iPhoneやAndroid機器の普及につれて「電子書籍」もずいぶんと身近なものになってきている。中でも電子書籍を手軽に楽しめるのが「青空文庫アプリ」だ。
青空文庫アプリは、Webブラウザや一般的な文書ビューアと違い、日本語を縦書きやルビを含めて和文として綺麗に表示できるところが特色となっている。
ということで、ここではiPhone用の代表的な青空文庫アプリである下記の4つを比較検証してみることにする。
青空文庫アプリは、Webブラウザや一般的な文書ビューアと違い、日本語を縦書きやルビを含めて和文として綺麗に表示できるところが特色となっている。
ということで、ここではiPhone用の代表的な青空文庫アプリである下記の4つを比較検証してみることにする。
・i文庫S
・bREADER-青空文庫
・ポケット文庫-SkyBook
・豊平文庫
尚、比較検証に際しては、なるべく各アプリのデフォルト設定を尊重しつつも、同じ条件で比較できるように、原則として表示サイズやその他の設定を合せるようにした。また、テスト機はiPhone4、各アプリは現時点の最新バージョンを使用した。
第一回の今回は、青空文庫アプリの基本でもある「青空文庫の表示性能」について、禁則処理、漢字等のルビ、挿絵、漢文等の表示などの点を比較検証してみる。
サンプルのテキストはi文庫Sに内蔵されている青空文庫の代表的な作品を中心に選んだ。
第一回の今回は、青空文庫アプリの基本でもある「青空文庫の表示性能」について、禁則処理、漢字等のルビ、挿絵、漢文等の表示などの点を比較検証してみる。
サンプルのテキストはi文庫Sに内蔵されている青空文庫の代表的な作品を中心に選んだ。
検証項目1:禁則処理
禁則処理とは、「。」「、」などの句読点は行の最初に来ない、といった表示上の禁止事項と、それの回避処理のことである。日本語を綺麗に表現する場合には欠かせない機能なのだが、昨年末KDDIから出たbiblio Leaf※1のように電子書籍端末を名乗っていながら平気で「。」が行頭に来てしまうものもあるから注意が必要だ。※1 http://www.j-cast.com/2010/10/19078596.html
ここでは、小林多喜二の「蟹工船」で検証してみる。
ここでは、小林多喜二の「蟹工船」で検証してみる。
■i文庫S 禁則処理
i文庫Sでは、「追い出し」で禁則処理を行なわれた。基本的な禁則処理はできている。
i文庫Sでは、「追い出し」で禁則処理を行なわれた。基本的な禁則処理はできている。
■bREADER 禁則処理
bREADERは、「追い出し」か「ぶら下げ」を設定で選べるようだ。参考画像は行末を揃えるように設定したものだが、禁則処理だけでなく字詰めも行われている。また、「」( )などのバランスも調整して版面を仕上げているようだ。
bREADERは、「追い出し」か「ぶら下げ」を設定で選べるようだ。参考画像は行末を揃えるように設定したものだが、禁則処理だけでなく字詰めも行われている。また、「」( )などのバランスも調整して版面を仕上げているようだ。
■SkyBook 禁則処理
SkyBookでは、「ぶら下げ」で禁則処理が行われた。禁則処理自体はできているのだが、SB-K03、SB-K04などを見てもわかるように行末がガタガタになってしまっている。
SkyBookでは、「ぶら下げ」で禁則処理が行われた。禁則処理自体はできているのだが、SB-K03、SB-K04などを見てもわかるように行末がガタガタになってしまっている。
■豊平 禁則処理
豊平文庫でも「ぶら下げ」で禁則処理が行われた。これも禁則処理自体はできているが、HO-K05などを見ると――の2倍ダーシが離れてしまっている。
豊平文庫でも「ぶら下げ」で禁則処理が行われた。これも禁則処理自体はできているが、HO-K05などを見ると――の2倍ダーシが離れてしまっている。
検証項目2:ルビの表示
ルビは、文章内の任意の文字列に並んで、ふりがな/説明・注釈/異なる読み方などを付け加えたりするための補助情報のことである。通常縦書き文章では、その文字の右側に本文より小さな文字で表記される。
ここでは、芥川龍之介の「歯車」で検証してみる。
ここでは、芥川龍之介の「歯車」で検証してみる。
■i文庫S ルビ
i文庫S は、iB-R01を見てわかるように「格子-こうし」はいいが、「註文-ちゅうもん」はルビが若干下にズレている。また、「露-あらわ」は下に飛び出してしまっている。
i文庫S は、iB-R01を見てわかるように「格子-こうし」はいいが、「註文-ちゅうもん」はルビが若干下にズレている。また、「露-あらわ」は下に飛び出してしまっている。
iB-R01 |
検証項目3:英語表記とルビ
英語と日本語が入り混じった文章は、表示のバランスが難しく、また英語につけられるルビは、漢字などの場合と違って、複数のワードに対してつけられる場合があるため、より難しい処理が求められる。
■i文庫S -英語ルビ
i文庫Sは、参考画像のように「Crispissa」のルビが違うところについてしまっているし、「Behind stairs」のような2ワードの単語のルビもズレている。また、「Athbash法」のような英語と日本語で構成されるような単語では離れてしまっていて1単語に見えない。
i文庫Sは、参考画像のように「Crispissa」のルビが違うところについてしまっているし、「Behind stairs」のような2ワードの単語のルビもズレている。また、「Athbash法」のような英語と日本語で構成されるような単語では離れてしまっていて1単語に見えない。
