたときに、消費者の選択はいかにコンテンツが手に入りやすいかにかかってくる。今のところ、アマゾンはアップルに対して競争優位にある。これまでに、アマゾン上でコンテンツ製作者の商品を販売することによってコンテンツ製作者との取引関係をすでに築いているからだ。

この市場にとってもう一つ重要な要素となるのがユーザー体験だが、ここではアップルに軍配が上がるだろう。アップルはそのオペレーティングシステムと、システム上で使えるアプリを完全に管理できているからだ。それに対し、アマゾンは、グーグルのアンドロイドをオペレーティングシステムとして採用し、アプリにも一貫性がない。ユーザーにとっては頼りなく感じられるだろう。ただ、アマゾンの名誉のためにいえば、この新しいキンドル・ファイアにおいて彼らはユーザー体験の改善に最大限の努力を行った。

 タブレット型端末市場はいまだ若く、発展途上にある。タブレットPCなるものが出てきてからすでに10年ほどたつが、アップルがiTunesを通じたコンテンツ配信と、シンプルで調和のとれたユーザー体験を組み合わせて初めてこの市場が生まれたと言ってよい。コンテンツとユーザー体験、これが違いを生むのだ。覚えているだろう、さえない音楽機器が山のようにあった中で、アップルが初めてiTunesとiPodを組み合わせて独り勝ちしたことを。

 米ヒューレット・パッカード(HP)や、ブラックベリーを製造するカナダのRIM、そしてその他たくさんのハードウエアメーカーが競争力のあるハードウエア機器を作ろうと試みてきた。しかし、これらは10年前のタブレットPCとさして変わるところもないハードウエア機器にすぎないのである。コンテンツとアプリを欠いたタブレット型端末は、高価なウェブブラウザにしかならない。

 HPもRIMも、その他のハードウエアメーカーとともにこの市場から退散しようとしている。消費者は、「コンテンツはないが、動作の速い機器」には興味がない。初期のキンドルが、パワーが欠けていたにもかかわらずアメリカやヨーロッパで成功を収めることができた理由はここにある。アマゾンは大量のコンテンツを用意していたのだ。

 ◆年月かけ取引契約

 先週ニューヨークに滞在していた私は、キンドルやiPad片手に地下鉄に乗る人を何百人も見かけた。彼らがこれらの端末を何に使っていたか。皆一様に、何らかのコンテンツを読んだり見たりしていた。コンテンツのない機器は、地下鉄テストに落第してしまうだろう。この大切な鍵となる要素が、アップルとアマゾン以外のどのタブレット型端末にも欠けている。

 アマゾンのCEO(最高経営責任者)であるジェフ・ベゾスはこうしたコンテンツの価値を深く理解し、キンドル・ファイア発売のはるか前から、何年もかけて映画や音楽スタジオとコンテンツ取引契約を交わすために交渉を続けてきた。このプロセスは複雑で、ほとんどのハードウエア会社はやりたくもないだろうし、実際に着手もできないだろう。

 例えば、キンドルは日本市場ではまだ販売されていない商品だが、アマゾンは日本の消費者にも良い体験を提供したいと考え、すでに最低3年は日本で書籍の版権をめぐる交渉に取り組んできた。もちろん、映画や音楽コンテンツについても同じである。

 デジタルコンテンツビジネスに長年携わってきた者として私が言えるのは、コンテンツ獲得は簡単な仕事ではないということだ。なぜなら、大規模なコンテンツ保有者は、新しい機器によってもたらされ得る潜在的で長期的な収入増よりも、四半期あたりの収益率をより高めたいと考えがちだからだ。それでも、アマゾンは、タブレット型端末を成功に導くには、キンドルがハードウエア・プラットホームではなく、コンテンツ・プラットホームでなければならないことを理解している。

アマゾンはこの1つの目的に集中し、世界中のあらゆるタイプの出版社からデジタルコンテンツ契約を取りつけてきた。それに加えて、彼らはすでに大規模なユーザー基盤を抱えており、このユーザーたちをデジタルコンテンツの顧客に変貌させることは難しくない。これらすべてを考慮すると、ファイアの成功の道筋が見えてくる。

 ◆対抗ならグーグル

 ただひとつ、アマゾンやアップルにこの市場で対抗できる会社があるとするならば、それはグーグルだろう。もし、彼らがモバイル機器による決済ビジネスの拡大に成功し、その決済プラットホームにもっと多くのユーザーをひきつけることができれば、グーグルにとってデジタルコンテンツ分野へのビジネス展開は最良のプランになる。グーグルには、ビデオコンテンツ・プラットホームとしてはユーチューブが、そして書籍、雑誌、新聞といったその他のコンテンツのためにはアンドロイドアプリがあるのだ。

 グーグルがこれらを組み合わせて実際に始動させるまでは、アマゾンのキンドル・ファイアとアップルのiPadが、古びた馬車ばかり目につくこの世界にたった2台ある自動車として走り続けるだろう。

2011年10月3日月曜日

書籍“自炊”代行、「今後もサービス継続」は4.7% 出版社と作家の質問書に書籍スキャン事業者が回答

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20111003_481348.html

書籍の裁断やスキャンを行う、いわゆる“自炊”を代行する事業者98社に対して、サービスの存続意志などを尋ねる質問書を送付していた出版社7社と作家122人は9月30日、事業者からの回答を公開した。それによれば、質問書の差出人に名を連ねる出版社と作家の書籍について、今後はスキャンを行わない姿勢を示す回答が大部分を占めたという。

 講談社、角川書店、集英社、小学館、光文社、新潮社、文藝春秋の7社と作家122人は9月5日、自炊代行業務が複製権侵害にあたると指摘した上で、今後もサービスを継続するかなどについて、9月16日までに回答を求めていた。質問書は87社に届き、うち43社が回答した。

 その結果、「今後も依頼があればスキャン事業を行う」という回答は2社(4.7%)にとどまった。「差出人作家の作品について、今後スキャン事業を行わない」という回答や、事業の終了方針を記載したりサイトを閉鎖した事業者も合計37社(86.0%)に上った。無記載は4社(9.3%)で、質問書に返信しないままサイトを閉鎖・停止する事業者も数社確認された。

 また、スキャン事業の発注を受け付ける際に、依頼者が実際に私的使用を目的としているかどうかを確認しているかという質問に対しては、「特に確認していない」という回答が2社(4.7%)、「依頼者に私的使用目的であると申告させている」が14社(32.6%)、「上記以外の方法で確認」が19社(44.2%)、無記載が8社(18.6%)だった。

 なお、「上記以外の方法」の具体的な記載としては、すべて依頼者に私的使用目的である旨を画面上で確認・同意してもらうという趣旨のものであり、「依頼者の自己申告」以外の回答は見いだせなかったとしている。

 このほか、法人からの発注に応じているかどうかについては、「応じている」という回答が6社(14.0%)、「応じていない」が26社(60.5%)、無記載が11社(25.6%)だった。

 質問書への回答について出版社7社と作家122人は、「対象書籍のスキャン事業を行わない姿勢を示した回答が大部分だったことは評価できる」とコメント。その一方で、一部の事業者は今回の通知が「拒否リスト」であるとして、質問書の差出人となった作家と出版社の書籍以外は、著作権者の許諾がなくともスキャン事業を継続できるかのような発言が見られたことを挙げ、「通知書の趣旨と現行著作権法を曲解するもの」と非難している。

 今後は、未回答の事業者を含めて状況を注視し、特に悪質と判断した事業者については法的措置を含めて弁護団と対応を検討していくという。