http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/28311
米アマゾン・ドットコムが電子書籍リーダー端末「キンドル(Kindle)」とネット小売りの分野でまた攻勢をかけている。
同社は11月2日、商品配送優遇プログラム「アマゾン・プライム」の米国加入者を対象に、キンドルを使った電子図書館サービスを開始したと発表した。約5000冊の電子書籍の中から好きなものをキンドルに無料でダウンロードできるというものだ。
一度に1冊、貸出期間に制限なし
これは「キンドル所有者向け貸出図書館(Kindle Owners' Lending Library)」と呼ぶサービスで、会員制DVDレンタルのような仕組みを採り入れている。
利用者が一度に借りられる電子書籍は1冊のみだが、貸出期間に制限はなく、読み終わらなければいつまでも借り続けられる。
新たな書籍を借りる際は、既に借りている書籍が返却(自動消去)される。また1カ月に借り換えられるのは1回のみという条件がある。
アマゾン・プライムとは、同社が米国で提供している商品配送優遇プログラムだ。注文日の翌々日までに品物が届く「急ぎ便」を無制限で利用でき、年会費は79ドル。
アマゾンはこのプログラムの会員に対し、追加料金なしで約1万3000本の映画/テレビ番組をストリーミング配信できるという特典も付けており、コンテンツ配信事業と、ネット小売りの相乗効果を狙っている。
新端末発売前に顧客囲い込み
今度はこれに電子書籍も加え、顧客を取り込むというわけだ。アマゾンのキンドルには専用の読書端末と、スマートフォンなどのモバイル端末やパソコンで利用できるアプリ版があるが、今回のサービスはアプリ版を対象にしていない。
これに先立ちアマゾンは、キンドル端末の最新モデルを発売しており、11月15日には、同社初のマルチタッチカラーディスプレイ搭載タブレット端末「キンドル・ファイア(Kindle Fire)」、同月21日にはタッチスクリーン搭載の電子ペーパー端末「Kindle Touch」を出荷する予定だ。
アマゾンによると新たな図書館サービスでは、ほかのキンドル向け電子書籍と同様、借りた書籍コンテンツにハイライトや注釈を書き込むことができ、しおり機能も利用できる。
これらの情報はアマゾンのサーバーに保存され、次回同じ書籍を借りたり、アマゾンから購入したりした際に、記入した内容が表示される。
こうした機能を盛り込むことで、結果として顧客の利便性が高まり、書籍の販売増にもつながることから、顧客、出版社、作者の3者にとってメリットがあるとアマゾンは説明している。
アマゾン、また赤字覚悟の販売戦略
アマゾンは赤字になっても製品を普及させるためなら徹底的にサービスを強化する企業として知られており、今回のサービスも同様の戦略だ。
アマゾンと出版社との契約には、固定料金方式と、貸し出される回数に応じて料金を支払う卸売方式の2つがあるが、いずれにしてもこれらはアマゾンの持ち出しということになる。
ただ、米ウォールストリート・ジャーナルによると、今回のアマゾンのサービスに脅威を感じている出版社も多いようだ。大手出版社は、書籍販売に及ぼす影響や、ほかの小売店との関係悪化につながる恐れを懸念していると同紙は伝えている。
0 件のコメント:
コメントを投稿