■bREADER -英語ルビ
bREADERは、「Crispissa」「Zephyretta」や2ワードの「Behind stairs」でもほぼ中央にルビがつけられている。また「Athbash法」のような場合は英語部分にルビがつけられるようになっているようだ。
bREADERは、「Crispissa」「Zephyretta」や2ワードの「Behind stairs」でもほぼ中央にルビがつけられている。また「Athbash法」のような場合は英語部分にルビがつけられるようになっているようだ。
■SkyBook -英語ルビ
SkyBookは、「Crispissa」「Zephyretta」はほぼ中央にルビがつけられているが、「Behind stairs」のような2ワードではルビがずれてしまっている。「Athbash法」などの場合は英語部分にルビがつけられている。
SkyBookは、「Crispissa」「Zephyretta」はほぼ中央にルビがつけられているが、「Behind stairs」のような2ワードではルビがずれてしまっている。「Athbash法」などの場合は英語部分にルビがつけられている。
検証項目4:挿絵の表示
これは青空文庫に限らず、英語の本などでも同様だが、挿絵を入れると楽しくてわかりやすい本が出来上がる。
ここでは、殺人事件の証拠物件の挿絵などが登場する小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」で比較してみよう。
ここでは、殺人事件の証拠物件の挿絵などが登場する小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」で比較してみよう。
検証項目5:訓点等の表示
日本では古くから漢文の訓読が行われている。
訓読とは、漢文を読む際に中国語や仏典の読経などのように音読みせず、漢字の字義による訓読みを利用して、日本語として読むことである。
それを表記する訓点には、返り点や一二点などがあるが、青空文庫でも漢文が出てくるものがあるので、下記のサイトを参考に内藤湖南の「卑弥呼考」で比較検証してみよう。
[電子書籍] Windows 用の青空文庫ビューア、 3本を試してみる。
http://bluewatersoft.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/windows-3-d1af.html
訓読とは、漢文を読む際に中国語や仏典の読経などのように音読みせず、漢字の字義による訓読みを利用して、日本語として読むことである。
それを表記する訓点には、返り点や一二点などがあるが、青空文庫でも漢文が出てくるものがあるので、下記のサイトを参考に内藤湖南の「卑弥呼考」で比較検証してみよう。
[電子書籍] Windows 用の青空文庫ビューア、 3本を試してみる。
http://bluewatersoft.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/windows-3-d1af.html
■bREADER -訓点
bREADERでは、返り点、一二点などの訓点が表示される。上記サイトに登場したWindows 用の青空文庫ビューアと比較しても、行末揃えや割り註なども含めて高い表示能力がある。
bREADERでは、返り点、一二点などの訓点が表示される。上記サイトに登場したWindows 用の青空文庫ビューアと比較しても、行末揃えや割り註なども含めて高い表示能力がある。
第1回検証のまとめ
今回取り上げた4つのiPhone用青空文庫アプリは、いずれも合格点といえる検証結果だった。
一方、同じ青空文庫作品を表示しても各アプリでずいぶん違って見えるものだというのも正直な感想だ。このような違いは今回のように比較検証してみないと気づかないのかも知れない。
個々のアプリについてだが、まず今年全面リニューアルされ新規アプリとして登場したi文庫Sは、やはり旧i文庫よりもよくなっていた。例えば旧i文庫では2倍ダーシが離れてしまっていたが、そのような問題点は改善されたようだ。ルビや訓点などの項目は多少残念な結果となったが、実用上問題はないだろう。
次に、これも今年になって新世代青空文庫アプリとして登場したbREADERだが、評判通りの素晴らしい出来栄えと言える。PC用を含む多くの青空文庫リーダーと比較してもこれだけキッチリと青空文庫を表示できるのは記憶にないくらいだ。
SkyBookもi文庫Sと同様、訓点の項目では残念な結果だったが、英語表示などではi文庫Sよりも好成績だった。
豊平文庫も以前よりも大分よくなった。今年になって訓点の表示もサポートしたため、その項目ではi文庫SやSkyBookよりも評価できる。
総じて言えば、 bREADERが全ての検証項目において頭ひとつ抜け出している。i文庫S、SkyBook、豊平文庫はそれぞれの項目で一長一短だったが、青空文庫を手軽に楽しむという点ではいずれも十分な性能を備えていると言える。
次回第2回以降では、電子書籍ビューアとしての基本的な操作性、使い勝手や電子書籍ならではの機能、その他特色などの観点で何回かに分けて徹底検証したいと思っている。乞うご期待。
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