米書店チェーン2位で、2月に米連邦破産法11条の適用を申請し、再建を目指していたボーダーズが、今秋までに清算されることになった。現在残っている全米399店舗は閉店となり、およそ1万700人の従業員は全員解雇される。多くの人々が、「なぜ?」と問う。彼らが口々に言うのは、「ボーダーズが好きだったのに」だ。
しかし、ある一人のお客が18日に語った言葉が、すべてを表している。デトロイト・フリー・プレスによると、米ミシガン州のヘアスタイリスト、ジョー・ラニアさんは「ボーダーズに行くのが好きだった。子どもをそっと残して、いろいろなものを見てまわるんだ。誰かがボーダーズを買い、救済してくれることを願うよ」と語った。
ラニアさんは18日、ミシガン州にあるボーダーズ本社に程近い書店で、自己啓発本のコーナーで本を見ていたという。ボーダーズは同日、同社の買い手が見つからず、資産を清算することを発表した。手続きは22日にも始まる予定である。
ラニアさんが語った言葉は、まさにボーダーズが清算・解体に到った原因を物語っている。
彼のような客は、ボーダーズの大型書店に行くのが好きなのだ。大型書店の中でリラックスしながら、本を眺めることが好きなのだ。ラニアさんは、本を「買う」ことが好きだとは決して言っていない。彼はただ、「いろいろなものを見てまわる」のが好きだと言っただけだ。
ボーダーズの倒産・清算を大きな視点で見ると、米国からさらに書店がなくなり、雇用も減少することになる。どちらも静観したままではいられない問題だ。
しかし、ボーダーズは実は5年間も赤字続きだった。お客の多くがラニアさんのようだったからだ。多くの人々は書店へ行き、見てまわり、リラックスするのが好きだった。
しかし、ボーダーズは公共図書館ではない。本を眺めるだけで買わない客が多ければ、平均2300平米の各店舗を維持することが難しい。
多くのお客にとって、米国の書店とは、本を買う場所というよりも、公園のような場所になっていた。ボーダーズは過去5年間、特にその傾向が見られたと言うわけだ。米国唯一の書店チェーン大手となるバーンズ・アンド・ノーブルや他の書店チェーン、個人経営書店なども、お客が積極的に本を買うように改革を進めなければ、ボーダーズと同じ道をたどることになるだろう。
これはさびしいことだが、現実なのだ。多くの人々にとって、書店は公園のような、リラックスし眺める場となった。しかし書店を維持するためには、積極的に本を買うことが必要だ。
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