2011年5月10日火曜日

電子書籍本格普及へのカギは?

http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0510&f=business_0510_052.shtml

【米アマゾン電子書籍専用携帯端末「キンドル」発売で市場拡大が加速】
■国内普及のカギは読者にとっての利便性
  米出版社協会(AAP)の調べによると、2010年の米主要出版社87社による電子書籍の売上高は、前年比2.6倍の4億4130万ドルになった。一般書籍の総売上高に占める電子書籍の割合は、前年の3.2%から8.3%へ急上昇した。電子書籍に関する調査を始めた2002年から2007年までは、総売上高合計に占める電子書籍の割合は1%未満だったが、米アマゾン・ドット・コムが電子書籍専用携帯端末「キンドル」を発売した直後の2008年から、市場拡大のペースが加速しているという。
  さらに2010年には、米アマゾン・ドット・コムが低価格の「キンドル」を発売したほか、米アップルが発売した「iPad(アイパッド)」が人気商品となり、電子書籍の市場も急拡大した。手ごろな価格の携帯端末の登場などが追い風となって、電子書籍の普及が加速したとしている。
  米アマゾン・ドット・コムでは、電子書籍専用携帯端末「キンドル」の販売が好調であり、電子書籍の販売も2011年1月以降はペーパーバック(日本の文庫本に相当)を15%程度上回る水準で推移しているという。自社の専用携帯端末「キンドル」以外に、他社のスマートフォン(多機能携帯端末)や米アップルの「iPad」などでも、電子書籍を読めるようにする取り組みが電子書籍の販売増に貢献しているという。また米グーグルも、自社の専用携帯端末を用意せずに、300万冊超という豊富な品揃えを武器に電子書籍事業を拡大する方針だという。
  紙の書籍・雑誌の販売数量減少に歯止めがかからず、書籍・雑誌市場全体が縮小する一方で、電子書籍を手軽に読める携帯端末が相次いで登場し、購入できる電子書籍の量も増加基調のため、新たな読者層の開拓も含めて、国内の電子書籍市場の拡大が期待されている。
■コンテンツ配信サービスの統一規格や互換性などが課題
  大量の書籍データを保存できるなど、電子書籍のメリットに対する消費者の関心も高いようだ。しかし一方では、電子書籍のフォーマット(規格)統一や互換性、著作権の保護や管理、電子配信サービス時の電子書籍の価格、膨大な出版物の効率的な電子化作業など、課題も多いだけに、本格的な普及に対して懐疑的な見方も強い。
  また現在の電子書籍サービスでは、携帯端末と配信サービスが一体化しているため、携帯端末ごとに電子書籍の数や種類が限定され、購入できる書籍が異なる。この背景には、有力電機メーカーや通信会社が主導する形で、電子書籍サービスをコンテンツの一つとして活用し、自社の携帯端末購入者やサービス利用者を囲い込もうとしていることがある。
  リアルの書店であれば、出版社に関係なく、読みたい書籍・雑誌を自由に選べるが、現在の電子書籍サービスでは、読みたい書籍・雑誌に合わせて、複数の携帯端末を購入しなければならない可能性があり、読者にとって利便性が高いとは言えないだろう。電子書籍の魅力を高めて本格普及を進めるためには、 1台の携帯端末を購入すればどんな書籍・雑誌でも読めるという、コンテンツ配信サービスの統一規格や互換性などの面で、読者にとっての利便性に配慮した取り組みがカギになるだろう。
■日本語電子書籍の制作に使う統一規格は事実上の国際標準
  日本語電子書籍の制作に使う統一規格については、出版社43社で構成する日本電子書籍出版社協会、シャープ、大日本印刷などが2010年11月から進めており、海外で普及している「EPUB」にも対応させる方向だ。「EPUB」は、各国の出版やIT関連企業が参加する電子書籍の業界団体IDPF(インターナショナル・デジタル・パブリッシング・フォーラム)が定めた規格で、事実上の国際標準となっている。
  また、インターネット上で流通する電子著作物の著作権保護に向けて、世界知的所有権機関(WIPO)が2013年をメドに国際的な登録制度の骨格を固める模様であり、国際的に権利を主張できる新制度の検討が始まっている。

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