2011年7月26日火曜日

電子書籍ビジネス拡大するGoogle 「Book Search訴訟」は振り出しへ?

http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/column/infostand/20110725_462927.html


多方面に展開しているGoogleが、重要分野の一つである電子書籍でも活発な動きを見せている。同社の電子書籍配信サービス「Google eBooks」を統合した初の電子書籍デバイスが発売となり、人気シリーズ「ハリー・ポッター」の電子版も獲得した。先行するAmazonに本格的に挑むのだが、一方で、電子書籍戦略の中核である書籍全文検索プロジェクトの行く手には暗雲が広がっている。

初のGoogleサービス統合電子書籍リーダー

Googleは7月12日、公式ブログで、Google eBooksのプラットフォームを組み込んだ初の電子書籍リーダー端末が発売されると報告した。「Story HD」という名称で、MP3プレーヤーなどで知られる韓国系のiriverが製造・販売する。パソコンを経由せず、無線LAN経由でダイレクトにGoogle eBooksの電子書籍を購入できるのが特徴だ。ブログでは「新しいマイルストーン」とたたえている。
Story HDは重さ207グラム、厚さ9.4ミリ。6インチの16階調モノクロ電子ペーパーとQWERTYキーボードを搭載しており、大きさも重さも約1年前に発売されたAmazonの第3世代機「Kindle3」によく似ている。画面解像度はXGAで、Kindle3(SVGA)を大きく上回るが、価格はKindle3の139ドル(Wi-Fi版)に対して139.99ドルとして、真っ向から勝負を挑む。
といっても、Story HDはGoogle eBooks専用の端末ではない。iriverが以前から準備していた自社製品をGoogleのサービスに対応させたというのが実際のところだ。Google eBooksのAPIは公開されており、デバイスやリーダーソフトのメーカーは自社製品に取り込むことができる。Googleのブログでは「さらに登場するGoogle eBooks統合デバイスにご期待」と述べ、こうしたパートナーを増やすことに意欲を見せている。

電子書籍をクラウドの本棚に

Google eBooksは2010年12月、北米でスタートした。書籍全文検索サービス「Google Books」(旧Google Book Search)と統合され、検索からシームレスに到達して電子書籍タイトルを買えるようになっている。現在、有料電子書籍は数十万タイトルを取りそろえており、無料で利用できるパブリックドメインの書籍は300万タイトルを超える。
さまざまな端末から読めるクラウドサービスが特徴で、購入した電子書籍は、Googleサービスのオンライン本棚に保管される。これによって、パソコンで読み始め、通勤途中はタブレットやスマートフォンで続きを読むといったことが可能になる。Appleの「iCloud」が楽曲をクラウド上に持つように、本をクラウド上に持つのだ。
このクラウドには人気タイトルも加わる。7月20日に、今秋オープンするハリー・ポッター公式サイト「Pottermore」と提携して、ハリー・ポッター・シリーズの電子版を販売すると発表した。Pottermoreのオンラインショップでタイトルを購入して、ほかの電子書籍と一緒にGoogle上の本棚に保管する。(発表当初、Amazonを出し抜いて獲得したとみられたが、TechCrunchによると、Amazonも同シリーズを販売する見込みという)
オープンを標ぼうするGoogleは、APIを公開してさまざまな拡張サービスを展開している。6月16日にはアフィリエイトプログラムの開始を発表した。ブログなどに書籍のリンクを置いて、販売が成立するごとに報酬が得られる仕組みで、ベータ版から本サービスへの移行だ。また、以前から提供している中小の独立系書店のWebサイト向け販売サービスの参加書店は250を超えた。
Googleの電子書籍ビジネスの体制は次第に整ってきた。だが、電子書籍検索サービスの方では、“のどに刺さった大きな骨”「Book Search訴訟」問題が、厳しい局面を迎えている。

Book Search訴訟の三者合意が解消か

Book Search訴訟は、Googleの進めていた書籍電子化・全文検索プロジェクトGoogle Book Searchが著作権法違反にあたるとして、出版・著作権者団体のthe Association of American Publishers(AAP)とAuthors Guildが2005年10月に起こした。
3年後の2008年にまとまった三者の和解案は、絶版本、著作権者不明本(orphan books)をデータベースに取り入れることや、Google側が総額1億2500万ドルを拠出して、著作権料分配組織「Book Rights Registry」(版権レジストリ)の設立などにあてることなどを内容としている。
しかし、ほかの権利者団体や図書館の団体、さらにMicrosoftやAmazonなどのライバルが猛反発した。これを受けて、連邦地裁は和解案の合法性を審理。担当のDenny Chin判事は今年3月、最終的に却下の判断を下した。これによって、GoogleとAAPなどは和解案の修正再提出を求められている。
この修正案のためのヒアリングは、まず6月に一度開かれたが、全くまとまらなかった。Google側が、「オプトアウト」方式(拒否の意思表明がなければ電子化に問題なしとみなす)を主張しているためだという。さらに7月19日に開かれた再ヒアリングでも進展はなく、次に開催する9月15日に持ち越しとなった。Ching判事は、いらだちを覚えており、9月が最後の機会になりそうだとメディアは伝えている。
ReutersやBloombergによると、Ching判事は「もし、9月半ばまでに“解決あるいは原則的に解決するのに近い状態”にならないのなら、両者に“比較的タイトなスケジュール”を与える」と述べ、Authors Guildの弁護士Michael Boni氏は「われわれはなお合意には達していない。非常に複雑で絡み合った問題であり、夏の間に徹底的に調査する必要がある」とコメントしたという。
このまま三者が修正和解案を出せなければ、和解そのものが白紙となり、訴訟が振り出しに戻る公算が大きいという。Googleにとっては打撃となりそうだ。
Google Booksプロジェクトは、共同創設者で現在CEOを務めるLarry Page氏が2002年に発案。「世界中のすべての本をスキャンする」ことを目標としている。あらゆるものを検索可能にしてゆくGoogleの最重要プロジェクトの一つだ。Googleは三者和解案を受け、既に1500万タイトルの書籍をスキャン済みという。

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