2011年12月9日金曜日

ついにアマゾンが電子書籍読み放題サービス開始!? 音楽・映画から活字コンテンツに広がる定額制の衝撃

http://diamond.jp/articles/-/15252

 デジタルコンテンツのサブスクリプション(定額契約制)モデルがジワジワと広がりそうな気配を見せている。

 サブスクリプションというのは、たとえば月額いくら払えば映画が見放題、音楽が聴き放題といったサービスだ。年額契約のこともあるだろう。現在ならば、音楽で言うと、iTunesストアのように楽曲1曲あたり1.29ドルなどを払って購入するものというのが広く知られた方法。だが、これに対してサブスクリプションモデルはドンブリ計算的な課金方法だ。

 以前、この欄でも取り上げたことのあるスポティファイは、音楽のサブスクリプションサービスとしてよく知られている。その後も人気をどんどん増し、有料契約者は250万人にも拡大している。

 スポティファイは3段階のサービスを提供し、ひとつは無料、残り2つは有料で月額4.99ドルと9.99ドルだ。無料は聴ける楽曲の数や利用時間に制限があり、有料サービスでは音質や、モバイル機器でも利用できるか、オフラインでも利用できるかで違いがある。同じような音楽のサブスクリプションサービスには、ラプソディーやズーンなどがある。

 映画でサブスクリプションモデルを持つのは、ネットフリックスやブロックバスターなど。一度に借り出しできるDVDの枚数で月額契約料が変わるが、効率よく借り出し返却していけば、かなりの数の映画が見られるものだ。

 ただ、DVDを物理的に借り出すのではなく、ストリーミングサービスに目を転じると、こちらは確実にサブスクリプションモデルが優勢だ。ネットフリックスは、月額7.99ドルで見放題。ムービーフリックスは、無料と月額11.95ドルのモデルを提供。アマゾンは、有料のプライム会員(年額79ドルで、アマゾン商品の無料配送などのサービスを提供)には、タイトルが限定されているものの、やはり映画見放題のサービスを提供している。

 テレビ番組では、フールーがやはりサブスクリプション・モデルで運営、映画も含み月額7.99ドルで見放題だ。ケーブルTV各社も、契約者に対してインターネットによるストリーミングサービスに乗り出しており、これもサブスクリプションモデルと言える。

 こと音楽と映画については、現在はさまざまな配信、課金方法が混在している状態になっている。従来通り、楽曲や映画を購入してファイルをダウンロードし、「所有する」モデルがひとつ。所有せずに「レンタル」するモデルも映画にはある。オンラインならば、何日後には借りたファイルが消滅するとか、見始めたら何時間内に見終わらなければならないといった条件がつく。音楽では、インターネットラジオのようなサブスクリプションに似たモデルも存在する。

 それ以外に最近は、ストリーミングサービスで「視聴する」モデルが音楽、映画の両方に出てきた他、クラウドサービスを同時に提供して、クラウド上のストレージに自分のファイルを保存してそこから利用したり、それと購入する所有モデル、ストリーミングで視聴するモデルを組み合わせたりするケースもある。グーグルやアマゾンはここに進出している。

 さて、オンラインゲームの世界ではサブスクリプションモデルがかなり広まっている。世界のデジタルコンテンツ消費のうち39%とトップを占めるのはゲームの世界。消費が増えれば増えるほど、ユーザーはサブスクリプション・モデルへの移行を好むのかもしれない。

 新聞や雑誌はどうか。もともと「サブスクリプション」というのは、新聞や雑誌の年間契約という意味で使われ始めた言葉。だが、これらはデジタル時代になって無料でコンテンツを公開したために、その後苦戦。今、再びサブスクリプションモデルにたどり着いているところだ。デジタルコンテンツを有料化し、その中でサブスクリプションモデルの選択を提供するというものだ。

 新聞で有料化、サブスクリプションモデルへの移行を図ったところは限られているが、ウォールストリートジャーナル、ニューヨークタイムズは比較的成功しているようだ。ニューヨークタイムズは、今年初めに本格的なサブスクリプションモデルを提供し始めたが、9月までの6ヵ月間に有料契約者数が25%アップし、120万人に増えたという。

 雑誌については、デジタルコンテンツ化で1部あたりの価格が実質上は高くなったため、うまく離陸できていないのが現状だ。だが、タブレットコンピュータやスマートフォンによってデジタル雑誌のサブスクリプションへの関心が高まりつつあり、アップルがiPad用に10月半ばに始めたデジタルニューススタンドでは、雑誌社大手のコンデナストの有料契約者数が2週間で268%増となったという。複数の雑誌出版プラットフォームを提供するデジタルマグは、1週間で1150%増となったとしている。

 そうした中、びっくりするようなサブスクリプションモデルを計画しているとされるのが、アマゾンだ。電子書籍が読み放題になるサービスを、やはりプライム会員向けに検討中で、出版社との交渉に入っているとのことだ。

 アマゾンは、新しく発売した自社タブレットのキンドルファイアとプライム会員との親和性を高めて、積極的にユーザーの囲い込みにかかっており、この電子書籍読み放題もその一環と見られる。

 ユーザーが、一体サブスクリプションモデルに大きくなびくかどうかは、今のところまだ不明だ。コンテンツを提供する側から見れば、サブスクリプションモデルはユーザーを囲い込むことができる利点があるものの、コンテンツ制作者との契約料、インフラへの投資などとの兼ね合いが勝負となる。ユーザー側にとってみれば、サブスクリプションモデルは便利ではあるものの、ひとつのプラットフォームに縛られてしまって抜け出せなくなる危険性がある。

 値段とコンテンツ量、そして配信の速度、デバイスとの親和性など、多様な要素が今後の勝者を決めることになる。闘いはこれからが本場だ。

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